未上場ベンチャーへの転職

大企業で組織の歯車となって働くよりも、伸び盛りのベンチャーで思う存分実力を発揮したい―。でも、いまさら、上場した有名ベンチャーにいっても、会社の「草創期」の支えるやりがいや、未知なる領域を開拓していく喜びは味わえそうにない。そこで、typeがおススメするのが、今後上場予定がある優良ベンチャー企業への転職だ。本特集では、リスクをとって、未上場ベンチャーに飛び込んだ人の「その後」を追跡。優良ベンチャーの見分け方などについても研究していく! 《2005年10月号より抜粋》

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池田拓司氏(27歳) 株式会社 はてな チーフデザイナー
坂本達也氏(29歳) 株式会社ヤッパ 3D事業本部 Account Management室長
田尻潤二氏(28歳) 株式会社 エス・エム・エス コンサルタント/東京事業所責任者
 
 
株式会社 はてな
池田拓司氏(27歳)
 
 
1978年生れ。多摩美大卒業後、大手プロバイダー入社。サイトのディレクターを務める。昨年、デザイナーとして同社に転職し現在に至る。
 
 

デザインのプロを目指し転職
プロ集団の共有感が心地いい

「ウェブデザイナーとして、最先端のスキルを磨きたい」

そんな思いから安定した大手プロバイダーを退職。社員10名、全員30歳以下という若いベンチャー企業「はてな」に飛び込んだのが、池田拓司氏だ。前職の大手プロバイダーでは、主にスポーツサイトの進行・運営管理などを担当していた。

「前職はインターネット企業らしくなく、おっとりした社風(笑)。そのためスピードにかけるところがあった。指示1つとっても、部長、課長、リーダーと、上から順に指令が降りてくる。会議でも自分の意見を容易に発言できる雰囲気ではなかった」

また、もともとデザイナーが希望だったが、制作は別会社に委託していたため、「このままでは自分のスキルが伸びない」という焦りも感じていた。「自分でサイトを作りたい」という思いを優先し、3年後に退職した。

ウェブ制作会社を回る中で、たまたま前職の同期が勤めていた「はてな」に出会った。同社は、コミュニティ型のQ&Aサイトやキーワードでコミュニティと繋がるブログなどを提供するベンチャーだ。

「実は、制作会社から内定をもらっていたのですが、制作会社だと仕事が“請負”になるため、自由度が狭まるのではという不安があった。だが、はてなには日本最大級のQ&Aサイトという確固たる自社媒体がある。自社媒体をデザインするほうが仕事内容として魅力的だし、自分のセンスが発揮できると思ったのです」

社風は和気あいあいそのもの。稟議もナシ。そんな環境も気に入った。現在、池田氏は社内唯一のデザイナーとして、ウェブのデザインはもちろん会社のロゴなど「ブランドデザイン」全般を手掛ける。

「転職してよかったのは、自分が作りたいものがすぐに何でも作れること。社員全員、ウェブが大好きで、感覚を共有できるのも心地いい。それだと気兼ねなく働けますからね」

また、社内会議のための資料作りなど無駄な仕事がなくなったので、9時までには必ず帰れる。
「社長が早く帰ることもあり、皆ダラダラ残業しない。おかげで、日中どのように集中するかを考えるようになりました」

マイナスだったのは、世間的な知名度がないので、引越し先がなかなか決まらなかったことくらい。「転職して満足」と池田氏は語る。

まだ社員の少ない有望IT関連ベンチャーに飛び込むと、“IPOによる株長者狙い”とも思われがちだが、池田氏は「プロとしての生き方を選んだ結果」という。

「社員全員がプロ集団といった雰囲気。自分も、もっともっとプロになろうという意識が生まれます。将来的には、デザイナーという職種を極めていくことが目標です」

 
 
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