Dress Code株式会社のインタビュー
姉妹媒体『エンジニアtype』に掲載中のDress Code株式会社のインタビュー記事を転載しています。
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なお、募集職種とは異なる職種やテーマのインタビュー記事が掲載されている可能性もございますので、ご了承ください。
- インタビュー
SaaS is Dead時代に「日本発、世界標準」を目指す。カスタム“なし”を貫く新SaaSの開発思想
AIの台頭により、既存のソフトウェアーー特にSaaSは、その存在意義を根底から揺さぶられている。コードが自動生成され、AIがあらゆる業務を代替する時代となり、「SaaS is Dead」という言葉が囁かれるようになって久しい。
そんなAI時代に、新たなSaaSの形を生み出している集団がいる。人事、情報システム、総務、採用、コーポレートなどを網羅したコンパウンドプロダクト『DRESS CODE』を提供するDress Code株式会社だ。
Dress Codeの開発チームが目指しているのは、単なるツールとしてのSaaSではなく、企業のオペレーションそのものを再定義する「業務OS」とも言える、新しいプロダクトのあり方だという。SaaSの死をものともせず、日本、そして世界へとその価値を届けようと奮闘する開発現場の実態を探ってみよう。
Dress Code株式会社
Product&Technology テックリード
河村勇樹さん(写真右)
2019年に新卒で大手事業会社に入社し、航空気象サービスの開発に携わる。21年、レバテックに入社。CTO室テックリードとして転職サービス『レバテック』の開発・組織を牽引。24年11月、Dress Codeに入社
Dress Code株式会社
Product&Technology
山口祐司さん(写真左)
2011年に新卒でソフトバンクモバイルに入社。16年にサイバーエージェントに転職し、フロントエンドを中心にバックエンドやインフラも経験。その後、リクルートライフスタイル、ラクス、HRBrainでチームリーダーやマネジャーを務める。25年7月、Dress Codeに入社
従来とは“逆”の開発アプローチでSaaS is Deadに抗う
ーーお二人が開発に携わっている『DRESS CODE』には、一般的なSaaSとは異なる特徴があるとか。
河村:『DRESS CODE』は特定の業務に特化するのではなく、企業内に点在するあらゆる業務を、部門横断でシームレスに統合する「コンパウンドプロダクト」なんです。
特にフォーカスしているのは、人事・労務、採用、総務、会計、情報システム、プロジェクトマネジメントなど、「人」にまつわる業務。従来のSaaSでは対応できなかった“摩擦”の解消を目指しています。
ーー摩擦、ですか?
河村:企業の部門ごとにシステムやデータが分断され、業務がサイロ化することによって問題が生じることがあるんです。
バックオフィス業務向けプロダクトの歴史を振り返ると、この30年ほどでさまざまなERPパッケージやSaaSが登場しましたが、いずれも部門ごとに最適化したものばかりでした。
人事労務関連のプロダクトはHR部門しか使わないし、デバイスやアカウント管理用のツールは情シスしか触れない。でも実際の業務は一つの部門だけで完結しませんよね。例えば「入社手続き」の業務は、人事労務が内定者と雇用契約の書類を交わせば終わりではなく、情シスが社員用アカウントを発行したり、総務が備品を用意したりと、部門から部門へと業務フローが流れていきます。
にもかかわらず、組織間の連携がとれないまま社内にSaaSが乱立していることで、効率低下やエラーの増加といった問題が生じていました。
この摩擦を解消できるのが、業務プロセス全体を一気通貫でカバーするコンパウンドプロダクトです。社内のあらゆるバックオフィス業務を『DRESS CODE』の中で完結することができます。
ーー従来のSaaSとは異なるということは、開発する上でも何か違いが?
河村:SaaSをはじめ、一般的なプロダクト開発は「足し算思考」で行われています。「足し算思考」の良いところは、目の前の課題を解決する機能を開発し、別の課題が出てきたら機能追加や別のプロダクトで対応する。そうやってアーキテクチャを継ぎ足しながらインクリメンタルに開発するのが「普通」だし、リスクが少ないためです。
山口:その場合、まずは「人事部門向け」や「情報システム部門向け」といった個別のツールやアプリケーションを作って、プロダクトが増えてきたらミドルウェアを共通化する……というプロセスになります。このプロセスでも、今見えている問題に対処することは可能です。ですが、結果的には先ほど説明したような摩擦を生みやすくなってしまいます。
なので『DRESS CODE』は「引き算思考」で作っていったんです。
ーー引き算思考?
