進化を遂げたMSテクノロジーと、アバナードが構築してきた導入手法により、いよいよ本格普及の
時期を迎えたエンタープライズ向けMSソリューション。その担い手たちの仕事ぶりをのぞいてみよう。
 
大手製造メーカーが全国各地の営業所向けに構築しようとしている大規模営業支援システムを、.NETを用いて開発する。この先進的なプロジェクトの開発プロセスをサポートしているのが、山根隆宏氏と中込秀平氏だ。上司である山根氏はクライアントの本社がある地方都市でプロジェクト全体のプロセス管理にあたり、中込氏は東京で技術サポートの統括を担当している。プロジェクト本体はマイクロソフトからの受託だが、東京のサポートプロジェクトはアバナードがクライアントから直接請けたものだ。

「.NETを用いた開発はそのノウハウが十分に浸透していないため、開発陣がお客様のニーズに合わせたベストプラクティスを構築できるよう、専門家である我々がサポートをしているのです」

自らの役割を山根氏はこう語る。アバナードの創業メンバーの1人でもある彼は、アクセンチュア時代からMS技術を専門にしてきた精鋭だ。一方の中込氏は独立系ソフト会社でERPパッケージの開発に携わったのち、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズでSAP導入を中心に手がけ、2005年10月にアバナードへ転籍した。現在は山根氏のもとで、アバナード流MSソリューションの真髄を学んでいる。

入社わずか1年で1人立ち

山根氏は今回のプロジェクトで、先に述べたミッションのほかにもうひとつ重要な役割を担っている。それは、このプロジェクトを通じて中込氏がどうスキルアップしていくべきかを本人と相談し、その進捗度合いについて適宜フォローアップしていくことだ。山根氏にとって、このミッションは「最優先業務のひとつ」だという。中込氏も、山根氏のことを「何でも相談できる兄貴」と慕う。

「本格的なカスタムソリューション構築に携わることに最初は少し不安を感じました。でも、山根のサポートはもちろんのこと、アバナードが持つグローバルレベルでの導入事例の豊富さにもおおいに助けられています。同様の事例を探せば、具体的にどうしたらいいのかが見えてきますからね」(中込氏)

また、同社が持つ社内ポータルのひとつである「.NETコミュニティ」では毎日100通以上ものメッセージが飛び交い、世界中にいる.NETの第1人者たちに直接相談することもできる。

「情報は共有するものだという姿勢が当たり前のように浸透している。学んでいくためのリソースには不自由しませんね」(中込氏)

さらに同社では、スキルアップのために年間80?120時間を研修に割り当てている。中込氏も仕事に必要とされる技術分野、MCSD.NET資格取得のためのコース、社内アセットの活用に必要な英語など、技術的な内容からプロフェッショナルスキル向上のためのものまで、さまざまな研修を受けてきた。

「仕事現場は離れていますが、私がいなくても中込が代わりに現場を回してくれている。安心して任せられます」

山根氏がこう太鼓判を押すように、中込氏は入社から約1年足らずで“1人立ち”した。同社の人材育成力の高さを物語るエピソードだろう。



手を挙げれば広がるフィールド

マイクロソフト主催のセミナーの講師としても活躍する山根氏は、アバナードの強さを「チーム力」だと強調する。

「技術、マネジメント、コーディネートなど、互いの強さをリスペクトし、吸収し合って、チームとしてトータルにスキルアップしていく。その総合力がベストソリューションを生みます」

弱点を明確にして、スキルアップのサポートをする仕組みやトレーニングが豊富なのはもちろん、得意分野や自ら志す分野を究めるチャレンジも積極的に推奨している。「入社当初からBIやCRMの分野で力を発揮したいと思っていた」と語る中込氏も、「BIセミナー」用のコンテンツ作成を自ら買って出て、独力で資料を集めて見事に成功させたことがある。

「マイクロソフト技術の魅力にひとつは、カバーする領域の幅広さにあります。アバナードはそのフィールドを思う存分活かせる会社。創業2年目の会社ということもあり、手を挙げれば何でも任せてもらえるので、これからもいろんな領域を学んでいきたいですね」(中込氏)
 
 
技術に詳しい先輩が、後輩の成長に常に目を配る――エンジニアが成長するうえでの理想的なパターンを制度化しているのが、アバナードがグローバルで導入している「キャリアマネージャー制度」だ。

新入社員が入社すると、先輩社員のひとりが「キャリアマネージャー」として担当に就く。年間目標の設定や、スキルを獲得するためのトレーニングのプランニングをサポートし、そのプロセスをレビューする。これだけならよくある上司と部下の関係にも思えるが、社長からマネージャー、現場社員までの全社員が最優先業務のひとつと位置づけて実行しているのがアバナードならではだ。

また、年間80?120時間の研修受講が推奨されており、マイクロソフト関連の資格取得支援や「ACM」に代表されるアバナード独自の方法論などの技術的な内容はもちろん、英語研修、リーダーシップ研修など、トレーニングメニューは豊富だ。

制度の形骸化を防ぐフォロー体制

この「キャリアマネージャー制度」は長期的なキャリアプランに主眼を置いたものだが、個々のプロジェクトのレベルでは「プロジェクトフィードバック」制度が育成プランとして機能する。プロジェクトのなかで求められる役割を明確化し、それに沿ったタスクを設定して進捗をレビューするのだ。山根氏が中込氏をサポートしていたように、2重のサポート体制をとることで制度が形骸化することを防いでいる。先輩・後輩の関係を基本に、社員らが日ごろからさまざまな局面で思いを共有しているからこそ、同社の強みのひとつでもあるチームワークも育まれるのだ。

こうしたカルチャーはグローバルなもの。同社の社内ポータルには世界中のアバナード社員がアクセスできるさまざまなテーマのWebコミュニティがあることはすでに紹介した。この他にも、同社の技術者は「MSDN(マイクロソフトの開発技術者向けサポートポータル)」に直接アクセスできるという特権を持つ。

1人ひとりの技術者マインドに裏打ちされた制度や仕組みが、技術を究める絶好の環境を作り出している。

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