株式会社ルトラ

株式会社ルトラのインタビュー

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「良い制度がある会社より、約束が守られる会社へ」定着率96%のルトラに学ぶ、ミスマッチを防ぐ“実益重視”の制度設計

「高還元」「フルリモート」「案件選択制」など、好待遇を打ち出す求人が急増しているSES業界。条件面の透明化が進むのはエンジニアにとって歓迎すべき流れである一方、「入社してみたら聞いていた話と違った」というミスマッチを嘆く声も後を絶たない。

待遇競争がインフレ化する中で、エンジニアが直面する「入社後ギャップ」はなぜ起きてしまうのか。そして、ミスマッチを防ぎ、本当に長く働ける環境を手に入れるためには、どのような視点で企業を見極めるべきなのだろうか。

今回そのヒントを探るべく、直近3年間の社員定着率96%、リファラル採用を中心に着実に組織拡大している株式会社ルトラに着目した。

同社取締役の萩谷健太さんは「見栄えの良い制度を整えるよりも、現場で本当に運用できるかどうかが全て」と語る。期待値のズレが起きる構造的な要因と、入社後ギャップを解消するための制度設計について、萩谷さんに話を聞いた。

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株式会社ルトラ
取締役
萩谷健太さん

SBテクノロジー株式会社(現ソフトバンク株式会社)にてJavaエンジニアとしてキャリアをスタート。システム開発をはじめ、管理業務を経験しPMPを取得。その後、ルトラ代表の中村氏と出会い、2019年9月に同社を共同設立。取締役として採用責任者も兼任している

条件だけが先行するSES業界。期待値がインフレ

ーー昨今のSES企業の求人を見ていると、待遇面でのアピールが少しインフレ気味だと感じています。萩谷さんはこの状況をどう見ていますか?

条件がオープンになること自体は、エンジニアの選択肢が広がるため非常に良い流れだと思っています。一方で、条件面だけが先行してしまうケースがあることも事実です。ルトラとしては、できる限り実態に即した情報提供を意識しています。

コロナ禍以降、魅力的な条件を打ち出す企業が急増しましたが、会社によって「還元率」や「案件選択」の定義、そして実際の運用ルールは全く異なります。

そこが曖昧なまま耳障りの良い言葉だけが広まり、エンジニア側の期待値だけがどんどん上がってしまっている。そのため、結果として入社後の認識差が生まれてしまうケースがあると感じています。

株式会社ルトラの萩谷健太さんが、昨今のSES企業の条件面でのアピール合戦について、インフレ気味になっている要因について語る様子。

ーーそうした「期待値と実態のズレ」は、選考から入社後のどのフェーズで表面化しやすいのでしょうか?

求人広告や採用面接の場では、どうしても企業側は「良い面」を中心に伝えてしまいますよね。そのため、ズレが表面化するのは「案件選択」のフェーズになります。

他社から転職されてきた方から、「案件選択ができると聞いていたのに、実際は『この2件の中から選んでください』と言われた」「別の案件に移りたいと希望を出したら『今の現場に最低1〜2年はいてほしい』と言われてしまった」という不満を聞いたことがあります。

これは結局のところ、面接の段階で「エンジニアの希望」と「市場の実態(自身の市場価値)」のすり合わせが、十分に行われないまま選考が進んでしまうことで起きてしまうと考えています。

ーーそうした期待値と実態のズレが起きやすい領域は、具体的にはどの辺りでしょうか。

人気の高い「フルリモート」や「AI案件」などが、その代表例です。

「フルリモートで働きたい」という希望は根強いですが、完全にフルリモートを確約するには、上流工程の経験が一定年数以上必要とされるケースが多い。出社との併用であれば若手の方でも可能ですが、面接で安易に約束するのは非常に危険です。

また、現在は「AIに携わりたい」という方が増えていますが、実務としてAIを活用した開発に携わるためには、ベースとなる開発経験が重要になるケースが多いです。

先ほどの「案件が2件しかなかった」というケースも、本人のスキルと希望条件(フルリモートなど)のバランスを踏まえた結果、市場に存在する選択肢が限定されていたという背景があります。

面接の段階で会社を大きく見せず、「うちの会社で確約できるのはここまでです」というラインを明確に線引きすること。これが、入社後のギャップを生まないための第一歩だと考えています。