河村:『DRESS CODE』のアーキテクチャは三つの階層で成り立っています。あらゆる業務で必要となる共通のデータベースが土台となり、その上に共通のミドルウェア、一番上に「HR Force(人事労務)」「IT Force(情報システム)」などの各機能を展開する方式です。
開発の進め方としては、まずデータベースとミドルウェアの二つの階層から成る「Platform Capability」と名付けた共通基盤を構築します。先に個別のデータや業務を統合した土台を作ることで、その上に載せた各種機能が部門横断でシームレスに連携して動く仕組みです。一般的な開発とは逆の順序でプロダクトを作っていることになりますね。
最近は「SaaS is Dead」などと言われていますが、それは従来のプロダクトがユーザーに求められている価値を本質的には提供できていなかったことの裏返しでもあると思うんです。先ほども触れた通り、入社手続き一つとっても「HR部門だけ」「情シスだけ」では完結しません。組織間での二度手間やエラーが起こらずにスムーズに対応できれば、死ぬどころか、企業にとってなくてはならないツールになるでしょう。
そんなプロダクトを作り上げるために、私たちはこれまでの常識や手法にとらわれずプロダクト開発に取り組んでいます。
「SaaS=カスタム前提」という常識にとらわれない、標準装備の力
ーー土台を固めることで、部門横断の連携がスムーズになるということですね。ただ、SaaSが持つべきカスタム性についてはどう考えていますか?
河村:部門横断で使うことを前提にしているので、最初に各業務を整理して、その上でアーキテクチャを構築します。なので、企業や部門向けのカスタム項目は一切作りません。
ーーSaaSというと、基本機能が搭載されたものをカスタムして使うことが当たり前……といったイメージでした。
河村:従来のSaaSですとそうですよね。顧客ごとに機能や仕様をカスタムできることをセールスポイントにしているケースもありますし。
ですが『DRESS CODE』の場合は、あらかじめ各部門の業務項目を徹底的に洗い出し、想定されるシナリオを整理。そして、部門を横断した一つの業務として新たに定義した上で、全て標準機能として組み込んでいます。だからカスタム項目を作らなくても、あらゆる業務に対応できるんです。
従来のSaaSなら「この場合はカスタムが必要になります」という場面でも、『DRESS CODE』なら全て「標準装備でできますよ」と言えるのが強みです。
ーー『DRESS CODE』はリリース当初から海外にも展開されていますよね。国ごとの法律や商習慣などへの対応も必要になりますが、これもカスタム対応はしないのですか?
河村:はい、それも標準装備です。国際化対応の共通基盤を構築し、特定の国や地域に依存しない仕組みを作っているので、対応すべき言語や法的要件が増えた場合もユーザー側の操作で簡単に対応できます。
山口:実は国や地域の分断によって生じる摩擦問題も多いんですよ。
日本の会社が導入しているSaaSは海外拠点で使えず、現地では異なるツールを使うしかないため、管理者やデータがバラバラで一元化できないという課題を抱える企業は少なくありません。
『DRESS CODE』なら、メニュー画面で言語を切り替えるだけで、日本でも海外でも使えるので、グローバル展開している日本のホールディングス企業にも喜ばれています。
全員が顧客と向き合う「プロダクトエンジニア」
ーー独自の方針で開発されているプロダクトですが、開発に携わる上でどのような視点を大切にしていますか?
