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従来、Webアプリケーションの開発に使われてきた軽量言語「Ruby」。その軽量言語で基幹システム用ミドルウエアを再構築する前代未聞のプロジェクトが始動。発案者は入社3年目の若手技術者だという。その詳細に迫る。



前出の石橋氏・渡辺氏によって開発されたリアルタイムミドルウエアコンポーネントは、現在もその進化の真っ最中だ。なかでも2006年から開始されたミドルウエアの軽量言語化対応は、世界でも類をみないプロジェクトとして注目が集まっている。このプロジェクトの発案者である研究開発本部の加藤究氏と篠原俊一氏にプロジェクトの詳細を尋ねた。

「このプロジェクトは、オリジナルではJava言語で構築されたミドルウエアと同じものを、日本国産の軽量言語であるRubyを使って構築しようという試みです。Rubyについては私自身が数年前から着目し、折にふれて社内でもその有用性を説いていたのですが、『Ruby on Rails』の発表を機に、このプロジェクトの構想を現実的に考えるようになりました」(篠原氏)

『Ruby on Rails』とは2005年に発表されたRubyをベースにした開発フレームワーク。“Creating a weblog in 15 minutes(=15分でブログシステムが構築可能)”と謳われるとおり、圧倒的な開発効率を可能にする。しかし、元来はWebアプリケーションの開発に用いられることの多い軽量言語でわざわざ基幹システムを担うミドルウエアを構築する意図はどこにあるのだろうか。





「オープンソースによる開発の一般化に伴って、これからのIT業界はますます、異なるハードウエアやソフトウエアが混合したシステム開発が推進されることが予想されます。どんな環境にも適応するソリューションを提供する必要が出てくるわけです。このプロジェクトもいわば、その対応の一環ですね」(加藤氏)

「あとは純粋に技術者としての好奇心でしょうか。ほかの誰もやっていないなら自分がやる!という(笑)」(篠原氏)

会社の一大資産を軽量言語で再構築する――。通常なら一笑に付されて終わるところだろう。しかも立案者は入社3年足らずの若手。ところが篠原氏がまとめたプロジェクトの草案に対する会社からの答えは、「じゃあやってみろ」といういたってシンプルなものだった。

とはいえRubyはそもそも個人が開発したオープンソースソフトウエア。大規模な基幹システムでの稼働にも耐えうるミドルウエアを構築することへの不安要素は本当になかったのだろうか。

「言語としての適正でいえば、まず Rubyはオブジェクト指向言語であり、かつ、非常に柔軟なプログラミングが可能なため、機能レベルで簡潔に実装できるという特徴がありますね」(篠原氏)

「それに、同じ処理をさせる場合でも、Rubyはソースコードに要する文字数がJavaに比べて圧倒的に少なくて済む。そのため小さなコードで要件を満たすことができ、メンテナンス性が向上するという実運用上でのメリットにつながります。また、オリジナルのミドルウエアをJavaで構築した際に、ソースコードが肥大化するあまり実現できなかった機能を搭載するチャンスが訪れたということでもあるのです。Rubyだからこそできることも意外に多いですね」(加藤氏)





かくしてミドルウエアの軽量言語化プロジェクトがスタート。その開発スピードは驚くほど速く、はやくもプロジェクトの仕上げの段階に来ているという。

「Rubyの開発フレームワークにより高速な開発が実現できたことも大きいのですが、Javaで構築したリアルタイムミドルウエアコンポーネントがすでにテンプレートとして存在したため、実際のプロジェクトにおける利用形態や実装上のノウハウがあったことも大きいですね」(加藤氏)

同社は産学連携にも積極的に取り組み、ミドルウエアを含む数々の技術をさらに進化させるアクションに余念がない。システム自体が1つの生命体として自発的に“判断”して行動するようになるのは、それほど遠い未来のことではないのかもしれない。



横軸に機能、縦軸にシステムといったレイヤでマッピングすると、リアルタイム統合フレームワークをベースに、必要な要素がほぼ網羅されていることがわかる



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