ひと足先に選ぶ次世代のMVE : 和田裕介
ミクシィがSNSサービスの提供を開始したのが2004年2月であることを考えれば、和田の試みがいかに先進的であったかが分かるだろう。次いで手掛けた 『moo-pong』は基本処理こそPCで行うが、ユーザーが撮った映像を万華鏡のように見たり、映し出したりできるというアートに近い製品だ。 「パーティーなどで人が集まった時には、デジカメで写真を撮ってその場で見せ合うのが一般的になっていますが、もう一歩進めてユニークな映像表現が実現する仕組み。ターゲットまでを視野に入れると完全に “おもちゃ”の領域なんですが、新しいメディアとしてすごく注目が集まりましたね」 『VACUUN!』や 『moo-pong』は、サービスとして普及しているわけではない。ただ、その先見性や技術力の高さが大きく評価され、開発者である和田の知名度は一気に高まった。 「今でも開発の方向性は決して間違っていなかったと思います。ただ、ターゲットの策定やユーザーにとっての使い勝手の良さとか、もう一歩か二歩突き詰めていく必要があるでしょうね」 『VACUUN!』は製品化には至らなかったが、『moo-pong』は特許を申請し、試作品までできている。今後、新たなサービスや製品化について打診があれば、積極的に対応したいと和田は話している。 ネット上にもっと自由なコミュニティーを 2006年9月、和田は父親とともに株式会社ワディットを設立。代表取締役になって2年が過ぎた。プレゼンや講演会でよく 「気が付いたら会社の代表になっていた」と話して笑いを誘う。 「大手化学メーカーの情報システムを扱う企業にいた父が起業の準備をしていて、ちょうど同じころに私が大学院を修了したんです。それなら自宅を事務所にして社員2人の会社を始めようというのが一番のきっかけです。しかし、父は企業向けのシステムコンサルティングが専門で、私はWeb関連の受託開発が中心。同じ場所で仕事をしているものの、分野も業種も違うので、企業としての活動で接点は少ないですね」 オフィスにしている自宅は、神奈川県鎌倉市の観光名所、鎌倉山の近く。自然に囲まれた環境で次から次へとアイデアや発想が生まれている。また、自社のみの活動にとどまらず、9月16日には自身がCTOとなっているネットベンチャー・オモロキが開設したサイト 『ボケて(β版)』の開発も手掛けた。 「“お題”の写真にユーザーがボケのコメントを付けて互いに評価するんですが、その目的はやはりコンテンツと人とが互いにつながること。新しいコンテンツをゼロから考えるのではなく、今ネット上にあふれている音楽や映像、画像を使って、ユーザー同士がどうつながっていくかを提案していきたいと考えています」 起業から2年間、幅広く受託開発の仕事を受けながら、自身のアイデアや発想をカタチにしてはWeb上で積極的に公開している。そのほとんどが「ブラウザ上で動き、どんな機能や役割を実現すればユーザーが楽しめるか」というコンセプトに基づいている。 「今後は、受託開発を続けながら、Perlを用いたWebアプリケーションの開発を主流に進めていきたいと考えています。さらに個人としては、もっと人脈を広げて、新しいコミュニティー、コミュニケーションのあり方を提案できるようなWebサービスの提供を中心に手掛けていきたいですね」 今、和田の元にはビジネスパートナーとしてだけでなく、さまざまなオファーが寄せられている。今後は、専門分野の異なるスペシャリストたちと協力して、大規模プロジェクトに携わることを目標としている。そのためには、プログラミング能力など自身のスキルを高める必要があると話す。今後も、大きな “つながり”を実現させるため、和田の挑戦は続いていく。 |