ひと足先に選ぶ次世代のMVE : 工藤友資

人工無脳の開発は、工藤友資が高校生時代から取り組むライフワークである。きっかけは高校入学前に、PC98シリーズの『PC9001-DS2』を手に入れたこと。高校受験を控え、工藤は合格したらパソコンを買ってくれるよう父に頼んでいたのだ。

青年はmyパソコンとプログラミングの虜になった。工藤にとっては、自分でプログラミングして自分の作りたいものが作れる「夢の箱」にほかならなかった。

学校の勉強はそっちのけ。帰宅するとすぐにパソコンに向かった。ゲーム作りに欠かせないBASICのリファレンスマニュアルを開き、角がなくなるまで読みふける毎日だった。

当時、定期購読していた雑誌に「Macintoshで人工無脳『くるみちゃん』と遊んでみる」が掲載されていた。これが工藤と人工無脳との最初の出会いである。

「人とコンピュータが人間の言葉(自然言語)で会話していることに衝撃を受けましたね。人工無脳の研究開発が進めば、自然言語によってコンピュータを操作する夢のようなマンマシンインターフェイスが実現するかもしれない。それは、コンピュータという機械が目指す到達点の一つだと思いました」

そしてMacを買えない高校生の工藤は、独学で人工無脳の開発を始めた。BASICやC、アセンブラなどの言語を使って開発しては、草の根ネットにフリーソフトとして公開していった。

人工無脳開発は、予備校、大学、さらに社会人になってからも続いた。開発は工藤自身が抱いた夢の追求なので、ビジネスになる・ならないは関係なかった。だからこそ、どんな状況でも途切れないライフワークになったのだ。

ビジュアルと結び付け女性層を開拓

一浪して大学へ入学したが、予想以上につまらない。縁あってフリーライターになり、2年で勇退した。

ライター業は面白かったが、原稿料だけでは食べていけない。好きだったコンピュータを仕事にしてみようとSIerに入社した。主に大規模ネットワークの設計、構築、運用を担当していた。

工藤はクリエイティブな仕事に飢えていた。そこで当時、流行し始めていた携帯コンテンツ会社をアルバイト雑誌で探して転職。しかし、そこが出会い系サイトの運営会社だとわかったのは、入社後のことだった。

「システム全体に関われ、勉強にはなるんだけどね…という毎日です。ある日、マンガ喫茶に入り、石ノ森章太郎の『仮面ライダー』を読んで気付かされました。『俺はライダーになりたかったのに、今やっていることはショッカーだ』って。それで転職を決意しました」

2002年、占いサイトの運営を手掛ける携帯コンテンツ会社に入社した。工藤はサーバの構築から運用の負荷対策、要求分析、システム設計、プログラミングなどの幅広い仕事をこなしつつ、高校生以来の個人的なライフワークである人工無脳開発も新たな段階を迎えた。

そして2002年、ビジュアルと人工無脳を結び付けて実験的に開発したのが、知的と知的ではないという二説に分かれるウサギをキャラクターモチーフにした『よみうさ』である。
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