起業家からネットベンチャーへ転職
いまは「やりたいこと」に集中できる
起業家時代は日々の資金繰りに追い回され、考えるのはロマンよりカネのことばかりでした。しかし、いまは安心感がある中で存分に暴れられる。僕は起業家よりもプレーヤーが向いていたようです」
そう語るのは、起業家から03年にブロードバンドタワーの社員に転身した田村淳氏だ。
田村氏が00年に友人と起業した会社はパソコン販売、HP製作から始まり、auなどの携帯公式コンテンツや携帯バーコード技術を開発。モバイル広告大賞を受賞するなど注目された。
「インターネットで映画を配信する事業をやりたいとずっと思っていた。前の会社の取引先だったブロードバンドタワーの社長に、そう話したら“ウチでやりなよ”。それで取締役を辞めてこの会社に移ってきたんです」
起業経験と企画を形にする力のある田村氏のミッションは、ネットシネマサイトの立ち上げ。
同社にはブロードバンド配信のインフラがある。これを使って映画をネットで無料配信し、DVD化もするプランだ。
「一番大変だったのは広告主探し。相手が数千万円の映画制作費を出すのに、納得できる企画書を作らないといけませんから。また、ゼロから手配をするのも勉強の連続だった」
まだ1年半だが、東京ガス提供の『クック・ミー・ソフトリー』など、チームで80の映画を公開した。
同時に自らの発案で、映画の中で出会ったこだわりのライフスタイルを提案するeコマース事業も立ち上げた。
「社長に提案すると、すぐ子会社を作れと。会社の方向性に合えば、何でもトライさせてくれる。社内は若手が競って新規事業を提案する文化。それを経営陣が冷静な判断でコントロールしています」
ベンチャーは既存取引先との取引だけではすぐに限界をきたす。だから、常に新規開拓と新規事業立ち上げの連続。これに伴って、ゼロからチームを作る力が重要だと感じているという。
「僕はネットのインフラを作ることが自分の天命だとある日、目覚めた。やはりベンチャーでは、自分がやりたいことを力強く一言で言えることが、成功する条件だと思います」 |