松下電器産業株式会社は2008年10月1日よりパナソニック株式会社へ社名変更いたしました。
かつて複数の製品が存在したメモリのうち、東芝が明確にNAND型フラッシュメモリへとシフトしたのは2001年。以来、7年を経て、この市場の規模は約2兆円強に成長した。そのけん引役は、言うまでもなく東芝である。
「PCに標準搭載されていたHDDがSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)に移行するなど、用途はどんどん広がっています。当社の強みである微細化と多値化技術によって、低価格化と大容量化のニーズを実現してきました」
そう語るのは、フラッシュメモリ技師長の百冨正樹氏だ。今年2月、同社は他社に先駆けて、40nm世代で16ビットの容量を持つNANDフラッシュの販売と量産を開始。並行して30nm世代、20nm世代の大容量メモリ開発も行っている。
それに伴い、最近は特にR&Dから開発、生産までの各部門がより密接に連携していく体制づくりに力を入れていると百冨氏は明かす。理由の一つは、さらなる性能アップに向けて。もう一つは、「まったく新しいメモリ」を生み出す必要性からだ。
「回路の線幅などの微細化は、2010年ごろには物理的な限界を迎えます。搭載する製品分野や用途の広がりを考えると、現在のモノとはまったく違ったメモリを実用化する必要があるのです」
当然、それに向けた技術的な挑戦も日夜行わなければならない。前述の四日市工場内に先端メモリ開発センターを設けるなど、先行開発を推進する体制も整えてはいるが、百冨氏が何よりも重視しているのは開発現場の精神力だ。
「言い換えるなら、失敗してもあきらめず地道にコミュニケーションを取り合う姿勢とも言えます。常に『世界初』を追求しているからこそ、皆でアイデアを出し合いながらイノベーションを生み出していかなければならないからです。実際に、設計・開発エンジニアには頻繁に四日市工場へ足を運んでもらうようにしています。開発の一連の流れを見ながら、あらゆる工程で次世代メモリ開発の“芽”を探し出す。そこにやりがいを感じる人たちと、一緒に働きたいと思っています」
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一方、テレビやレコーダーなどのAV機器を中心に、携帯電話やカーナビなどの端末をシームレスに活用できるデジタル家電統合プラットフォーム『UniPhier(ユニフィエ)』を中心に半導体開発に取り組んでいるのが松下電器だ。同社の飯塚康夫氏は言う。
「レコーダーで録画したテレビ番組やDVDコンテンツを携帯電話やカーナビで見るというのが一例ですが、特徴的なのは従来のPCを介した手法ではなく、デジタル家電機器間で、直接、誰でも簡単にデータをやり取りできる仕組みづくりです」
その実現のため、通常は製品分野別で設計・開発に取り組む半導体エンジニアに、異なる製品の半導体開発を任せるケースがあるという。
「以前なら、特定の機器に向けて、特定の機能や性能を持つ半導体を作っていればよかった。それが今は、UniPhierを前提として組織横断的な取り組みが進んでいるので、半導体エンジニアにもセットづくりの感覚や発想が必要になっているのです」
デジタル製品はどれも複数のシステムLSIが搭載されているが、松下電器ではここ数年で『UniPhier』のアーキテクトに依存する部分をどんどん共通化。また、今年5月には、ブルーレイディスクプレーヤー用に1チップ信号処理LSIの量産化を発表。業界全体の課題である小型化・省電力化にも先鞭を付けた。
「こうした製品の開発では、セット側との協業が欠かせません。現場では、異なる製品の開発陣が集まって、定期的にアイデア検討会をやっていたりもします。それができるのも、幅広いデジタル製品を持つ当社ならではの、専業メーカーにはない強みと言えるでしょうね」
そんな松下電器が求めているのは、やはり「製品ありき」で発想して半導体を開発できるエンジニアだ。
「幸い、若い世代ほど自由に仲間同士で考えて、可能か不可能かは別として『こんな機能が欲しい』というユニークなアイデアを出してきます。こういう職場環境を維持していくことも、我々の役割なのです」