山口:「自分たちが作るものが誰に届くのか」「この製品を使う人がどのような業務に携わっているのか」をしっかり理解することですね。
企業のバックオフィスで働く人たちが直面する摩擦問題を解決するためには、顧客や業務に関するドメイン知識が必要不可欠ですから。エンジニアだからといって、技術に特化しているだけでは不十分なんです。
当社のエンジニアが「インフラエンジニア」や「フロントエンドエンジニア」といったスキルで区別するのではなく、「プロダクトエンジニア」という名称を持っているのも、一人一人が顧客視点を持ってプロダクトを作っていく、という姿勢が開発組織に根付いていることの表れだと思います。
河村:毎週行われている「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)ミーティング」も、当社ならではかもしれませんね。
エンジニアやビジネスサイドを含めた全員が参加するミーティングで、セールスやカスタマーサービスがクライアントから得た情報を共有し、「お客さまにとって本当の価値は何か」を議論する場です。
そしてもう一つ、代表取締役の江尻(祐樹)とPdM、エンジニア、デザイナーが集まり、設計について意思決定するミーティングも定期的に実施しています。これらの機会を活かしながら、お互いにドメイン知識を補い、現場の業務で本当に役立つ設計を採用しているんです。
山口:それ以外でも日常的にビジネスサイドのメンバーとコミュニケーションをとっていますし、時には商談に同席してクライアントの声を直接聞くこともあります。
エンジニア自身がフルスタックかつフルサイクルの思考で、全方位的にプロダクトに関わろうとする姿勢が大事だと思いますね。
河村:私たちがやっていることって、結構泥臭いんですよ。特に業務項目を整理する作業では、「この業界ではどう使われる?」「海外ではどうなっているんだろう?」と議論を重ねながら、どんな要素やシナリオが想定されるかを突き詰めなければなりませんからね。
でも、徹底して顧客価値を追求するからこそ、あらゆる業務を網羅できるし、摩擦問題という誰も解決できなかった課題にアプローチできるのだと思っています。
AI時代の荒波を、精鋭たちと「フルサイクル」で駆け抜ける
ーーDress Codeにはどんなエンジニアがジョインしているのでしょうか?
河村:事業の立ち上げやプロダクト開発のサイクルを一通り経験した「二周目人材」と呼ばれるエンジニアが多いですね。実際、私や山口もそうです。
山口:Dress Codeは前例のないチャレンジをしているので、自分の経験を複合的に活かせますからね。
私自身、過去にはフロントエンド、バックエンド、インフラ、マネジメントとさまざまな経験をしてきましたが、「従来とは逆のアプローチで開発する」という今までにない挑戦ができることにワクワクしました。
河村:私の場合は、“ゼロイチ”でプロダクト開発に取り組めることが決め手で入社しました。創業間もない今だからこそ、その土台を支える基盤構築から携われる。これは自分にとって大きな魅力でしたね。
山口:これまでの経験を総動員しなければやり切ることができないようなプロダクトに関われるのは、純粋に楽しいですよね。それぞれに強みを持つスペシャリストが集まっているので良い刺激があります。
ーープロフェッショナルな集団にジョインするとなると、若手エンジニアにとっては少しハードルが高いのでは……?
河村:プロダクトの土台ができて、開発も軌道に乗っているので心配いりませんよ。それに、この環境で働くのは、エンジニアとしてのキャリアに間違いなくプラスになると思うんです。
生成AIが進化したことで、今はエンジニアのキャリアが不透明になっていますよね。採用面接で会う人たちからも「エンジニアとして転職できるのは、これが最後かもしれない」といった不安をよく聞きます。だからこそ新しいことに挑戦し、自分の領域を広げたいと考えるエンジニアにとって、フルサイクルで開発に取り組めるこの環境は理想的です。
ーーAIの普及によって自身のスキルやキャリアに悩んでいるエンジニアにこそ、チャンスがあると。
河村:Dress CodeはAIが当たり前のものになってから創業した企業なので、AI時代に最適化した仕組みづくりに注力しているんです。メンバーがAIツールの導入や活用に使える額も他社の比ではないですし、代表の江尻からも「顧客への提供価値が向上するなら、もっと投資していい」と言われているほどですしね。
ーープロダクトも、開発環境も、しっかりと土台を固めているということですね。
山口:そうですね。今後も、『DRESS CODE』を日本のみならず世界で使われるプロダクトへと育てていきたいと考えています。
SaaSのガラパゴス化が進む中、海外市場でも成功している日本発のプロダクトはまだ存在しませんから。
河村:海外での成功は夢ですよね。世界中の人たちが『DRESS CODE』を使っている未来を実現していきたいと考えています。
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取材・文/塚田有香 撮影/桑原美樹 編集/秋元 祐香里(編集部)