ハイブリィド
取締役
坂本竜也さん
大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。大規模システム開発やITサービス企画に従事したのち、技術グループマネジャーを務める。2000年、スカイライトコンサルティングを設立し、採用・人材育成担当取締役に就任。18年にハイブリィド入社。2019年より現職
姉妹媒体『エンジニアtype』に掲載中のハイブリィド株式会社のインタビュー記事を転載しています。
企業のカルチャーや働く社員のイメージを知るためにご活用ください。
なお、募集職種とは異なる職種やテーマのインタビュー記事が掲載されている可能性もございますので、ご了承ください。
コロナ禍を契機に急速な広がりを見せた、フルリモート勤務。場所に縛られない自由な働き方として、エンジニアを含む多くの人からの支持を集めたのはそう遠い過去の話ではない。
にもかかわらず、2024年以降、国内外の大手企業を中心に「出社回帰」の流れが加速している。メディアを賑わすことも少なくなく、SNSを中心に不満を漏らす人も見られる。
そんな時代の潮流がありながらも、全社員原則フルリモート、かつフルフレックスを採用し続けている企業がある。企業の「情報システム部門」にフォーカスし、IT戦略立案・システム企画から開発、運用、メンバー育成までを担うIT企業・ハイブリィドだ。
多くの企業がフルリモート継続に難色を示しつつある中、なぜハイブリィドは独自の方針を貫くことができるのか。同社の取締役である坂本竜也さんと、エンジニア3名の話から探った。
ハイブリィド
取締役
坂本竜也さん
大学卒業後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。大規模システム開発やITサービス企画に従事したのち、技術グループマネジャーを務める。2000年、スカイライトコンサルティングを設立し、採用・人材育成担当取締役に就任。18年にハイブリィド入社。2019年より現職
ITソリューション本部 クラウド事業部 クラウド技術開発部
部長
島 朋希さん
IT企業でエンジニアとして経験を積んだのち、顧客折衝やインプリセールスを担当。2019年、ハイブリィド入社。現在はマネジャーとしてプロジェクト管理やメンバー管理を手がける。普段はフルリモート・フルフレックスで勤務中
ITソリューション本部 クラウド事業部 クラウドソリューション推進部 ソリューション開発グループ
森 和也さん
大学卒業後、エンジニアとして7年半勤務したのち、気象予報士の資格を取得。出身地の北海道へUターンし、テレビの地方局で勤務したのち、2025年4月にハイブリィドに入社。現在はERPパッケージの導入支援を担当。北海道に在住しフルリモート・フルフレックスで勤務中
ITソリューション本部 クラウド事業部 クラウドソリューション推進部 導入支援グループ
北川 彩さん
新卒入社したIT企業で組み込み系ミドルウエア開発に従事したのち、SESに転職して公共系プロジェクトを担当。その後、AI関連企業を経て、2020年にハイブリィド入社。現在はERPパッケージの導入支援に従事。フルリモート・フルフレックスで勤務中
ーー今回はリモートワークやフルフレックスといった柔軟な働き方に焦点をあててお話を伺います。数年前から日本でも一般的になった働き方ですが、ハイブリィドがこれらを導入したのはいつですか?
坂本:ハイブリィドでは2015年の創業当時からコアタイムなしのフルフレックス制を採用してきました。リモートワークを導入したのもコロナ禍以前です。
コロナ禍以降は全社員がフルリモートを選択できるようになりましたが、すでに社内のDX化やクラウド化が進んでいたので、「特に問題ないよね」という一言で移行できました。
ーー多くの企業に広がるよりもずいぶん前から導入されていたんですね。もともとの導入の背景を教えてください。
坂本:根幹には、「アウトプット重視」という考えがあります。
当社は企業の情報システム部門が抱える課題解決と組織の機能強化支援をバリューとして提供しています。社員一人一人がプロフェッショナルとして仕事に取り組み、お客さまに対して高い品質の成果を提供することが求められる、責任の伴う仕事です。
だからこそ、エンジニアには高いパフォーマンスで仕事をしてほしい。そのためには十分な裁量と働きやすい環境を提供しようというのが、創業時から変わらない当社の考え方です。フルリモートもフルフレックスも、エンジニアが良いアウトプットを出すために必要だからという極めて合理的な理由で導入したにすぎません。
ーーコロナ禍には多くの企業がリモートワークを導入していましたが、最近ではIT業界でも出社回帰の動きが見られます。一方、ハイブリィドは変わらずフルリモートを継続していますよね。どこに違いがあるのでしょうか?
