ビジネスを創造する源を探る ヒットメーカーの企画書

時にマーケットの流れさえも変えてしまう、 ヒット商品や新しいビジネスモデル。 ヒットメーカーは、いかにして企画を具現化させたのか。 その裏に隠された真意を読み解く。
取材・文/塚田有香 撮影/虫鹿 由香梨(編集部)
第14回 「世界のKitchenから」シリーズ
キリンビバレッジ株式会社
営業本部マーケティング部
商品担当 新商品グループ
主任
松隈 有紀子 さん
「世界のKitchenから」
シリーズ

企画書

1 企画・開発の目的
高付加価値商品の開発を目的としてスタート。当初は健康に特化した商品を想定したが、その後おいしさに着目する方向へ

2 コンセプト
世界各国の家庭の味をお手本にしつつ、そこにひと手間かけて、日本人の繊細な味覚に合うおいしさを追求する商品を目指した

3 商品化の経緯
各国の家庭料理を実際に試作して自分たちがおいしいと思えるものを商品化。市場分析を基に商品化するというマーケティング手法ではなく、「この味をお客さまにお伝えしたい」という作り手の思いを優先

4 PR戦略
コンセプトを端的に表すコピーとして「世界の“お母さん”に負けられない」を掲げた広告を展開

「世界のKitchenから」シリーズ

今年2月に数量限定で発売した『とろとろ桃のフルーニュ』(写真左端)は、一カ月後には品薄状態になる人気。(商品の一部は、現在入手困難な可能性あり)

“家族を思いやるお母さんの気持ち”を商品に

世界の家庭に伝わる自家製の味や素材に着目したキリンビバレッジの「世界のKitchenから」シリーズ。2007年5月に第1弾の『ピール漬けハチミツレモン』が発売され、以降『ディアボロ・ジンジャー』、『とろとろ桃のフルーニュ』とラインナップを増やしている。

商品企画がスタートしたのは2006年の秋。「高付加価値型商品を企画する」という目的でプロジェクトが立ち上げられた。

「当時はトクホ商品≠ェヒットしていた時期。でも、消費者が望むのは健康だけなのか。もっとおいしさに着目した商品があってもいいのではと考えたことがシリーズ誕生のきっかけになりました」

そう話すのは、営業本部マーケティング部の松隈有紀子さん。開発メンバー全員が女性だったことも、従来とは違う角度から商品開発を進める要因となった。

「本当においしいものが好きで舌が肥えているのは女性ではないでしょうか。そこで、『身体に優しい素材を選ぶ』、『旬の素材を使う』といった女性に好まれるキーワードを挙げてみたのです」

そこから読み取れたのは、家族を思いやるお母さんの気持ち≠セった。家族の健康を気遣ったり、季節の味を楽しませたいと考えること。こうした「お母さんの思い」と同じスタンスに立ち、手間暇をかけた誠実なもの作りをする。それを実践すれば、女性たちの支持も得られるはずだと考えたのだ。

「事前の調査で、コアターゲットの30〜40代女性は、誠実さ∞丁寧さ≠ニいった作り手の思いへの共感性が高いことが分かっていました。私たちの思いがきちんと伝われば、必ずヒットにつながるという確信がありました」

ただし、その思いを実際の商品に落とし込むのは簡単ではなかった。例えば『ピール漬けハチミツレモン』ではレモンの皮をそのままボトルに入れているが、これは従来の常識では難しいと考えられていたこと。しかし、松隈さんたちは製造部門に粘り強く思いを伝え、最終的には理解を得ることができた。

今年4月には初のチルド商品も発売。「今後はさまざまなカテゴリーで『世界のKitchenから』シリーズを展開していきたい」と展望を語った。

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