株式会社ルトラの萩谷健太さんが、入社後のギャップのズレを防ぐ方法について語っている様子。

見栄えより、実益を重んじる制度設計を徹底

ーー面接で期待値を正しくコントロールすることは非常に重要ですが、エンジニアの志向やライフスタイルは入社後にも変化しますよね。

そうですね。特にプロジェクトの切り替わりのタイミングなどは、希望と実態のズレが起きやすいポイントです。

そのためルトラでは、面接時だけでなく、案件が切り替わるタイミングごとに、改めて営業とエンジニアの間で「希望」と「市場の実態」のすり合わせを行っています。

技術のトレンドは追えていても、「今の自分のスキルだと、リモート頻度や単価の限界値がどこにあるのか」という市況感まで正確に把握しているエンジニアは少ないです。そこで、まずは営業から市況感を伝えた上で「今回は何を優先し、何を捨てますか」という優先順位の棚卸しをしています。

例えば「結婚したからフルリモートを優先したい」となった場合、「案件内容の希望を緩和しないと確約は難しいかもしれません」「週1回の出社を許容できるなら、この案件も候補に入ります」といったように、具体的なトレードオフの選択肢を提示するイメージですね。

単に「案件を選択できる」ことではなく、エンジニア自身が現状を理解し、妥協点も含めて「納得して案件を選べる」ことを大切にしています。

ーーその納得感を醸成するためには、どのようなアクションが必要になりますか?

月に1回「1on1」を実施するなどして、常にキャリアプランや優先順位を意識してもらうことだと思います。ただその際には、会社からの一方的な「ティーチング」にならないようにすることが肝心です。

1on1がただの評価面談のような場になってしまい、形骸化してしまっているケースはよく見受けられます。実際に、ルトラでも過去にそのような課題に直面したことがあるんです。

なので現在は、リーダーとエンジニアの1対1の場に、あえて別のリーダーが「第三者」として参加する取り組みも行っています。客観的なアドバイスを入れたり、管理職同士で「もっとこういう深掘りをした方が良かった」とフィードバックし合ったりすることで、1on1がクローズドで形骸化したものにならないよう運用をブラッシュアップしています。

1on1がクローズドで形骸化したものにならないように、運用をブラッシュアップしていると語る、株式会社ルトラ 取締役 萩谷健太さん。

ーー「形骸化させない運用」というのは、会社の制度設計においても重要なキーワードになりそうですね。

「採用でアピールしやすいか」ではなく、「現場でちゃんと運用できるか」を最も意識しています。どんなに見栄えが良くても、現場が使いにくい制度では意味がありませんからね。

そのためルトラでは、制度設計に現場の声を積極的に取り入れるようにしています。その中でも、特にインパクトが大きかったのは、下限補償という制度です。

SES業界には、月の稼働時間の下限と上限を定める「精算幅」(※)というルールがあります。そのため、有給休暇を取得して稼働時間が下限を割ってしまうと、売上(給与)が減額されてしまうんです。現場からも「有給があっても、給与が減るから実質使えない」という声が上がっていました。

そこで、「月に30時間分までなら、下限を割っても満額支給します」というルールを導入したんです。このおかげで有給取得率は大幅に上がり、毎年使い切る社員も珍しくありません。

(※)精算幅:SES契約において『月に〇時間〜〇時間働く』と定めた基準。この下限時間を下回ると、時給換算で給与(または企業間請求額)が減額されるケースが多い

ーーそれはエンジニアにとって非常にありがたいですが……会社としては利益が減るため、経営的なインパクトはかなり大きいですよね?

利益を残したいのであればやらない方がいい制度です(笑)。採用上のアピール材料としても、外部からは分かりづらい仕組みなので、正直なところ「還元率を1%上げる」とか「流行りの福利厚生を導入する」方が見栄えは良いと思います。

しかし、お休みが取りづらくて家族との時間が減り、結果的に不満が溜まって辞められてしまう方が会社にとっては大きな損失です。「無理なく長く働いてもらいたい」というモットーを実現するためには、見栄えよりも現場の「実益」にコストをかけるべきだと判断しました。

ちなみに「確定拠出年金」ではなく、あえて「退職金(自社積立)」の制度を導入しているのも、同様の判断からです。

経営側の節税メリットでいえば確定拠出年金の方が大きいのですが、退職金であれば、もし弊社を辞めて次のステップに進む際、すぐに現金として受け取れます。転職活動中や次の会社に入るまでの「当面の生活の足し」になればと思い、退職金をチョイスしました。

良い制度がある会社より「約束が守られる会社」へ

ーー「下限補償」のような実益のある制度も、求人だけではなかなか求職者に伝わりづらい部分があるかと思います。実益のある制度や会社のリアルな姿は、求職者にどう伝えているのでしょうか?