坂本:出社回帰に転じた企業は、リモートワークに何らかのデメリットを感じたからこそ出社を選び直したはずです。想像するに、社内のコミュニケーションや離れた場所で勤務する社員のマネジメントに課題を感じたのではないでしょうか。
この点については、私たちもさまざまな工夫をしながら、フルリモートで成果を出せる環境や体制を作ってきました。
例えば組織運営の工夫として、1人の上司が管理するメンバーは最大3人までとする小チーム体制を基本としています。リモートワークでは気軽に会話できない分、コミュニケーションコストが高くなりやすい。そのため、上司がマネジメントする人数を最小限にすることで、各メンバーとの情報共有や意思疎通をタイムリーにしやすくするのが狙いです。
以前は定期的な1on1の実施を必須化していた時期がありましたが、上司の負担が増えるなど逆効果になるケースも出てきました。現在はそのルールは廃止し、どのような手法でコミュニケーションを図るかはそれぞれの上司の裁量に任せています。
当社も最初から全てがうまくいったわけではなく、試行錯誤しながらフルリモートに適した環境を作ってきた経緯があります。
ーールールを廃した、とのことですが、働きやすさを向上させるための制度などはあるのですか?
坂本:在宅勤務やリモートワークを支援する社内制度も、社員の声を聞きながら、その時々の課題や要望に応じて拡充させてきました。
現在は毎月の通信費補助や自宅の通信環境整備にかかる工事費の一部補助、モニターやヘッドセットの無料貸し出しなど、在宅でも働きやすい環境を作るための制度を充実させています。
また「ずっと自宅にいると集中しにくい」「家族がいる時間帯は外で仕事がしたい」といった声に応えて、貸し会議室やレンタルスペースを利用した際の費用を補助する「自宅外ワーク支援制度」も設けました。
課題があるからフルリモートをやめるのではなく、フルリモートを継続するために課題をどう解決するかを考え、工夫を重ねる。これがハイブリィドのスタンスです。
ーーハイブリィドでは「全社員のフルリモート」を前提とした環境づくりに取り組み続けているということですね。つまり、会社としてもフルリモート・フルフレックスを継続するメリットが大きいということでしょうか。
坂本:私たちにとって最大のメリットは、社員が多様な働き方を選択しながら、長く活躍できるようになったことです。
例えば出産を機にフルタイムでの出社勤務が難しくなり、前職の会社を辞めざるを得なかった女性エンジニアが、「ハイブリィドなら育児と両立しやすい」という理由で転職してくる。そんなケースが増えつつあります。
また、かつては首都圏在住者を対象としていた採用が日本全国に拡大した結果、多くのエンジニアを迎えられるようになったのも会社にとって良かった点の一つですね。関西や東北、九州、北海道など、さまざまな地域に在住しつつ働いているエンジニアが多数います。東京から地方へUターンして活躍している社員もいますよ。
エンジニアに求められるのは設計書やプログラムなどの成果物なので、基本的にはオンラインのやりとりでアウトプットを出せます。働く場所と時間を選ばないエンジニアという職種は、フルリモートとの親和性が高いのは間違いありません。
今後もフルリモート・フルフレックスを継続して、より幅広い人材が活躍できる組織を目指したいですね。社員の働き方や価値観が多様になれば、逆に「たまには出社して他の社員と一緒に仕事がしたい」という人が増えるかもしれませんので、24年12月に東京・神田の新しいオフィスへ移転しました。ゆったりとしたレイアウトのフリーアドレスで快適に働ける環境を用意しています。
多様な力を結集して、お客さまのためにアウトプットを追求する。これが私たちの目指す理想の組織像です。
ーーエンジニアの皆さんは、転職時からフルリモートを希望していたのですか?
