2007年4月、勝間和代さんが執筆した『無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法』は、発売されるや否やベストセラーとなった。社会人として働くなか、勉強と転職を通じて年収を10倍に増やすことに成功した勝間さん。勉強を通じてキャリアを切り拓く秘訣を聞いた。 |
勝間和代さん
Kazuyo Katsuma 経済評論家(兼 公認会計士) 慶應義塾大学在学中、2年生のときに公認会計士試験に合格。経営コンサルタント、トレーダー、証券アナリストを経て、2007年からフリーの経済評論家として独立。ワーキングマザー及びその予備軍の女性が集うコミュニティサイトの草分け「ムギ畑」主宰 http://www.mugi.com/ ―社会人のなかには、勉強というものに対して懐疑的な人もいます。特に、SEの場合は勉強など意味がないと考える人も多いように思えますが……。
勝間 『ハイ・コンセプト』という本をご存知でしょうか? 一言でいえば、単純なコーディングなどのタスクはインドなどオフショア開発に圧迫されることは必至。だから、日本を含め先進国のSEはもっとコンセプチュアルな仕事をしないと厳しい、ということが述べてあるんです。 ―だから自分の市場価値を目減りさせないためにも、勉強が必要だと。 勝間 そういうことです。こうした現象は、製造業の分野ですでに起きたことですよね。次はITの分野でこの現象が起きるんです。常に新しいものを吸収していく姿勢がなければ、自分のスキルが持つ価値は減る一方でしょう。 ―とはいえ多くのSEにとって、日々の業務のなかで勉強した成果を実感する機会はあまりないような気がします。 勝間 たとえば昨日、120分かかった作業が今日、40分で終わったとしたらそれは勉強の成果ですよね。短縮できた80分は勉強の成果ですし、その時間をさらに別のことに使えるメリットも享受できる。勉強することのメリットって、なにも資格の合格など特別な結果だけを指すわけじゃないんですよ。なにより、『勉強の成果は特別なことだけではない』ということに“気づく”こと自体が勉強の成果なんです。それは普段、目の前にある仕事を淡々とこなすだけでは見えてこない。勉強という、外部から刺激を受ける行為を通じて身につく視点ですよね。そうした小さな積み重ねが、のちに大きな差となるのではないでしょうか。 ―勉強することで得られるものは1つではないということですね。たしかに転職を考えるITエンジニアの間でも、教育制度の充実を望む声は大きいといえます。 勝間 教育制度の充実に加えて、会社を選ぶときの指標として持ってほしいのが、「自分の部署がプロフィットセンター(=利益を生み出す部門)として扱われる会社かどうか」という視点です。自分が、会社に利益をもたらす存在だと認識されれば、さまざまな“投資”をしてもらえるんです。研修を受けさせてもらえるのも会社が社員に対して行う投資の1つといえます。逆にコストセンター扱いされると、会社が真っ先に考えるのは「削減」。同じ仕事をするなら、花形扱いしてもらえたほうがおトクですよね(笑)。 ―その意味でも、勉強をしやすい職場環境を手に入れることは重要ですね。 勝間 そうですね。職場だけに限らず、プライベートでも勉強する環境に身を置くことはできます。私自身、働きながら社会人大学院で学び、MBAを取得しました。なにも勉強を会社頼みにしなくとも、足りない分は自分で教育機関を活用して補うといった自助努力ができますよね。 ―SNSなどインターネットを情報収集ツールに活用するエンジニアも多いようですが、こうしたメディアの利用で心がけていることはありますか? 勝間 ネットの情報は玉石混交なので、確かな情報が欲しいときはネットに頼らず本を買います。それこそ月に10万円以上は買っていますね。それよりもSNSなどのインターネットコミュニティで面白いのは、普段顔を合わせない人たちの視点や価値観を窺い知ることができること。自分や、自分と似た立場の人とだけ接していると、どうしても一面的なものの見方に偏りがち。そこで、ネットを通じて人間観察をするわけです。それだけでもすごく面白いですよ。多面的に物事を見ることができるようになりますし。ニュースサイトなどの情報を手早く収集したいときにはRSSを活用しています。それにソーシャルブックマークを併用すれば、だいぶ楽にネットを使いこなせますね。 ―勉強を継続するうえではモチベーションを保つことが欠かせませんが、どうすれば勉強への意欲を失わずにいられるのでしょうか? 勝間 こまめに成果を感じ取れるようにすることですね。やってよかったと思える瞬間がたびたび訪れれば、自然と継続したくなると思いますよ。ちょっとしたことでいいんですよ。上司に褒められたとか、作業効率が上がって早く仕事が終わったとか。最初にお話したように、勉強におけるメリットをいくつも用意しておけば、途中でやる気が折れることはないでしょう。逆に、過剰に頑張ってしまっている「オーバーポジティブ」な状態のほうが危険かもしれません。 ―というと? 勝間 頑張っていると、冷静に物事を見られなくなるんですよ。頑張っている自分が可愛くて、周囲を悪者にできてしまう。自分のやり方が悪いのかもしれない、身の周りを動かす仕組みづくりがよくないのではないかといった、根本的な解決への糸口を自ら閉ざすことになります。 ―頑張っている、と思い込むことが一種の逃げになっている、と。勝間さんのお話では、ご自身の置かれた立場を冷静に客観的に見ることができていてすごいと感じます。 勝間 「メタ認知」という概念を念頭において物事を考えるクセをつけているからでしょうか。自分自身の存在についても、写像のなかの客観視として捉えるようにしています。 ―最後に、読者に向けて転職についてのアドバイスをお願いします。 勝間 転職にはさまざまなリスクがあるので慎重に、というのは大前提ですが、転職を“しない”でそこに留まるというリスクのほうが自分のこれからを考えたときに大きいと判断した場合には、動いてみてはいかがでしょうか。 ―ありがとうございました。 |
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