上司、仲間、尊敬する先輩経営者・・・  

40代社長たちを支えた「11」の出会い

各業界で、経営の若返りを目的に30代、40代の若手社長が増える昨今。一見華やかなキャリアを誇る彼らも、若さゆえの挫折や生みの苦しみを何度も味わっている。そんな時、支え、叱咤激励してくれる先輩や同志がいたからこそ、今があるのだ。そこでこの特集では、若手社長をとりまく人間関係に焦点をあて、彼らがなぜ成功にいたったのかを読み解く。 《2005年6月号より抜粋》

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ソフトバンク・インベストメントグループ
SBIモーゲージ
代表取締役COO

円山 法昭
 
 
 
 
 
 
 
 
自称「ダメ銀行員」が経営者に
転機となったのは、上司の助言だった
 

80年代後半、世はバブル絶頂期。就職先は選び放題の時代だった。円山法昭氏が東海銀行(現UFJ銀行)に入行したのも、「どうせ働くなら大企業で」くらいの理由だった。

目的もあいまいなまま入行したのだから、当然、仕事で頑張る気にはなれなかった。生活は遊びが中心。自他共に認める「ダメ銀行員」だったという。そんな円山氏を、仕事人間へと一変させたのは、ある上司との出会いだった。

「入行後、最初の転勤で配属された新川支店(東京)で、古森さんという上司の下で働くことになったんです。とても熱い方で、飲みに行っては『仕事はロマンだ。一度の人生、一番長い時間を過ごす仕事を楽しまなければしょうがないだろ』と力説してくれました。でも、当時の私は努力しても成果が上がらず、完全に腐っていましたね」

この支店は新設されたばかりで、新規開拓営業を任された円山氏はゼロから顧客を開拓しなければならなかった。普通の上司なら「とにかく1日何十件も訪問しろ」となるところだが、古森氏は「やり方は任せる」と言ってくれた。また、迷っている時は必ず的確なアドバイスをしてくれて、成果が出ると本当に自分のことのようにうれしそうに褒めてくれた。そうなると、どんどん自信がついてきて、ますます仕事が面白くなり、さらに営業戦略を自分で工夫するようになっていく。「正しい努力さえすれば、目標は必ず達成できる」ことを上司に学んだ円山氏は、とんとん拍子で支店ナンバーワンの営業マンに成長していったのである。


人生の流れに逆らわない、チャンスとの出会いには必ず乗る


自分を引き上げてくれる上司との出会いで、仕事が趣味になるほど打ち込むようになった円山氏。今では、日本初のモーゲージバンク(住宅ローン専門会社)の若手経営者として、業界でも先駆者的な役割を担うまでになった。自称「ダメ銀行員」がここまで成長してきた理由を、円山氏は「人生の流れに逆らわず、チャンスに巡りあったら貪欲に挑戦してきたから」だと語る。

最初のチャンスは、銀行時代、外資系コンサルティング会社と共同でリテールに特化した支店作りに取り組んだ時。初めは、コンサルタントたちが多用する横文字会話についていくのがやっとだったが、徐々にそれを理解していくにつれて、「自分にもできる」と思いはじめた。それを機に中小企業診断士の勉強を始め、1次試験に合格したころ、そのプロジェクトで一緒に仕事をしたコンサルタントから「ソフトバンクのグループ企業として投資会社を設立するから、一緒にやらないか」と誘われた。

詳しい話を聞きにいくと、その場で突然人事部長との面接になり、その2週間後にはソフトバンク・インベストメントの北尾吉孝代表の面接を受けていた。円山氏は、すぐに銀行を辞める決意をする。

「中小企業診断士の勉強を通じて、経営者の仕事にも興味を持ち始めていたので、ソフトバンク・グループでならその夢に一歩近づけるはずだ、このチャンスを逃したら一生後悔すると直感したんです」

その突然の挑戦は、見事に吉と出る。銀行を辞めた2000年以降、円山氏は5年間でグループ内6社もの企業運営に携わる機会を得て、うち3社で代表を務めるまでになった。


1人で何かをするよりも誰かを巻き込む方が確実


ソフトバンク・グループに転職してからは、社内外で積極的に人脈を広げる努力もしてきた。企業経営に携わる機会が増えるにつれて、「しょせん、1人でできることは限られている」と痛感していったからだ。

「ならばデキる人たちを巻き込んでビジネスを展開していけば、より成功に近づけるだろうと考えて、『日本をよくする会』という社会人サークルを立ち上げました。名前はイマイチですが(笑)、今では金融マンや弁護士、若手ベンチャー起業家など、総勢60名ほどのネットワークになっています」

昨年立ち上げたイコール・クレジットというネット消費者ローン会社は、まさにこの人脈が発端となって始まった。日本最先端のリスクマネジメントノウハウを有する石井一君氏(現イコール・クレジット代表)と知り合い、「彼のノウハウを活かして、日本最強のリテール・ファイナンスを実現させよう」と北尾氏に直談判したのだ。

「ベンチャーを経営する上でもっとも重要なのは、ビジネスモデルではなく人です。優秀な人材が集まって、正しい努力を続けていけば、どんな事業でも必ず成功できると私は信じています。だからこそ、一期一会を大事にしなければと日々実感しています」

 
 
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