北川:そうです。私は前職の会社に在籍していた時に子どもを出産したのですが、仕事と育児を両立するには、毎日の通勤時間さえもったいなく感じて。そこで、リモートで働ける会社を探しました。
森:私は現在北海道の自宅からフルリモートで勤務しているのですが、以前は首都圏に住んでいました。ですが、「いつか地元の北海道に戻りたい」という気持ちがあったので、Uターンを決めたんです。
北海道で働くために仕事を探していたところハイブリィドを知って、フルリモートで働きたいと思いました。
島:私の場合は、ハイブリィドに転職した理由は仕事内容でした。プライム案件を扱う会社でお客さまのフロントに立つ仕事がしたいと思っていたので、9割以上の案件が直接契約という点を魅力に感じたんです。
ただ、現在はフルリモート勤務の良さを実感しています。
ーーどんな時にフルリモートの魅力を感じますか?
島:ノートパソコンさえあれば、好きな場所でお客さまとコミュニケーションできることです。しかも、フルフレックスでもあるので時間の制約もありませんしね。
対面でお客さまと打ち合わせをするには、お互いのスケジュールを調整し、日時を決めて、場所を確保するといった作業が発生しますが、リモートかつフレックスならこうしたオーバーヘッドはなくなります。至急の用件が発生した時も、すぐにオンラインで話せますし、時間をとって打ち合わせをする際の調整も対面よりずっとラクです。
ーー対面で会う機会が少ないと、顧客と信頼関係を築きづらいのでは? コミュニケーションの難易度も高そうです。
島:テキストベースのコミュニケーションが中心で、お互いの顔が見えない分、お客さまからの連絡にはスピード感を持って対応することを心掛けています。
急ぎで確認したいことがあって連絡したのに、何時間経っても応答がないと、お客さまは「まだ内容を見ていないのだろうか」「ちゃんと対応してくれるのか」と不安になる。それは絶対に避けなければいけないので、コンタクトがあったらできるだけ早く返事をするのが鉄則です。
対面で仕事をすればお互いの人となりがよく分かるし、相手への信頼感や親近感も醸成されやすいかもしれません。ですが、リモートであっても普段の応対の中でこちらの誠意を見せていけばいい。迅速なレスポンスやこまめなフォローを積み重ねることで、リモートでも相手と関係性を築くことができますよ。
北川:対クライアントのコミュニケーションに関しては、対面で仕事をしていた頃よりもスムーズになった手応えがあります。
私はSESで働いた経験もありますが、お客さま先に常駐していると、指示や要望が常に飛んでくるため情報が混乱することも少なくありませんでした。一方、リモートの場合は相手が近くにいないからこそ、お互いに効率的に情報のやりとりをしようとする意識が働くんです。
お客さまも要望の内容をテキストにまとめてから送ってくださるので、優先順位や段取りを整理しやすくてありがたく感じています。
ーーリモートが前提であることに対して、顧客側の理解が得られているのは良いですね。
北川:ただ、テキストのやりとりだけで全てが順調に進むわけではありません。「まだ要件としてはまとまっていないけど、こんなことは可能ですか?」といった相談ベースの対話ができる時間を作らないと、クライアントが抱える潜在的な課題やニーズをキャッチアップしにくいんです。
そこで現在担当中の案件では、オンラインで月2回の定例ミーティングを設けて、何でも気軽に相談していただける場を作っています。過去には「定例でなくてもいいのでは?」との意見が出てしばらく中断していたのですが、文面のみでは細かなニュアンスが伝わらないことから再開した方が良いかと考えていたところ、お客さま側の実務担当者からも直接相談できる機会が定期的に欲しいという意見をいただき復活させました。
今は定期的な対話とテキストベースの効率的なコミュニケーションの組み合わせにより、リモートで成果を出す仕組みが確立しています。
ーー顧客とのやり取りに関しても、リモートならではの工夫があるということですね。では、社内のコミュニケーションについてはいかがですか?
