Ultimate Eco-friendly Car究極のエコカーを作ってみました

CO2排出量の削減、燃費の向上など、環境に優しいクルマ「エコカー」の注目度が高まっている。そんな中、クルマの最新技術を支えるサプライヤーで活躍するエンジニアはどのような思いで業務に就いているのか? また、彼らが思い描く究極のエコカーとは?
●Word/KOJI URANO.NAOJIRO ONUKI.YASUNORI NARAHARA(E-type)
●Photo/MAKOTO OSAWA.AKIHIKO SUZUKI.TAKASHI TOGAWA ●Illustration/MAKOTO TADA

エンジン編

デンソー
DENSO
竹内克彦 氏 Katsuhiko Takeuchi
ディーゼル噴射技術1部
開発室 主幹
大学で材料工学を専攻しながら自動車部に所属し、卒業後の1989年にデンソーに入社。最初に配属されたのはディーゼルエンジンの要求分析、システム設計部で、その後も乗用車用からトラック用まで、さまざまな排気量のディーゼルエンジンを担当する。現在は開発の主幹として辣腕を振るう

吸ったときよりもクリーンな空気を排出するエンジンを

コモンレールシステムの量産化にいち早く成功し、日本のクリーンディーゼル開発の先頭を走るデンソー。ディーゼル噴射技術1部の開発室で主幹の重責を担う竹内克彦氏は、入社してから一貫してディーゼルエンジンの開発現場で汗を流してきたエンジニアである。

「力強く走り、環境にも優しい。それがディーゼルエンジンの特徴。現在はそんなディーゼルのコモンレールシステム全体を見ていて、仕様決めを行っています」

その際に難しいのは、「誰の目線で仕様を決めるのか?」だという。ユーザーや開発者、そして地球環境など、それぞれの目線によって重視する項目は大きく変わってくる。例えば、ユーザーはコストやライフ、見た目のスペックなどを重視したい、開発者は先進技術や最新の材料を積極的に盛り込みたい、そして環境面からはCO2や窒素酸化物(NOx)の排出量を可能な限り減らし、さらに燃費性能も伸ばしたい――。これらの要求を高い次元でバランス良く満たし、最終的な仕様を決めることが竹内氏の仕事なのだ。かなり困難を伴う作業だが、最終的には「自分のディーゼルエンジンに対する“思い”を周囲に伝える」ことで、仕様決めの筋道を構築していくそうだ。

そんな竹内氏に、現在考える理想のディーゼルを問うと、「吸った空気よりもきれいな空気を出す、燃費をさらに向上させる、リーズナブルな価格で提供する」という3点に集約できるという。

1. リーズナブルな構成

ここでいうリーズナブルな構成とは“価格”と“システム本体”のこと。システムではシンプルかつコンパクトサイズの機構を目指す

2. 燃費の向上

燃焼を常に最適にコントロールし、精度よく燃やすことを目指す。モーターなどの動力源とのコラボレーションも試みたい

3. 排気のクリーン化

「エンジン内で燃えた有害なものを外に出さない」システムを構築する。最終的には、ガソリンエンジンに匹敵する排出ガスのクリーン化を達成したい
きれいな空気の排出に関しては、インプット側での制御の緻密化と高圧噴射による燃焼効率の向上、アウトプット側での後処理システムの制御と新触媒の採用などを組み合わせて実現していく予定。燃費面では精度よく燃料を燃やせる機構を達成し、従来無駄とされた熱や電気などのエネルギーを活用できる新システムを開発したいという。加えて、いろいろな動力源とのコラボレーションも試したいそうだ。価格については、クルマ自体の機構が複雑化している事実を踏まえた上で、リーズナブルな価格でしかもシンプル構造のディーゼルシステムを目指すという。竹内氏は「この過程でキーとなるのが、ECUの進化」だとも付け加えた。

もう1点、竹内氏は開発における自身の確固たるポリシーを語った。

「近い将来と30年後くらいを目標にした2つのシステムの開発を常に考えています。また当社はディーゼル以外にもクルマに関する幅広い製品を手掛けていますので、価値観の違う他部門との折衝で新しいモノを見つけていきたいですね」

どうやら竹内氏の視線の先には、次世代型クリーンディーゼルの開発道程がしっかりと見えているようである。
ボッシュ
BOSCH
石川毅彦 氏 Takehiko Ishikawa
ディーゼルシステム事業部
開発部門 コンポーネント開発二部
大学で機械工学を専攻した後、1996年に旧ゼクセル(現ボッシュ)に入社してディーゼルエンジンの分配型燃料噴射装置の開発に従事。2001年にはドイツのボッシュ本社に出向してコモンレールシステムの開発などを担当する。2005年に帰国してから現職

インジェクタの高圧化・高精度化がディーゼルエンジンの進化を決める

ガソリンエンジンに比べて燃費が良くCO2の発生量が少ない。しかも低回転域から太いトルクが発生するので運転がしやすいというメリットを持つディーゼルエンジン。欧州市場では“環境に優しい動力源”として人気があり、乗用車の6割近くがディーゼルエンジンを搭載している。世界規模で見ても、ディーゼルエンジンの需要は右肩上がりだ。かつては黒煙などの粒子状物質(PM=パティキュレートマター)や窒素酸化物(NOx)が多く発生するなどの問題もあったが、システムが急速に進化した結果、PMやNOxの排出量は大幅に削減された。

ボッシュのディーゼルシステム事業部でインジェクタの開発に辣腕を振るう石川毅彦氏は、そんなディーゼルエンジンを「進化の途上」と解説する。

「電子制御システムの採用やコモンレールシステムの導入で、ディーゼルエンジンは大きな進化を遂げてきました。でも、環境対策の面ではまだまだやるべきことがたくさんあります」

その一例として挙げたのが、現在開発に携わっているインジェクタだ。今後インジェクタに必要とされる機能について、石川氏はこう話す。

1. 制御機構の進化

最適の燃焼や微細噴霧を実現する上で、噴射制御システムの進化は必須。各種センサーによる燃焼のフィードバック制御も、より完成度を高めたい

2. 制御機構の進化

ピエゾ式や新しいソレノイド式のインジェクタの噴射間隔を「0」に近づけ、さらなる排出ガスのクリーン化と低騒音・低振動化を実現

3. システムのコンパクト化

燃料噴射圧を高くした上で、システム自体のコンパクト化と軽量化を達成したい。可動部の軽量化は、応答性の向上にも貢献する
「現在はエンジンの性格やアプローチ方法によって“ピエゾ式”と“ソレノイド式”を使い分けていますが、どちらの場合も高圧化と高精度化が求められています。高圧化に関しては今後、2000気圧以上が主流になるでしょう。それに伴う燃料の噴射タイミングや噴射量の制御を高い精度で行って、応答性を引き上げる必要があります」

さらに石川氏は、インジェクタ以外の構成パーツとの開発連携も重要だと指摘する。

「環境対策を向上させるには、吸気から後処理までのシステムをトータルで考えなければなりません。サプライポンプやコモンレール、センサ、インジェクタ、それらを制御するECU(エンジンコントロールユニット)、そして選択還元触媒やDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)など、すべてを連携させながらトータルで進化することが必要となってきますね」

こうした開発の面で、「吸気から後処理までのすべてのパーツを作っているボッシュは、非常に先進的でやりがいのある現場」だと、石川氏は力説する。さらに、「ドイツやオーストリアなどの開発部門からも、質・量ともに豊富な情報が入ってくる」そうだ。

クリーンディーゼルの開発に、世界中のエンジニアの英知を結集させているボッシュの現場。その注目度と期待度は、今後さらに高まっていくだろう。
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