多くのハード技術者が、縁遠く感じる電力システム。しかし、電力システムを開発する重電業界では、さまざまな分野の技術者が求められており、その存在は意外に身近だ。業界経験ゼロから世界最大級の電力システムの開発者へと転身したエンジニアに、どんな技術を転用できるのか、また開発の醍醐味とは何なのかを聞いた。 |
エネルギー事情がキーワード?“重電企業へ転職すべき”のワケ
鬼頭紀雄氏
昨今の原油価格の高騰によって、重電業界が活況を呈している。「エネルギーある所にプロジェクトあり」といわれる重電業界。プロジェクトの増加により、業界未経験者の採用が急増している。
株式会社キャリアデザインセンター 「日本企業が海外で受注ラッシュを迎えている現在、東芝や三菱重工業、三菱電機などの重電企業で、業界未経験者の採用が急増しています。機械・電気設計の経験者であれば、広く門戸が開かれている業界といえるでしょう」と、『typeの人材紹介』を運営するキャリアデザインセンターの鬼頭紀雄氏は語る。 高い専門性が求められる電力システム開発は、未経験者では難しいと思いがちだ。しかし、必ずしもそうではないと鬼頭氏は指摘する。 「電力システムは、世界最大級のシステム。メインの施設だけではなく、給水ポンプや変圧器など、多様な補機から構成されています。この補機の設計・開発に関しては、3年程度の機械設計の経験があれば、未経験者でも即戦力として活躍できます」 社会インフラを支えている気概、自分が携わったモノが30年以上も使用されることなど、この業界で得られる醍醐味は大きい。また、海外での新規プロジェクト増により、海外勤務・出張も経験できるチャンスが多い。大きな仕事をしたいという技術者にとって、重電業界は転職先の有力候補の一つになるはずだ。 電力システム構成図と各工程で活かせる知見火力発電所では、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料をボイラーで燃焼させ、 ボイラーで発生させた蒸気をノズルから噴出させ、これを羽根車に激しく当てて回転させ、 コイルの内側に置いた磁石を回転させることで電気を作る原理は、自転車のダイナモから原子力 復水器で蒸気から水に戻された冷却水をボイラーへ供給する機器。原子力発電所と火力発電所 冷却水との熱交換によって、蒸気タービンで使用した蒸気を冷却凝縮し、蒸気の流れを 化石燃料の燃焼により、排気ガスとしてSOxやNOxが発生する。大気汚染の軽減が大きなテーマ 未経験者の「この」スキルが使える!各社の採用動向と転職成功者の声
原子力発電は多彩な技術力の集積株式会社東芝東芝が主力事業に位置付けている原子力事業。これまで沸騰水型原子炉の建設で高い評価を獲得してきたが、2006年に加圧水型原子炉で世界有数の実績を持つ米国のウェスチングハウス社を傘下に入れ、世界で主流の両炉型を提供できる強固な体制を整えた。エネルギーセキュリティ/地球温暖化防止のため世界で急増する原子力発電の需要に対し、同社が世界をリードすることを期待できる。事業拡大に伴い、同社では若手技術者層の強化が課題であり、積極的な採用を行っている。原子力発電プラントは巨大な総合システムであり、機械、材料、電気、情報、化学、建築など、多くの技術領域を含んでいることから、異業種出身者でも必ず活躍できる場所があるという。 自由闊達に意見を言い合える、明るく風通しの良い職場環境が特徴という同社。社会に貢献し、世界を舞台に高度な技術にチャレンジしたい技術者には、最適な職場といえるだろう。 次世代制御システム開発の最前線三菱重工業株式会社国内はもとより、海外向けの発電所建設で大きなシェアを占める三菱重工業。同社では現在、独自の制御システム『DIASYS Netmation』の設計開発を手掛けるエンジニアを求めている。世界で最も厳しいといわれるヨーロッパの安全基準を満たした次世代型のシステム開発であることに加え、2011年の納入および稼働開始という、まさに旬のプロジェクトに参加できるチャンスだ。 同社では2007年4月に設計開発部門を統合して体制を確立。これまでに約30カ国3000システムを手掛けている原動機事業の需要はピークへ向かっている。 求めているのは、要求分析、システム設計や回路設計、組込みソフト開発などの経験者。クルマ向けにFPGAの設計開発を担当している人は有望だろう。FPGAは直接プログラミングできる高機能LSIだが、実際に手を動かす現場レベルの技術者だけではなく、プロジェクト全体を統括する立場を目指す若手の人材も求めている。 “発電”に関する幅広い業務分野三菱電機株式会社国内、海外で大規模な発電所建設のプロジェクトを進めるに当たり、三菱重工と共に発電用の設備全般を手掛けている三菱電機。同社では“発電”への需要が急増している。現在、同社では2012年を需要のピークと位置付け、第一線で活躍できる若手技術者を幅広く求めている。発電設備全体を手掛けるため、募集職種は多様。水力・火力・電子力用の大型タービンをはじめ、制御システムのハード、ソフト、稼働前の試験や現場での据え付け、プラントエンジニアリングなど多岐にわたる。 専門性が高いイメージがあるが、それぞれの部署で活躍している技術者のバックグランドは多彩で、異業種からの転職者も多い。若手なら機械、電気などの基礎的な知識を持っていて、仕事で活用している経験さえあればチャンスは広がっている。長年にわたって培ってきた技術力、モノづくりの伝統を継承することが、大きなやりがいになるだろう。 NEXT PAGE > >【「電力システム」の裏側を知る】 ---「東芝/三菱重工業/三菱電機」
|