森:私は入社以来ずっとフルリモートなので、社内のメンバーの大半は実際に会ったことがありません。そのため、初めてチャットする相手のことが全く分からない。その点は少し戸惑いました。
でもいざチャットしてみると、相手の方から「この後少し話せます?」と声をかけてくれることがほとんど。一度オンラインで顔を合わせて会話すれば「こんな雰囲気の人なんだ」と分かるので、その後はチャットのやりとりもしやすくなりました。
ハイブリィドではフルリモートが当たり前の文化として根付いているので、新しいメンバーが加わった時も、どう対応すれば本人が組織に溶け込みやすいかを周囲もよく分かっているんだなと感じましたね。
ーーフルリモートであることで生じる課題が、すでに共通認識としてあるのでどう対処すればいいかが組織で周知されているんですね。
森:はい。私の場合、以前もエンジニア経験があったとはいえ、前職は全く異業種の気象予報士だったので、エンジニアとしては約10年のブランクがありました。ですが、私が新卒でエンジニアをしていた頃と比べると各種ツールが格段に進化しているので、コミュニケーションで困ることはありません。
それに、分からないことはAIに聞けば回答が得られる時代ですからね。あまり知識のない言語でプログラムを組みたいときも、AIが叩き台になるものを作ってくれますし、ブランクがあることやリモートワークが理由で仕事に支障が出ることはまず無いです。
ーー島さんはマネジャーという立場ですが、メンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか? 一般的なリモートワークの課題として、マネジメントの難しさがよく挙げられますよね。
島:私が意識しているのは、メンバーが言いたいことがあったとき、いつでも上司に言える状況を作ること。顔が見える距離で働いているわけではないからこそ、困ったことや悩んでいること、不満や愚痴も遠慮なく言ってもらえるようにする必要があると思っています。
そのためには普段から上司と部下の縦のつながりをしっかり作っておくことが重要なので、私は毎週必ずチームメンバー一人一人と話す時間をとっています。日頃から「何か困ったことがあったらいつでも連絡して」と口癖のように言っているので、Teamsの通知音もしょっちゅう鳴りますよ(笑)
ーーそれくらいメンバーが相談しやすい関係を築いているということですね。ですが、コミュニケーションの頻度が上がると、負担が大きくなるのでは?
島:私としては、同じ場所で一緒に仕事をしている方が大変だったかもしれません。目の前にいる部下から「ちょっといいですか?」と声をかけられたら、どうしても自分自身の仕事のペースや集中は切らざるを得ませんし、かといって「今は忙しいからあとで」と断れば、緊急度の高い用件への対応が遅れるリスクがあります。
一方リモートなら、メンバーが相談したいことをチャットでどんどん投げてくれるので、まずはテキストで概要を把握できます。その上で「この件はすぐ対応した方がいい」「これは夕方に時間をとって話を聞こう」といった優先順位をつけて返答できるため、私自身も自分の仕事とメンバーへの対応のバランスがとりやすいんです。
それに、対面では同時に3人の相談に乗ることはできませんが、チャットならそれぞれと同時並行でやりとりもできる。リモートでの対応に慣れてしまえば、対面よりずっとマネジメントしやすいというのが私の実感です。
ーー皆さんのお話を聞いて、フルリモートの効果を最大化するための仕組みづくりの重要性を感じました。今後、より工夫していきたいことや、個人的に注力したいことはありますか?
島:マネジメントを担う立場としては、メンバーの育成に一層力を入れていきたいと考えています。フルリモートで人を育てるには、直接会う機会の少ないメンバーが目指していることややりたいことを理解し、上司が見ていない場所で頑張って出した成果を正当に評価することが重要ですから。
私が定期的にメンバーと話す機会を作っているのも、各メンバーの特性や志向を理解した上で、本人が望むキャリアを実現できるようサポートしたいからです。
冒頭で説明があったように、ハイブリィドはアウトプット重視の会社です。メンバー一人一人が責任と裁量を持ち、自分の特性や強みを活かして成果を出す。これからもそんな組織であり続けることが、私たちに共通する目標です。
北川:私は、私自身がハブになり、チームをうまく回す潤滑油のような役割を果たせる存在になりたいですね。自分が好きなようにシステムを組むのが楽しかった時期もありましたが、現在のチームで仕事の属人化をなくす取り組みを始めたこともあり、どうすれば自分が作ったものを他のメンバーに引き継ぎやすいかを意識するようになりました。
今後はチーム全体で成果を出せる環境を作るために、自分がどう貢献できるかを意識しながら、ハイブリィドでキャリアを積んでいきたいです。
森:私はゴールを目指して与えられた仕事を黙々とこなすのが好きなタイプなので、フルリモートの働き方も現在のジョブも、自分に合っていると感じています。将来的には「地道な作業が必要なら、森に任せておけば大丈夫」と周囲に頼られるエンジニアになるのが目標です。
取材・文/塚田有香 撮影/竹井俊晴 編集/秋元 祐香里(編集部)