ビジネスを創造する源を探る ヒットメーカーの企画書

時にマーケットの流れさえも変えてしまう、 ヒット商品や新しいビジネスモデル。 ヒットメーカーは、いかにして企画を具現化させたのか。 その裏に隠された真意を読み解く。
取材・文/塚田有香 撮影/虫鹿 由香梨(編集部)
第12回 ミルクシーフードヌードル
日清食品株式会社
マーケティング部 第1グループ
主任
梅林卓也
「ミルクシーフードヌードル」
企画書

1 企画・開発の目的
カップヌードルブランドそのものの価値を高めるための、バリエーション戦略の一環として開発した

2 開発のきっかけ
以前から口コミで広まっていた、「シーフードヌードルを温めた牛乳で作るとおいしい」といううわさに着目。ネット上での情報の広がりも改めて確認し、ニーズの高さを確信

3 コンセプト
「“噂”のあの味を日清食品が本気でつくるとこんなに美味しい」をキャッチコピーに。あくまで真剣に商品開発に取り組んだという姿勢を前面に押し出した

4 プロモーション戦略
発売前より開発秘話をHP上で公開し、消費者の興味を誘った。発売約2カ月後からおいしさやイメージを伝えるCMを展開

ミルクシーフードヌードル

シーフードヌードルのスープをベースに、ミルクのまろやかさとコクを加えた。クリーミーな味わいがカップヌードルの新たな一面を引き出している

カップヌードルファンのうわさを“真面目”に商品化

シーフードヌードルを温めた牛乳で作るとおいしい」--。カップヌードルファンの間で広まっていたうわさに着目して開発されたのが、2007年11月に発売された『ミルクシーフードヌードル』だ。『カップヌードル』は今年で発売37年目を迎えるロングセラー商品だが、新しい食のスタイルを提案していくブランドとして、常に価値向上に力を入れてきた。マーケティング部の梅林卓也氏によると、カップヌードルブランドは大きく4つに分けられ、ミルクシーフードヌードルは「準レギュラー商品」に位置付けられるという。

「ほかには定番のカップヌードルやカレーなどのレギュラー商品、期間限定などのスポット商品があり、準レギュラー商品はその中間に位置します。また、戦略的商品として『カップヌードル リファイル』などがあります。今回の場合、牛乳は好き嫌いの分かれる食品ですからレギュラーにするのは難しい。ただ、スポットで終わらせるにはもったいないと思わせるだけのポテンシャルを秘めていると考えたのです」

その根拠となったのが、商品開発のきっかけになったうわさ≠フレベルの高さだ。この情報は10年以上前から消費者の間で広まっており、梅林氏がインターネットで「シーフードヌードル 牛乳」で検索した際にも3万件近いサイトがヒットした。

「ほかにも同じたぐいのうわさはありますが、これは消費者との共通認識を持てるレベルが非常に高いと思いました。これなら消費者がもともと持っていた情報をうまく活かして、共感性の高い商品を作ることができると考えたのです」

だからこそ、「うわさからアイデアだけもらって、お手軽に商品化したとは思われたくなかった」と梅林氏。そこで、発売前よりHP上で開発秘話を明かす特設Webサイトを開始。苦心を重ねながら真剣に商品化に取り組む様子を伝えた。

「メーカーが皆さんに代わって真面目に商品化したのだと伝えることが何より重要でした。この商品は口コミを利用した宣伝などの事例として取り上げられることもあるのですが、我々から戦略的に何かを仕掛けたという意識はないんです」

今後は同じ準レギュラーのチリトマトやチーズカレーのように、息の長い商品に育てていく考えだ。

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