スポーツ界の会社が語る仕事哲学に学ぶ  

プロフェッショナルの条件

常に最高のパフォーマンスが求められるスポーツ界のプロフェッショナルたち。自己研さんに励み、勝利にこだわり続ける彼らのストイックで柔軟な独自の“仕事哲学”に迫る。《2008年4月号より抜粋》
取材・文/槙野仁子、市谷 美香子(編集部)撮影/小林 靖
世界との戦いを週単位で繰り返しては、自身初となる北京五輪出場を視野に取り組むアスリートがいる。ビーチバレー選手の朝日健太郎である。
199cmという恵まれた体格を活かして、高校時代からバレーボール界をにぎわし、大学、社会人と全日本代表のセンターとしても活躍した。だが、インドアのエースの座を捨て、安定よりも向上心をくすぐる刺激を求めて、2002年にビーチバレー界へ転向。すべてが整備された企業チームとは打って変わり、自らの手で生活や競技環境を整えていく場所へと飛び込んだ。一念発起してから今季で6年目を迎える朝日選手に、プロフェッショナルとしての条件を聞いた。

企業のバックアップがある組織から独立して、自分の価値というものを常にアピールしていく環境へと身を置かれましたが、あらためて感じるプロフェッショナルの条件とは?

「インドアのバレーをやっていた時は、安定した環境だったこともあって、特にプロフェッショナル≠ニいうことを意識したことがなかったんです。それが、ビーチバレーに転向して練習場も試合の手配も自分たちで行い、スポンサーのサポートをもらえるように自ら活動し、競技に取り組んでいく。この厳しい環境に身を投じて、初めてプロであることを意識し始めましたね。その経験を踏まえて、今僕が思うプロフェッショナルとは、成績やお金、名声を高めていくことではなく、自らを律し、純粋に己を鍛えて極めていく姿勢を持った人。そしてその環境を自分で作り出すことができる人のことじゃないかと思うんです」

ビーチバレーのプロ選手の場合、チームだけではなく、個人にもスポンサーが付いてサポートしてくれるとのことですが、自分の価値を理解してもらうために努力や工夫をされていることはあるのでしょうか?

「現在は、数社のスポンサーが応援をしてくれていますが、プロである以上は結果という対価を払わなければならない。転向当初は個人単位ではなくチーム単位でスポンサーが付いていました。でもそれは、自分で開拓した環境ではなく、周りが既に築いてくれたものだった。だから今振り返ると、自分のプレーに対する姿勢に甘えがあったんじゃないかと思うんです。だからなのか、自然とスポンサーの数も減ってしまった。そこで目が覚めたんです。プロとして、自分の追求が独り善がりにならず、人に何かを与えられるようになるためにはどうしたらいいのか、常に考えるようになりました。それを考えるのと考えないとでは、試合のパフォーマンスの出来が全然違ってくるんです」

評価を得るには結果が付きものですが、ここぞという場面で力を発揮して、自分の価値を高めるすべはありますか?

「僕、本番に強いんです。試合になると100%の力で臨める。こう聞くと、さぞかし精神面が強いと思うでしょう? でも逆なんですよ。こんな仕事をしているのに、実は競争や勝ち負けを決めるプレッシャーが好きではないんです(笑)。それでも年間、何千試合と試合を繰り返す。一見矛盾しているように思えますが、このプレッシャーこそが自分を向上させるための原動力なんです」

プロとはいえ、やはり自分の弱点や課題をお持ちだと思うのですが、どのように克服してきたのでしょうか?

「僕は昔から物事に対する温度が低くて、人よりも感情の起伏が小さいんです。熱い気持ちを持った人が多いスポーツ界で、自分の性格が不利になるのではないかと悩んだ時期もありました。でも今はそれを持ち味として、逆に利用しているんです。例えば、自分を冷静に見つめられなくて過小評価したり、過大評価してしまったりすることがあると思うんです。そういうとき、僕の弱点は強みに変わります。物事を引いて見ることで周りが見えるし、自分の状態も良く分かる。確かに闘争心が自然とわいてくるタイプではないのですが、一番大事なのは試合に自分のピークを持ってくること。だから突発的なことが起きても、気持ちの調整が利くんです。どんなときも冷静に判断して、柔軟に受け止める。それが、僕なりのプロフェッショナルなのかもしれませんね」

周囲に左右されることなく、必要以上に力むこともなく、今の自分に必要なことだけを見極める思考と眼力を持つ朝日選手。日々、更新を重ねて、新しい自分を生み出す姿勢にプロフェッショナルの意識が見えた。

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