ノバシステム株式会社

ノバシステム株式会社のインタビュー

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再編が進むSIer業界、生き残る企業の特徴とは? 今問われる「受託根性」からの脱却

「SIer再編」「内製体制の加速」「AIによる自動化」

ここ数年、SIer業界を取り巻く環境は大きく揺れ動いている。M&Aや事業統合のニュースが相次ぎ、「SIerは将来性があるのか」「転職先として選んで大丈夫なのか」と不安を抱くエンジニアも少なくないだろう。

今、SIer業界では何が起きているのか。そして、これから「選ばれ続けるSIer」と「淘汰されるSIer」を分かつ決定的な差はどこにあるのか。業界再編の渦中にいる当事者の視点から答えてもらった。

話を聞いたのは、独立系SIerとして長年にわたり業務システム開発を手がけてきたノバシステムの取締役・川上貴之さん。

「従来のような単純な人月ビジネスの時代は終わろうとしている」と語る川上さん。AI時代に問われるSIerの存在意義とエンジニアに求められる姿勢について、率直に語ってくれた。

プロフィール画像

ノバシステム株式会社
取締役
川上貴之さん

大学卒業後、2001年にSEとして新卒入社。その後、大阪事業部部長、東京事業部部長、事業部長を務め、24年3月より取締へ就任(現職)

「人海戦術」の時代は終わった。SIer再編は必然

ーー昨今、SIer業界ではM&Aや再編のニュースが絶えません。現場を知る川上さんの目には、この状況はどう映っていますか?

シンプルに言えば「強い企業しか生き残れない時代」になったと感じています。お客さまのニーズは高度化しているのに、業界全体で圧倒的に人が足りないですからね。

ただこの再編の動きは、単に人員確保のために起きているわけではありません。

昨今ホットなDX系のプロジェクトでは、クラウドや、コンテナ技術を使いこなす高度なスキルが欠かせません。しかし、こうした人材を自社でゼロから育成するには時間がかかりすぎます。だからこそ、すでに実績のある企業を買収し、即戦力となる人材やノウハウを一括で手に入れようとしているのでしょう。

また、自動車や製造業など特定の産業に特化したドメイン知識を持つ企業を取り込むことで、戦略から運用まで一社で完結できるフルスタックな体制を作ろうとする動きも強まっています。

ノバシステム取締役 川上さんがインタビューに答える様子

ーー業界や技術が大きく変わる中、今現場レベルで求められていることは何でしょうか?

昔も今も変わらないのは、品質と生産性の両立を求められることです。

システム障害などのトラブルが起きれば、お客さまからは当然「なぜ起きたのか」「品質管理はどうなっていたのか」と厳しく問われます。かといって、品質だけを追求して「人もお金もかけ放題」なんてプロジェクトはこの世に存在しません。

限られたリソースの中で、いかに品質を担保しながら、普通の人が1日かかる仕事を0.8日程度で終わらせるか。この永遠の課題に対して、AIなどの新しい武器を使ってどう答えを出せるか。そこに本気で取り組めるSIerだけが生き残れる時代になったと感じています。

SIerにおける「~~系」のラベル付けに、もはや意味はない

ーーSIerの転職市場では、依然として「メーカー系」「ユーザー系」「独立系」という分類で企業選びが語られます。業界再編の流れは、この分類にも影響を与えそうでしょうか?

正直なところ、この業界に長年身を置いている人間から見て、「何系だから」という壁や差は、もうほとんど感じません。その理由としては各社の事業領域のボーダーレス化が挙げられます。

かつてのユーザー系(システム子会社)は、親会社の仕事だけを安定してやっていれば安泰でした。しかし今は、親会社のリスクヘッジや自社の成長のために、親会社以外の「外販」を強化している企業が増えています。

私たちのような独立系も、特定業界に特化するだけでなく、コンサルティング領域に踏み込んでいます。つまり、どの系列も生き残りをかけて全方位に動き出した結果、やっているビジネスの中身に大差がなくなってきているのです。

ノバシステム取締役 川上さんがインタビューに答える様子

ーープロジェクト現場の実態としても、そのボーダーレス化は感じますか?

そうですね。大規模なプロジェクトになれば、メーカー系がプライムで入り、ユーザー系、さらに私たちのような独立系……といったさまざまな会社が参画するチームになることがほとんどです。

その現場において、「あいつはメーカー系だから優秀だ」「独立系だから立場が弱い」なんてことは一切ありません。 問われるのは、誰がプロジェクトを前に進められるかだけ。現場レベルで見れば、系列のラベルなんて何の意味も持たないのがリアルです。

ーーその上で、あえて貴社のような「独立系」の強みを挙げるとすれば何があるでしょうか?

「リスク分散」と「攻めの姿勢」ですね。

ユーザー系の場合、親会社の業績や方針転換に運命を左右されます。親会社の案件のみ対応している場合は、業績や方針転換に運命を左右される。仮に親会社が「守り」に入り、システム投資を凍結すれば、子会社の仕事は一気に干上がることが考えられます。

対して独立系は、特定の親会社に依存せず、その時々で攻めの投資をしている元気な企業と組むことができます。一つの船に運命を預けない身軽さは、変化の激しいこの時代において、エンジニアのキャリアを守る大きな武器になると考えています。

AI時代のSIerに問われるのは“受託根性”からの脱却

ーーユーザー企業が「AIで自動化」を進めることで、SIer全体の仕事が減るという懸念もあります。この点についてはどのように考えていますか?

