システム開発を成功させる“プロマネサポーター”という新ビジネス  

「PMO」って何なんだ?

ここ最近、システム開発の世界でにわかに脚光を浴びている「PMO」。その背景には、ITに対する顧客ニーズの急激な高まりがあるというが、果たしてPMOとは何なのか?専門家2人に、このニュービジネスの全貌を聞く。
取材・文/塚田有香 撮影/大澤 誠 イラスト/溝 芳夫 《type2008年5月号より抜粋》
株式会社マネジメントソリューションズ 代表取締役 高橋信也 氏
株式会社
マネジメントソリューションズ
代表取締役
高橋信也 氏

アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)などを経て、大手メーカー系列のシステム子会社でPMOを設置・運営。2005年より現職
  「日本のシステム開発プロジェクトの成功率は3割に満たない」

そんな調査結果がある。逆に言えば、7割以上のプロジェクトが失敗に終わっているということだ。

この憂慮すべき状況を改善しようと、システム開発の現場では数々の取り組みが行われてきた。IT業界では2000年頃から米国で体系化されたプロジェクトマネジメントの手法を導入。プロジェクトマネジャー(以下、PM)にはPMPなどの認定資格を取得し、マネジメントの専門知識を身に付けるよう促してきた。

しかし、それでも思うような成果は上がっていない。そこで最近注目を集めているのが、『PMO』(プロジェクト・マネジメント・オフィス)だ。

これはPMの意思決定や業務を支援し、プロジェクト進行を円滑かつ着実に行うために設置される、専門のサポート部隊のこと。その役割と機能は多岐にわたり、組織間の調整や会議のファシリテーション、進捗管理やリスクマネジメントなどのプロセス導入、事務作業のサポートなど幅広い。PM個人の能力に頼るのではなく、組織的な支援を行うことでプロジェクトマネジメントの質を向上させるのが最大の狙いだ。

プロジェクトの複雑化でマネジメントが困難に

その背景には、「ビジネス環境の変化により、プロジェクトの難易度が年々上がっているという現状がある」と、マネジメントソリューションズ代表取締役の高橋信也氏は話す。同社は2005年の設立以来、SIerをはじめとする多くの企業にPMOの支援サービスを提供してきた実績を持つ。

「技術が進歩するスピードは速くなり、商品のライフサイクルは短くなる一方。しかも、プロジェクトの大規模化でメンバーも多様化し、外部の社員や派遣社員、フリーランスなどが混在するようになっています。オフショア開発も急増して状況が複雑化する中、もはやPM1人だけの力でプロジェクトを完遂するのは難しい。だからPMOがプロジェクトの進捗や課題を可視化し、PMの意思決定支援や管理プロセスの改善をする必要があるのです」


大手SIerの中には、すでにPMOを社内組織として設置しているところもあるが、いまだに役割が明確に定まっていないのが実情。また、PMOを社内のリソースだけで構成することは、企業にとって大きなコスト負担にもなる。

そこで、マネジメントソリューションズのように専門のノウハウを持った会社にPMO業務をアウトソースするケースが増えているのだ。同社の顧問である峯本展夫氏も、「当社では、PMOの“O”は“Outsource”であるという捉え方をしている」と話す。

客観的な視点を持ち込めるアウトソースは有効な手段

「プロジェクト成功のために重要なのは環境作りです。例えばメンバーの意識や社内風土に問題があるとき、同じ組織に属する社員であるPMの立場では、状況を変えるのが難しいこともある。アウトソーサーだからこそ果たせる役割もあるのです」(峯本氏)

ただし、PMOは、PMと上下関係にあるわけではない。むしろ黒子に徹し、彼らを支援することが求められる。峯本氏は「プロジェクト遂行の潤滑剤になれる人」、高橋氏は「チームスピリットを大切にできる人」がこの仕事に適していると話す。

あらゆる業界でプロジェクト型の業務が増える中、PMOは企業の経営そのものを左右するほどの大きな役割を担いつつある。ビジネスシーンにおける存在感は、今後ますます高まっていきそうだ。
 
株式会社マネジメントソリューションズ 顧問 峯本展夫 氏
株式会社
マネジメントソリューションズ
顧問
峯本展夫 氏

邦銀初のイントラネットを立ち上げるなど多くのプロジェクトを遂行。その後、フリーのコンサルタントやプロジェクトマネジャーとして実績を残し、関連著書も多数




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