松下電器産業株式会社は2008年10月1日よりパナソニック株式会社へ社名変更いたしました。

メーカー二極化時代の歩き方

景気回復、業績好調、勝ち組・負け組、業界再編、事業撤退―。一見相反するニュースが混在していたのが2006年上半期の製造業界だ。どうしたって会社の経営方針に大きな影響を受ける技術者という仕事。激動するこの時代に現場技術者はどう動くべきなのだろうか。ここでもう一度自分のエンジニア人生を真剣に考えてみたい。



株式会社ドリームインキュベータ
プロジェクトマネジャー
宮宗孝光氏

大学を卒業後、大手電機メーカーに入社。新規レーザーの開発・量産化、量産工程の立ち上げ・最適化などに従事したのち、中堅SIerを経て現職へ。現在はコンサルタントとして、メーカーを中心に新規事業の立ち上げや既存技術を活かした事業戦略の策定を支援している。元技術者として開発現場の実情にも詳しい
株式会社キャリアコンシェルジュ
取締役 人材紹介事業部長
井上竜紀氏

大手精密機械メーカーの主任技術者として次世代製品の研究開発を手がけた後のち、キャリアコンシェルジュに入社。主にインダストリ業界の技術者に対するキャリアアドバイザーを担当し、数多くの実績を上げている。「元技術者である私だから理解できるエンジニアの思いやこだわりがあるはず。どんな悩みでもまずは気軽に相談してほしい」と語る



コニカミノルタのデジカメ事業撤退、日産自動車の日産ディーゼル売却―。2006年に入っても業界再編・淘汰の波は止む気配すらない。

2006年上半期 おもな業界再編トピックス
1月 ・コニカミノルタ カメラ事業から撤退を発表
・三洋電機 有機EL事業からの撤退を発表

2月

・東芝、ソニー、NECエレクトロニクスが
・45ナノLSIの共同開発を発表

3月

・日産自動車が日産ディーゼル工業株売却を発表
4月 ・いすゞ自動車と米GMが資本提携の解消を発表
・NEC、米EMCと業務用ストレージ分野で提携を発表
5月 ・NECと松下電器産業、
・携帯電話端末事業の提携に向けた協議開始を発表
「市場全体の成長が鈍化した結果、流通側の圧力による価格競争と多様化するニーズを捉えるための開発競争が激化した。その結果、売れる製品と売れない製品が明確になり、市場から退出する企業が出てきた。銀行がビッグ3に集約されたように、どの業界でも影響力をおよぼす数社と独自ノウハウを持つ企業以外は淘汰されていくでしょう」

ドリームインキュベータでメーカーを中心に業務コンサルティングを行う宮宗孝光氏は市場の潮流をこう見る。さらに宮宗氏が指摘するのは、製品サイクルの短期化に伴う市場変化のスピードだ。

「2000年前後には“勝ち組”と言われていたソニーや、パイオニアなどのメーカーはここ1〜2年で急激に業績を悪化させた。経営判断しだいで、いまの勝ち組も将来どうなるかは分からない」

現在、どんなに業績の良い企業でも安泰とはいえない。それが現在の市場なのだ。



二極化の流れは技術者の現場にも大きな影響をもたらす。

「事業売却となった場合、技術者には売却先の企業で同様の技術開発を続ける道が残ります。一方、事業撤退の場合は、社内の近い技術領域をやっている部署か、あるいはまったく新規の部署に異動になることもあり得ます」(宮宗氏)

こうした現状と向き合わざるを得ないエンジニアだが、そのエンジニアの「質」も二極化していると、メーカー技術者出身のキャリアアドバイザー、キャリアコンシェルジュの井上竜紀氏は指摘する。

「勝ち組志向のエンジニアは、所属する事業部がなくなってもそれを新しいことを始めるチャンスだと捉える。一方、負け組志向のエンジニアは、『この会社どうなっちゃうんだろう?』と自分を見失ってしまう」

「自分自身はこうしたい」という軸を持っているかどうか。そこが勝ち組、負け組の分かれ目だという。

「数字で自分の仕事の成果を確認できる営業職と異なり、技術者の仕事は数字で測れない。それだけに、会社に流されやすいということを認識すべきです」



環境の変化はどのエンジニアにも起こりうる。そうなったときにあわてないためには、普段の意識の持ち方が重要だ。そのポイントを井上氏は2つ挙げる。

キャリアを考えるための情報収集法
日経新聞を読む
世の中の流れを伝える情報が自分の置かれている状況を客観的に把握する材料になる
大学時代の先輩に聞く
興味あるメーカーに在籍する先輩から、内部の人間しか分からない情報を掴もう
キャリアアドバイザーに相談する

企業側の採用事情と技術者のキャリアに精通しており、相談することで進むべき方向性が見えてくる

「まずはアンテナを張って業界に関する情報を得ること。技術誌だけでなく、日経新聞を読んで世の中の潮流と自分の立ち位置を知る。もうひとつは、『自分の身は自分で守る』という認識を持つこと。世の中を俯瞰したうえで必要なスキルを獲得していく。そんな姿勢を持つ技術者はスムーズに転職を決めていますね」

とはいえ、技術者の置かれている環境はさまざま。新技術を活用する権限がないといったケースもある。

「それでも、与えられた環境のなかで工夫するということは誰にでもできるはず。新しい技術は使えなくても、自分なりの手法で開発や実験をしてみる、人と積極的にコミュニケーションをとるなど、自分を成長させる手段はあるんです」

そうした仕事の積み重ねが技術者としての市場価値を高めると井上氏。「この点に気付いているエンジニアは少ない。裏を返せば、そこに気付けば現在はエンジニアが自己実現するチャンスでもあるんです」



『転職して3年後の自分をイメージできる人は転職も視野に入れるべき、見えないなら慎重になるべきだ』とエンジニアの方にはアドバイスしています。転職してこうなりたいという目的がなければ、“できる”エンジニアでも、『会社名が変わったけど、同じような仕事で達成感や満足感が得られない』という状況に陥りかねない。要は本人がどうなりたいか分かっていないといけないんです」(井上氏)

その場しのぎの転職は、エンジニア本人にとって意味がないというわけだ。「負け組にいるから勝ち組に転職する」「事業部の撤退があったから転職する」というのも、やはり会社を軸にした考え方。何かにしがみつく発想では転職の意味が半減してしまうという。

「こんな仕事をしていきたいというイメージがあって、いまの会社ではそれが実現できないとなれば、会社を替える意味がある」

転職すれば、開発の進め方は変わり、それまでの人脈もなくなるなど、ある程度の苦労が伴う。そこで転職の目的があるかないかは、転職するエンジニア本人にとって大きなことなのだ。


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