確かに、コーディングやテストといった下流工程は、今後AIに取って代わられる部分が大きいでしょう。しかし、実際の開発プロジェクト全体を見渡してみると、パソコンに向かってプログラミングをしている時間というのは、実は全体の数割程度しかありません。

では残りの大半の時間は何をしているかと言えば、お客さまと会話をして要件を詰めたり、チームメンバーと認識を合わせたりといった「コミュニケーション」です。 AIはコードを書くのは速いですが、お客さまの曖昧な要望を汲み取ったり、プロジェクトの合意形成を行ったりすることはできません。

むしろ、AIという便利な道具が出てきたからこそ、それを使う側のリテラシーや人間同士の調整力がより重要になってきます。 インターネット検索が普及しても、それを使いこなせるかどうかで差がついたのと同じように、AIも魔法の杖ではなく、使いこなして生産性を上げるためのツールに過ぎません。

ノバシステム取締役 川上さんがインタビューに答える様子

ーーAI時代だからこそ「SIerの人間力」が問われると?

その通りです。AI導入がPoC(実証実験)止まりで終わるケースも多いですが、それは使う側が勉強不足で、意図せぬ回答を鵜呑みにしてしまったり、現場への定着まで設計できていなかったりするからです。

AIという便利な道具が出てきたからこそ、それを使う側の設計力や、人間同士の調整力、そして最終的な成果物に「責任を持つ覚悟」。これらを持ったプロフェッショナルの価値は、むしろ高まっていくはずです。

共創型のビジネス構築に向け、レバレッジを効かせる組織へ

ーーこれからのSIerにはAIや高度な技術を使いこなし、品質に責任を持つ力が求められることが分かりました。それを実現するには、会社組織の在り方も見直す必要がありそうですね。

ええ。もちろん個人の頑張りだけでは限界があります。そのため私たちは今、2030年に向けて組織の形そのものを変える決断をしました。

これまでは、社内にプログラマーとSEを半々くらいの割合で抱え、開発の隅々まで自社の社員でやるスタイルでした。しかし、それでは今の爆発的な需要増には到底追いつけません。

これからは自前主義にこだわらず、パートナー企業様と協業し、AIに任せるところは任せる。そして当社の社員は、品質を管理し、お客様と折衝するSE・マネジメント層の比重を増やす。そうやって組織全体でレバレッジを効かせられる構造へ、意図的にシフトしようとしています。

ーーただ、自身がコードを書かなくなることで技術的な勘所が鈍り、実態が把握できなくなる懸念もありませんか?

もちろん、コードを書くのが好きなエンジニアは多いですし、技術力は不可欠です。しかし、ずっとコードだけを書いていたいという願望と、会社としてより大きな価値を出すという目的のバランスは取らなければなりません。

私自身、新卒で入社してずっと現場で開発をやってきました。だからこそ分かるのですが、コードを書く経験はすべきだと思っています。システムを理解してないと、設計もマネジメントもうまくいかないことが多いですからね。

ですから「書くな」と言っているのではなく、書ける知識を持った上で「より大きな仕事を動かす面白さ」に気付いてほしい、というのが本音ですね。

ノバシステム取締役 川上さんがインタビューに答える様子

また私たちは「自社サービスの開発」を技術力の源泉として非常に重視しています。

例えば、飲食店向けの店舗運営支援システム『Order Revolution』や、AI顔認証を用いた受付システム『アイウェルコ』シリーズといったSaaS型プロダクトを自社で開発・提供しています。

これらはクラウド連携や深層学習、3Dカメラといった技術を組み合わせて、ノバシステムがゼロから作り上げたもの。自分たちでリスクを取ってプロダクトを作り、運用している経験があるからこそ、「技術の裏付けがある設計」や「実装を伴う提案」が可能になると考えています。

ーー会社として「自社サービス」と「SI事業」の両輪を持っていることが、エンジニアの視座を高める環境になっていると。

そうですね。これからのAI全盛時代は「日々の業務に対して、どれだけ健全な不満を持てるか」がカギを握ると思っています。

「なんでこの作業、こんなに効率が悪いんだろう」「もっとこうすれば楽になるのに」。そうやって現状に対して違和感を持ち、それをただの愚痴で終わらせず、「じゃあ、こういうツールを作りましょう」「この仕組みを変えましょう」という提案に変えられるかどうか。当社の『Order Revolution』なども、元々はそうした現場の「不便さへの気付き」から生まれています。

会社から仕事が降ってくるのを待つのではなく、自分の手で現場を、そして社会を良くしていこうとする気概。これさえあれば、変化の激しいこの業界においても、価値あるエンジニアとして長く働き続けられると思います。

撮影/桑原美樹 取材・文/今中康達(編集部)