スポーツ界の覇者が語る仕事哲学に学ぶ  

プロフェッショナルの条件

常に最高のパフォーマンスが求められるスポーツ界のプロフェッショナルたち。自己研さんに励み、勝利にこだわり続ける彼らのストイックで柔軟な独自の“仕事哲学”に迫る。《2008年8月号より抜粋》
取材・文/槙野仁子、市谷 美香子(編集部)、撮影/岡崎雄昌
今シーズン、日本球界の頂点を目指して、パシフィック・リーグのペナントレース首位をひた走る埼玉西武ライオンズ。その圧倒的な強さは、1980年から1990年後半にかけて、リーグ優勝に日本一とタイトルを思うがままに獲得していた黄金時代をほうふつとさせる。中でも、ひときわ頼もしさと輝きを放つのが、中島裕之選手。チームの生命線を守り抜き、重責を背負う3番打者に、プロフェッショナルとしての心構えを聞いた。

ビジネス界では、自分がイメージしていたこととは違う仕事や役回りを求められることがあります。中島選手も外野手として活躍されていましたが、プロ入り後に内野手へと転身。戸惑いはありませんでしたか?

「2000年のドラフトで指名を受けた時に、内野手をやってほしいと言われたんですが、一度もやったことのないポジション。しかも、高校卒業したての選手は僕だけで、ほかの選手は大学卒や社会人とまさに即戦力。同期もどんどん1軍へ上がっていく状況でした。でも焦りはなかったんです。とにかくゼロから積み上げていこうと決めていたので、絶対に弱音を吐かないことを自分に課していました。もしもそれを口にすると、ほかの選手にチャンスが渡ってしまうと思ったからです。プロの世界にチャンスは何度も訪れない。一度のチャンスに全力で食らい付いていく心構えで臨んだ結果、3年目の夏から1軍に上がることができました。今年でプロ8年目、ようやく内野手らしくなったと思います(笑)」

2003年には、当時、チームの主軸であった松井稼頭央選手が大リーグに行き、後任を託されました。大役を任されてプレッシャーもあったと思うのですが、どう向き合ったのでしょうか?

「松井さんが抜けた後、ショート専門の選手が何人かいたんです。そんな中で僕が引き継ぐことになった。たくさんの候補の中から大役を与えられたことで、すごく自信が付きました。その代わり、『結果を残せなかったら人に取られてしまう』と危機感を持って、必死でプレーしました。でも、嫌なプレッシャーではなかったですね。むしろ松井さんの後任なので、注目されるし、名前も覚えてもらえる。『これは自分を売り込むチャンスだ!』ととらえました」

ショートは送球の中継役を担います。瞬時の判断力が求められますが、日々、その力を磨くために意識していることはありますか?

「的確に判断するには、対戦相手や味方の打球の速さ、足の速さなどの個人情報を頭の中に入れておくことが重要です。例えば1塁にランナーがいるとしたら、足の速さから僕がボールをカットするころに、走者がイメージできる。試合を通じてこのような訓練を繰り返し行っています」

3番打者としての役割を果たす上で心掛けていることは?

「1番打者や2番打者は、出塁することが主な使命です。4番、5番打者は塁に出た味方をホームに返すのが役割。3番打者は、試合の流れに応じて、出塁したり、点を稼いだりと両方の役割が求められるんです。僕はバッターボックスに向かう時、いつもワクワクしているんですが、同時に冷静に人の動きを見るようにしています」

決して腐らず、妥協せず、でも楽しみながら一つ一つの課題に真正面から取り組んできた中島選手。そんな中島選手が考えるプロフェッショナルの条件とは?

「プロは一つのことを簡単に完成させない人のことだと思います。常に自分自身が取り組んでいることを追求し続けるからこそ、成長できるんじゃないかな。僕も『もっと打てるようになるためには、何が必要なのか』と常に考えています。例えばテニスや卓球を見て、ボールとラケットが当たる角度によって飛び方がどう変化するのかなど、ほかのスポーツからもヒントをもらったりしているんです。僕は、やるからには何でも一番になりたい。誰もやったことのないことを成し遂げてみたいんです。今年はトリプル3(打率3割以上・本塁打30本以上・盗塁30個以上)に挑戦したいですね。そのためにも、いろいろなことに興味を持って自分を追求していきたい」

インタビュー中、終始笑顔で話す中島選手。言葉の端々には、若々しさと熱い志が込められていた。何事もチャンスととらえるメンタリティーと枠にとらわれない探究心。この二つを武器に持つ25歳が偉業を達成する日は、そう遠い未来のことではないだろう。

typeのおすすめサービス

サイトでは検索できない非公開求人をキャリアアドバイザーがご紹介。さらに、職務経歴書の書き方や、受かる面接のコツなど、転職ノウハウを伝授!
情報を登録しておくだけで、あなたに興味を持った企業の採用担当者から直接スカウトが届きます。
正社員で成長したい女性のための転職サイト!
「女性管理職がいる」、「働くママ歓迎」など、女性ならではのこだわり条件から求人を検索できる!