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モバイルと自動車、デジタル家電の3分野に向けた製品開発を中心に、マイコン/システムLSI/汎用製品の3事業を柱としてグローバルにビジネスを展開するルネサス テクノロジ。それぞれの分野で高いシェアを持つ製品を数多く有する強さの要因を、汎用製品統括本部で副事業部長を務める山脇正雄氏は次のように説明する。
「お客さまの要求を満たす良い製品を作り出す開発力・総合力は、一朝一夕には手に入りません。お客さまの要求に応えることで開発力が磨かれ、蓄積の上に積み上げていくという感覚があり、これが当社の強みにつながっている。三菱電機と日立の半導体事業を統合してスタートした会社ですから、蓄積も大きければ、シナジーも大きいと言えます」
2003年の会社設立以来、マイコンの世界シェアNo.1 を維持している同社。強いマイコンには高度なアナログ技術が不可欠であることがいち早く認知され、アナログ回路技術開発の強化や事業分野を越えたアナログ技術の共有、国内外の大学・地域との連携でアナログ関連の技術者教育を充実させるなど、まさに全社的かつワールドワイドでアナログ技術に対する取り組みが強化されている。
「デジタルはメイン、アナログはキーの技術」(山脇氏)とは、同社内で頻繁に耳にする言葉だ。
「高効率・低消費電力や低ノイズ・小型化といった要求に、開発期間を圧縮しながら低コストで応えていかねばならない。この難易度の高さをモチベーションに変えていけるエンジニアが、当社には多いんじゃないかな」と山脇氏は笑う。
「トレードオフ関係にある機能のバランスを考慮し、どこを活かし、どこで“泣く”か。その判断に必要な引き出しの多さでは、他社に負けていないと自負しています。技術的な蓄積を活用して、自身の引き出しも増やしながらお客さまと製品の方向性を議論できるようになったら、楽しくて仕方がない次元に入ることができます。そうやって自分の価値を確認できることが、技術者冥利だと思います。『自分だからできた』と満足度の高い仕事をしてもらう場を提供することが、我々の仕事だと考えています」
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日本のモノづくりで今、最も世界を先取りしていると言える自動車産業。当然、車載マイコンと半導体の開発においても、最先端を走っている。この分野で、1980年代後半から研究・開発を続けてきたのがNECエレクトロニクスである。
2010年に車載マイコンで世界トップシェアを獲得という明確なビジョンを設定し、その実現にまい進する自動車システム事業部を率いるのが金子博昭氏だ。
「車載用のマイコンは製品寿命が長いのが大きな特徴。4?6年ごとのニューモデル投入やフルモデルチェンジの実施など、クルマの設計・開発サイクル自体は短くなっていますが、一度採用されたマイコンは10年以上もの長い間使っていただけるという特徴があります」
過去約20年、年率7?8%増という堅実な成長ぶりが続いている市場動向からも、特殊な製品分野であることが分かる。
「クルマのユニットごとに、ボディ、シャシー、パワートレイン、マルチメディアなどと機能、性能に応じて異なるマイコンや半導体が必要です。それをフルラインナップで実現しているのが当社の強みです」
車載マイコン事業は、同社のマイコン製品売上の約60%を占めている。社内のみならずNECの研究部門との密接な連携によって、さまざまな技術革新を行ってきたことが、この実績のベースにある。動画像をリアルタイムで認識可能な『IMAP』などは、その成果の一つだ。
今後注力していくのは、マルチコアプロセッサ技術を搭載したカーナビ用システムLSI『NaviEngine』の普及や、車の統合制御に向けリアルタイムでの統合制御を実現する次世代の車載LAN『FlexRay』の本格導入などだ。これらの目標をクリアしていくため、「マイコン以外の分野からのキャリアチェンジも歓迎する」と金子氏は言う。
「次世代の用途を想定した製品開発が必要になるので、クルマづくりの基盤に携わりたいという意欲や熱意を持ったエンジニアには、ぜひ挑戦してほしいです」
中国やインドなど、急成長が期待される市場に向けたモノづくりも進んでいる同社。グローバル志向を持つエンジニアにとっても、刺激的な仕事が待っている。
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