ルトラでは、社員が自発的に書いてくれている「ブログ」をメインのアピールの場にしています。公式SNSをやっていない代わりに、「ブログ執筆手当(1記事2,000円)」という福利厚生を設けているんです。

ブログの内容には会社は口を出さず、社員の皆さんに任せています。手当目当てで書く人もいれば、純粋に「こんな福利厚生を使いました」と会社の良さを伝えたくて書いてくれる人もいて、結果的に現場のリアルな声として外部への強力なアピールになっていますね。

こうした現場目線の取り組みや制度運用を続けてきたことで、直近3年間の定着率は96%を記録しています。また採用面でも「リファラル」の数が非常に増えてきました。

リファラル採用の詳細について語る、株式会社ルトラ 取締役 萩谷健太さん。

ーーリファラルが増えているのは、社員が納得感を持って働けていることの裏付けにもなりますね。

はい。実際に、「営業が親身に話を聞いてくれる」「入社後のギャップが少ない」といった推し文句で紹介してくれているようです。

ただし、いくら友人からの紹介とはいえ、ご本人の志向とルトラの環境がどうしても合わないケースもあります。ですから面接では、ご本人にとって納得度の高い選択になるよう、複数の選択肢を前提にお話しすることを大切にしているんです。

面接でお話を伺って、「将来的に数億円規模のプロジェクトを回したい」「超上流工程から決済権を持って裁量大きくやりたい」といったご希望であれば、SESである弊社ではなく、場合によっては他の選択肢についてもフラットにお伝えしています。

ーー自社の選考に来たにもかかわらず、他の企業を勧めることもあると。

合わないのに入社していただいても、お互いにとって不幸になるだけですから。

それであれば、寄り道せずにご自身の希望が叶う場所へ行った方が、そのエンジニアにとって絶対にプラスになります。自社の説明に入る前に、まずはご本人の志向性やキャリアの方向性を整理することが大切だと思います。

実は、こうしたスタンスを面接でお伝えした結果、ご本人は入社に至らなくても、「ルトラの誠実なスタンスを気に入ったから」と、また別のご友人をご紹介くださるケースもあるんですよ。

ーーなるほど。読者であるエンジニアが転職活動をする際、そうした「自社を大きく見せず、リアルな実態を話してくれる会社」を面接で見極めるには、どのような質問をするのが有効でしょうか?

例えば「フルリモート確約」と謳っている会社であれば、「現在、エンジニアの何割がフルリモートですか?」「過去にフルリモートが解除されたケースはどんな理由でしたか?」と、具体的な運用実績を聞いてみてください。

また、制度について聞く際には「実際によく利用されている福利厚生は何ですか?」といった形で、運用面まで確認してみるのも一つの方法だと思います。制度は内容だけでなく、実際にどれだけ活用されているかという視点も重要ですね。

良い面だけでなく、自社の限界や実態についても丁寧に説明してくれる企業かどうかを見極めることが、入社後のギャップを減らす上で重要だと考えています。

自社の限界や実態についても丁寧に説明してくれる企業かどうかを見極めることが、入社後のギャップを減らす上で重要だと述べる、株式会社ルトラ 取締役 萩谷健太さん。

ーー表面的な条件だけでなく、運用の実態を自分から掘り下げることが重要ですね。

その通りです。今後のSES業界は、二極化が進んでいくと言われています。大手企業が内製化を進め、AIが発展していく中で、単に「SES企業に属していれば仕事があり続ける」という状況からは、徐々に変化していくと考えています。

これからは、見栄えの良い条件や「AI」といったバズワードに踊らされるのではなく、自分自身のリアルな市場価値を把握し、企業と対等に「できること・できないこと」をすり合わせる力が必要です。

企業選びにおいても、「良い制度がある会社」を探すのではなく、面接で自社の限界を包み隠さず話し、「約束したことがちゃんと守られる会社」を見極めてほしいですね。私たちも、そうした誠実な企業であり続けたいと思っています。

現在は「無理なく長く働ける」「納得して案件を選べる」といった声を多くいただいているので、そうした環境に共感いただける方はぜひ一度お話できれば嬉しいです。

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撮影/赤松洋太 取材・文/今中康達(編集部)