Ultimate Eco-friendly Car究極のエコカーを作ってみました
CO2排出量の削減、燃費の向上など、環境に優しいクルマ「エコカー」の注目度が高まっている。そんな中、クルマの最新技術を支えるサプライヤーで活躍するエンジニアはどのような思いで業務に就いているのか? また、彼らが思い描く究極のエコカーとは?
●Word/KOJI URANO.NAOJIRO ONUKI.YASUNORI NARAHARA(E-type)
●Photo/MAKOTO OSAWA.AKIHIKO SUZUKI.TAKASHI TOGAWA ●Illustration/MAKOTO TADA |
タイヤ編
ブリヂストン
BRIDGESTONE
櫻庭一樹 氏 Kazuki Sakuraba
TB・CVタイヤ開発第2部
日本設計ユニット
TB・CVタイヤ開発第2部
日本設計ユニット
大学で金属材料を学んだ後、1997年にプラントのエンジニアリング会社に就職する。「一般ユーザーとの距離が近い製品を作りたい」という動機から、2002年にブリヂストンに転職
転がり抵抗の削減でクルマの省燃費を実現させる
自動車と路面との唯一の接点である“タイヤ”。その性格ゆえに、設計によって燃費性能の良否が大いに左右される、環境対策には重要なパーツである。ブリヂストンでTB・CVタイヤを設計する櫻庭一樹氏は、そんなシビアな要求性能を満たすために日々、汗を流すエンジニアだ。「私が今設計を担当しているのは、トラック・バス用のリプレイスタイヤです。サイズでいうと、11R22.5や275/80R22.5など。直径は約1mで、タイヤ1本に対しての荷重は3?4tほどになりますね」
原油の高止まりが続く昨今、トラックやバスを使う輸送業界では、輸送品質を確保した上でのよりいっそうのコスト削減が大きな課題となっている。トラック事業者における運行3費(燃料費、整備費、タイヤ・チューブ費)に占める燃料費の負担は非常に大きいもの。さらに、改正省エネ法の施行などによるタイヤの環境対応の観点からも、使用燃料の削減がますます重要視されてきた。その意味で、トラック・バスに向けた省燃費タイヤの開発は、メーカーに課せられた命題ともいえる。
1. タイヤ騒音の低減
日本でも将来的に問題視されるであろう騒音の抑制を図る。入念なトレッドパタン設計でロードノイズを抑制し、音量のみならず音質までもこだわりたい2. 磨耗ライフの向上
タイヤは基本的に消耗品だが、環境問題を考えると磨耗ライフはできるだけ長く維持したい。その上で、偏磨耗が起こりにくい構造に仕上げるのが目標3. 転がり抵抗と耐磨耗性のバランス
省燃費を達成する転がり抵抗の低減と、耐磨耗性の向上を同時に実現したトータルバランスの良いタイヤを設計したい。開発サイクルの短縮化への対応も必須課題また櫻庭氏は、省燃費タイヤを設計・開発する上で“バランス感覚”が重要だと力説する。
「燃費がいくら向上しても、タイヤの寿命が短くなったり、路面とのグリップが低下してしまったりしては意味がありません。すべての要求性能を高いバランスで実現させることが、設計者に課せられた重要テーマなのです」
そしてもう1点、櫻庭氏は今後の環境対策としてキーとなる要求性能を指摘。
「ヨーロッパ市場では通過騒音規制がますます厳しくなってきています。今後の環境対応として、騒音も重要な課題としてとらえており、国内でも騒音に考慮したトレッドパタンを設計してロードノイズの抑制を図るつもりです。また近年では開発サイクルが短くなっているので、情報の収集と精査の時間も課題となるでしょう」
最終的には「100人のユーザーが100通りの使い方をして、すべて満足頂けるタイヤ」を開発したいと語る櫻庭氏。高バランスの新世代エコタイヤを開発するための切磋琢磨の毎日は、まだまだ続いていきそうだ。