スポーツ界の覇者が語る仕事哲学に学ぶ  

プロフェッショナルの条件

常に最高のパフォーマンスが求められるスポーツ界のプロフェッショナルたち。自己研さんに励み、勝利にこだわり続ける彼らのストイックで柔軟な独自の“仕事哲学”に迫る。《2008年5月号より抜粋》
取材・文/槙野仁子、市谷 美香子(編集部)、撮影/池田真理
今年8月、北京で行われる夏季オリンピックに、セーリング競技の470級女子チームの日本代表として「チーム・アビーム」の近藤愛選手、鎌田奈緒子選手が出場する。 チームが結成されたのは2005年。「オリンピック出場」の目標を掲げてから3年の時を経て、出場資格を獲得した。それは、世界のライバルに勝つだけでなく、「海原」という自然をも相手にチームでつかんだ功績だった。そんなチーム・アビームの2人にプロフェッショナルとして、1つの目標を成し遂げる秘訣を聞いた。

どんな仕事でも、チームで成功するには信頼や結束力を高めていかなければなりません。チーム力を高める上で重視していることはありますか?

鎌田 「目標としているところは2人とも同じですが、その過程でお互いの意見が食い違うこともあります。それをため込まずに言い合うことが大切。この作業をすることで、常に同じ方向を見ることができるんです」
近藤 「目標が大きければ、人一倍の努力が必要ですし、技術が上がれば上がるほどそれぞれ必死になる。そこで2人の考えがズレないように、共通理解を深めるようにしていますね」

チームで戦う上できっちりと役割分担をすることが不可欠ですが、お2人はどのように役割を分担し、連携を取っているのですか?

近藤 「2人乗りの競技の場合、『クルー』と『スキッパー』という役割が存在します。風や潮の流れ、ほかのチームの動きなどの周辺情報はクルーである鎌田が把握し、かじを取るスキッパーの私がその情報を活かして、進路を決める最終判断をします。刻一刻と変化する自然を相手にしているので、判断に迷いが生じることもありますが、これまで積み上げてきた経験と2人で築いてきた信頼関係を信じて突き進むことが何より重要なんです」

息がぴったりなお2人ですが、モチベーションを高く維持するにあたって、心掛けていることはありますか?

鎌田 「選手としてオリンピック出場経験のある小松一憲ヘッドコーチから教えてもらったことなのですが、『限界を作らなければ、世界が近くなる』という意識を常に持つことでしょうか。初めての世界選手権では、外国人選手の勝利への貪欲さに圧倒されてしまったこともありました。ですが、自ら限界を作らずに、日々自分たちの課題を追求していくことが勝利へのモチベーションにつながるんだと思います」
近藤 「普段、日本で行われる大会では女子が少ないこともあって、男子と一緒にレースで戦ったりするんですが、海の上に出れば、相手が誰であろうと『目の前にいる相手の中で常に一番になろう』という気持ちで臨んでいます。そんな挑戦する気持ちが気力に結び付いているのかもしれません。また、世界を相手にするとレベルが数段高くなるので、質と量を伴った練習が重要だと実感しています。良い結果が出たとしても、それに甘んじることなく、レースをこなすごとに出てくる課題をきちんと受け止め、必ずノートに気が付いたことを記しているんです。それを次の大会までに修正できるように取り組めば、経験を積むごとに成長していくことができます」

2007年には全日本470級ヨット選手権大会で女子組による史上初の優勝を果たしました。そんなお2人が考える、プロフェッショナルの条件は?

近藤 「やはり、自分が掲げた大きな目標を果たすにあたって、人以上の努力をすることですね。ライバルは見えないところにたくさんいます。彼らは私たち以上に目標達成に向けて努力しているんだと意識して練習していかないと、勝負には勝てないし、目標には近づけない。『ヨットに必要なことは誰よりも努力する』という気持ちで試合に挑んでいます」
鎌田 「海外遠征の場合は、ホテルの手配から練習時間の確保まですべて自分たちで行っているんです。こうした細かな準備も含めて、ゴールに向かって自分が何を必要としているかを客観的に把握できること。さらにそれを計画立てて、実行できる人のことだと思いますね」

「北京オリンピック」という目標に向かって、欠かさず行ってきたのは、「同じ方向を常に見続ける作業」と2人は口をそろえる。チームの中でそれぞれ異なる役割を持ち、海原で男女を問わず激しい戦いを繰り広げてきた。そんな2人の雄姿と強固なチーム力は、オリンピックで表彰台を手繰り寄せるはずだ。

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