松下電器産業株式会社は2008年10月1日よりパナソニック株式会社へ社名変更いたしました。

経験を「見える化」して売りになる強みを掘り起こそう
小田 美奈子さん

コーチングカフェ
コーチ／キャリアカウンセラー
特集の冒頭で遠藤氏が語っていたように、本当の転職成功とは自分の志向や価値観とマッチングする企業、職場に入ることだ。そのためにも、まずはこれまでの見える化プロセスで見つけ出した強みが活かせる場所はどこか、そこで求められるものは何なのかを調べ、「場の見える化」を図らなければならない。

そのうえで、その応募企業にアピールすべきはどんな経験なのか、どうアピールしていくのが効果的なのかを考えるのが、これから紹介する「見せる化」の方法論だ。

前出のキャリアコンシェルジュ・萬田氏によると、エンジニアとの面接でよくあるのは@仕事や専門技術のすごさを伝えたい一心で一方的にしゃべり倒してしまうか、A話しをすること自体が苦手、または緊張のせいでまったく受け答えできないかの2パターンだという。どちらの場合も、相手の立場になってアピールしていくという発想が抜けてしまっているために起こる失敗だ。自己アピールはコミュニケーションのひとつ。そう考えて臨むことが、「見せる化」を成功させる大前提になる。

職務経歴書や面接の受け答えで、ことさらに目立とうとする意識は必要ない。小田さんも、「転職活動のときだけ『違う自分』になろうとしないのが成功のコツ。むしろ自然体なほうが好印象を与えるはず」とアドバイスする。エンジニアはもともと、ロジカルに物事を考えるのが得意なはず。




「見える化」の提唱者である遠藤氏自身も書いているというキャリアノートを作るとき、参考にしてほしいのが右の書式。「プロジェクト内容」「担当業務」「プロジェクト規模やそのなかでの役割」を開発期間ごとに横串で整理していくのは、一般的に人材コンサルタントが職務経歴書を書くときにメーカーエンジニアに奨める書式と同じだ。

そこに、小田さんが指摘するように実績欄もつけ加える。この欄には、「どんな貢献をしたか」という実績とともに、「その経験から何を得たか」という自分の成長記録も書き出していこう。また、実績は必ず数値化して書き込んでいく工夫も必要だ。

一連の作業を続けていくうちに、「昔はあれだけ時間をかけてやっていたことが、今は当たり前のようにできるようになっている」、「この機能を実現させたときは、こんなに大勢の人を巻き込んで仕事していたんだなぁ」などというような気づきが生まれるはず。この気づきこそが、転職でアピールできる強みを発見するきっかけになるのだ。



開発期間 プロジェクト名・内容 担当業務 役割・規模 実績
199×年×月?
199×年×月		 SUVの車両全体のレイアウト設計・検討。

そのなかでも、パワートレインに関わるレイアウトを中心に担当。		 ・エンジンヘッド部とフロアパネルの干渉回避の検討
・エンジン周辺デバイスのレイアウト検討など

先輩の手伝いをするなかでCATIA、UGなどCADの基本を学ぶ。「CATIA ver.4」はひと通り使えるように。		 入社間もないため、まだまだ下っ端。

部門に10人いるなかで、先輩たちにくっついて雑務から覚えていった。		 CADのイロハを覚えた。

最初は簡単なパーツのCADデータを作るのに2、3日かかったが、2カ月後は同じ仕事が1日でできるように。
199×年×月?200×年×月 SUVの車両全体のレイアウト設計・検討。

業務内容は一緒だが、担当範囲が格段に広がった。		 ・ラジエーター、インタークーラーのレイアウト検討
・新トランスミッション、新トランスファ搭載レイアウト成立条件の指示
・プロペラシャフトの交角測定とレイアウト成立条件の検討
・エンジンのフレーム取り付け時における可否の判定など		 他部署との調整役として
サブリーダーを任される。

部門に10人＋生技など関連部署のプロジェクトメンバー5人の計15人に対して進捗の報告。

上司に相談しながら作業フローの策定も任された。		 社内で初めての案件となる
4WD用新トランスミッション搭載レイアウトを実現！

たった5人とはいえ、社内調整が大変だった。でも、そこで作業フローを徹底させる方法を学んだ。

3D-CADを用いたモデリングは、部門内で一目置かれるように。

１．きれいに書こうとしない
この作業の目的は、経歴を文字にして視覚に訴えるものにすること。だからきれいにまとめる必要はまったくない。殴り書きでいいので、思いついたことを書き出そう。
２．役割・規模は詳細にたな卸しする
転職市場では、どの程度の規模のプロジェクトで、どんなポジションを任されていたかが意外と重要視される。それを考慮して、数字で細かく書き出しておこう。
３．実績を数字で表すためのキーワード
売り上げ、利益、対前年比、納期、コスト、工数、人数などのキーワードを念頭におきながら成果を振り返ると数値化しやすい。




キャリアノートでアピールできそうな強みの“芽”を集めたら、次にやるべきはそのなかから「語れる強み」を抽出すること。そのために小田さんは、キャリアノートとは別の書式で経歴を見える化することを奨める。それが「転機発見シート」の作成だ。

これは経歴の主な出来事を書き出し、その時々の仕事満足度を点数化していく作業だ。点数を線で結んでいくと、自身の仕事満足度の変遷が下図のようにビジュアル化される。その満足度曲線で山・谷になる部分＝キャリアのターニングポイントを分析することで、冒頭で遠藤氏がいっていた「転職で語るべきストーリー」が浮かびあがるのだ。

「この失敗でこんなことを学んだから、次の仕事がうまくいって満足度も上がった」といったように、成功体験や失敗体験を基準に振り返ると、自分なりのストーリーを見つけるのも容易になる。





　　
◆成功体験◆
時期 成功体験 うまくいったポイントは何か？ どんなスキルや知識が役立ったか？
200×年
×月?×月		 社内初の新トランスミッション搭載レイアウトを実現 設計部以外の関係メンバーともやるべき仕事の項目表を共有し、お互いの作業フローを事前に詰めておいたことで開発がスムーズに。「任せるところは任せきる」という考え方が功を奏した。

◆失敗体験◆
時期 失敗体験 何が問題だったのか？ そこからどんなスキルや知識を学んだか？
200×年
×月?×月		 自らの調整ミスでモックアップの提出が大幅に遅れる 他部署に依頼していた仕事で、「やってくれているはず」と勝手に思い込んで進捗確認を怠ってしまった。納期が短いときほど、冷静になってプロジェクト全体を見渡す落ち着きが必要だと学んだ。

成功・失敗からアピールできるストーリーを見出すときの目安として、
@ 関係者とのコミュニケーションを図りながら業務を成功させた経験
A 自ら主体的に動いて、課題を解決してきた経験
B 難題にぶつかっても、迅速に対応してきた経験
などを掘り起こしていくのがGood。これらの項目は、採用担当者がもっとも聞きたいポイントだからだ。


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