ビジネスを創造する源を探る ヒットメーカーの企画書

時にマーケットの流れさえも変えてしまう、 ヒット商品や新しいビジネスモデル。 ヒットメーカーは、いかにして企画を具現化させたのか。 その裏に隠された真意を読み解く。
取材・文/塚田有香 撮影/虫鹿 由香梨(編集部)
第17回 江崎グリコ『walky walky』
江崎グリコ株式会社
事業統括本部
菓子開発企画部
白鳥仁也 さん
江崎グリコ『walky walky』
企画書

1 コンセプトメイク
場所やシーンを選ばず、誰もがあらゆる場面で楽しめるチョコレートを目指した

2 パッケージ容器
仕事や作業の流れを止めずに食べられるよう、ドリンクスタイルを採用。注ぎ口付きのカップは、コーヒーなどのテイクアウトカップ容器からヒントを得た

3 ネーミング
歩きながらでも食べられることを印象付けるため「walk」をアレンジ。同じ単語を重ねて“ウキウキ”といった言葉を連想させ、食べる楽しさも打ち出した

4 PR戦略
「菓子を注ぐように食べる」という、消費者が今まで経験したことのない行為に初めて挑戦するときのハードルを低くすることが最大の狙い。大量の駅貼り広告やサンプル配布イベントを通じて、「皆がやっているなら自分も」と思わせることを重視した

江崎グリコ『walky walky』

現在は北海道から関東甲信越・静岡県で発売中。9月より全国展開。同社の商品であるポッキーの素材を使い、小粒プレッツェルをチョコレートでコーティング

食べるシーンや人を選ばない口に注ぐように食べるチョコ菓子

江崎グリコが2008年4月に関東甲信越・静岡で発売した、カップ入りの小粒チョコスナック『walky walky』。容器から直接口へ注ぐようにして食べるという斬新なスタイルが注目を集めている。

商品開発のきっかけは、同社の『メンタルバランスチョコレートGABA』のヒット。これはギャバという健康成分を含むのが特徴だ。

「ただし、健康的ということは、成功した要因の一つの側面でしかない。もっと重要なのは、オフィスで食べていいチョコレート≠開発したこと、つまり新しい食シーンを開拓したことなのです」

そう話すのは、菓子開発企画部の白鳥仁也氏。それまで「お菓子のような遊びの要素を仕事場に持ち込むべきではない」と考えていた多くの日本人に対し、「これはストレス社会で闘う人を支えるツールだから、オフィスに持ち込んでも構わない」という一種の免罪符を提供したのが同商品だったのだ。

「だが、免罪符は一枚ではないはず。ほかにもオフィス需要に入り込むための切り口はある」。そう考えた白鳥氏がたどり着いたのが、「仕事の手を止めないチョコレート」だった。仕事中にチョコレートを食べようとすると、包装を開け、口に入れ、汚れた手を拭き……という一連の動作によって、仕事を一時中断せざるを得ない。この課題をクリアするためには、手を汚さずワンハンドで食べられる商品を開発すればいい。そこから、「口に注ぐように食べる」というドリンクスタイルのアイデアが生まれた。

「しかし商品企画を進めるうちに、そもそもチョコレートを食べてはいけないシーンがあること自体、おかしな話だと思うようになったのです。オフィス以外でも、外を歩いているときや車の中など、何となくお菓子を食べづらいシーンは存在する。ならばその価値観を覆し、あらゆる場面で楽しめる食スタイルを提案したい。当初はオフィス向けの新商品を想定しましたが、最終的には場所やシーンを選ばない商品へと、目指す方向性をシフトしました」

「お菓子を食べてはいけないシーンをなくしたい、というのが私の夢。その一助をこの商品が担えれば」と白鳥氏。全国発売時、年間25億円の販売目標を掲げている。

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