ビジネスを創造する源を探る ヒットメーカーの企画書

時にマーケットの流れさえも変えてしまう、ヒット商品や新しいビジネスモデル。ヒットが生まれる背景には、ニーズを作り出す“マーケティング力”やこれまでにない斬新なビジネス形態を思いつく“発想力”、そしてビジネスとして成り立たせる“設計力”の3つが必要だ。ヒットメーカーが作った企画書を読み解くことで、あなたの仕事を今よりもワンランク上にさせるヒントが見えてくる。
第8回 ANA BusinessJet 成田-ムンバイ線
全日本空輸株式会社
営業推進本部 商品企画部
主席部員
時澤 務 さん
「ANA BusinessJet 
成田-ムンバイ線」

企画書

1 企画・開発の目的
出張や研修などのビジネス目的でインドへ渡航する利用客の増加を見込み、2005年から事業計画がスタート

2 コンセプト
36席という少ない座席数を有効活用するために、「全席ビジネスクラス」というわかりやすいテーマを設定

3 ターゲット
30〜50代のビジネスパーソン。エグゼクティブクラスではなく、実務の中核を担う年代をコアターゲットとした

4 商品企画
機内でのくつろぎを最優先。食事は「安らげる日本の味」をテーマとし、どのメニューでもご飯と味噌汁がつく

5 今後の展望
現在の機材で当面運航し、データを蓄積。需要の拡大が見込めれば、大型機投入の可能性も

ANA BusinessJet 成田-ムンバイ線

2007年9月1日に開設した新規路線。2008年3月までは、直行便を週6便のペースで運行予定

2007年9月、全日本空輸(ANA)は成田とインドのムンバイを結ぶ新路線を開設した。急速な経済発展を遂げるインドへのビジネス渡航需要の拡大を見込んで開設されたこの路線は、世界でも珍しい全席ビジネスクラスの客室仕様が話題となっている。2005年から始動した事業計画を進める上での最大の問題は「従来のマーケティング手法が使えないことだった」と営業推進本部の時澤務氏は話す。

「当社はインドへ直行便を飛ばしていませんでしたから、渡航者数や月・曜日別の波動を把握できるデータがなかった。潜在需要があるだろうという推測だけで、座席数の多い大型機を投入するのはリスクが大きすぎました」

その問題を解消するカギとなったのが、今回投入されたB737-700ER型機と呼ばれる新型機だ。737型機は小型のため、これまでは積める燃料に限りがあり、国内や東アジアなど近場の路線に投入されてきた。しかしB737-700ER型機は、改良により小型機ながら遠くまで飛ぶことが可能に。そこで、ムンバイ線への投入が最適との判断が下ったのだ。

ワンクラスの客席仕様が注目を集めているが、「実は我々としては、それがプラス要素になると確信していたわけではなかった」と時澤氏。しかし、結果的にこの割り切り≠ェ成功への分岐点に。

「むしろ営業的に見れば、複数のクラスを用意したほうが幅広い客層を取り込めるというメリットがある。ただし今回は座席数が36席と少ないので、大胆にコンセプトを打ち出さないとマーケットに訴えられないと考えました」

ターゲットも30〜50代のビジネスパーソンに絞り込んだ。前述の通り、利用者の志向を知るデータがなかったため、ムンバイに支店を置く日本企業を回ってヒアリングを行ったという。

「その結果、大半の方が『機内での時間を睡眠に充てたい』と考えていることがわかったのです。ほかの路線では仕事をする方も多いのですが、インドは過酷な環境なので、現地に入る前に休息しておきたいという声が圧倒的でした」

そこでくつろぎの提供≠最優先。シートを倒してゆっくり寝られるように、座席の間隔は長距離路線と同じ61インチを確保した。

「就航後の利用状況は想像以上。今後も需要が伸びると見込めれば、将来的には大型機を投入することもあり得る」と展望を語る。

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