日本を代表する3社からひもとく  

グローバル企業の「仕事スタイル」

メジャー企業の業務から、ビジネスにおける“世界基準”が見えてくると言っても過言ではない。ここでは、日本を代表するグローバル企業である「日本オラクル」「ソニー・コンピュータエンタテインメント」「コマツ」の3社で活躍するビジネスパーソンたちから、ビジネススタイルや働き方、モチベーションなどを伺った。 《2006年3月号より抜粋》

>>  今週の新着求人を見る  <<


小野寺 淳史
(31歳)

株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント
経営管理本部 法務部
大学院工学研究科を修了後、2000年4月に同社に入社。同社における研究開発活動を通じて開発された技術の中から、特許性のある技術を発掘するためにエンジニアをサポートし特許出願に結びつけ、最終的に特許権の権利形成を進めることが主業務。各国拠点との打ち合わせや海外企業との交渉で海外出張などもしばしば発生


2005年5月18日から20日に米国ロサンゼルス・コンベンションセンターで開催された世界最大のゲームショー「E3 2005(Electronic Entertainment Expo)」。ひときわ大きな人だかりができていたのは、株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)の次世代コンピュータエンタテインメント・システム「プレイステーション 3」(PS3)だ。

世界中の人々が心待ちにしていたこのPS3の反響は、SCEIが「海外進出している日本企業」ではなく、ローカルにビジネス拠点を置くことで調和をはかり、世界各国の人々に受け入れられている「グローバル企業」であることを改めて認識させた。

搭載されるスーパーコンピュータに匹敵する演算能力を有する次世代高性能プロセッサ「Cell」は、PS3の心臓部だ。これ以外にも、様々な最先端技術が駆使されている。これらの知的財産の特許出願・権利化作業を行っているのが、小野寺淳史氏だ。「プレイステーション 2」が発売された同年に入社。以来、SCEIの知的財産である特許の権利化業務に携わり続けている。

「PS3にも搭載される「Cell」はソニーグループ、IBM、東芝と共同開発されたマルチコアプロセッサであり、3社共同で特許権の取得にあたってきました。コミュニケーションツールは、必然的に英語になるのですが、それよりも文化、環境、考え方などの異なる人々と共同でひとつの成果を達成することの難しさを、肌で感じました」

PS3はHD(ハイデフィニション)規格の中でも最上級の画質で、ゲームや映画など様々なエンタテインメントコンテンツを楽しむことができる今までにない全く新しいハードウエアである。よって、ゲーム機開発に関わる企業が保有する特許のみならず、AV機器関連の他社特許に抵触しないよう特許弁護士と議論し、設計変更等を通じてエンジニアと協力していく必要がある。特許権等の知的財産権の保護を強化することで産業を活性化しようとする「プロパテント政策」が小泉政権になってようやく発動されたが、知的財産関連の意識で最も進んでいるのはやはり米国である。そもそも法制度においても大きな差がある。陪審裁判の導入や、賠償額の高額化等で、米国特許に対しては特に敏感になる必要がある。

また逆に、SCEIが保有する特許が、日本のみならず他国の企業によって侵害されていないかリサーチするのも、SCEグループの技術を守るために必要な業務だ。

「製品の開発や販売がワールドワイドに行なわれている現在、グローバル企業にとって知的財産部門は国際的な競争力を高める意味でも必須の部隊といえます。最先端技術を開発するだけでなく、特許出願によって技術とビジネスを守ることは、企業戦略の大きな武器になります。国によって特許法が違うため、各国拠点と綿密な連携を取りながら、SCEグループの知的財産資産を守っていくのが私の仕事です」

言葉と法律が共通の国内だけではなく、アライアンス先も競合も、世界中に広がりつつある。技術革新速度、法的整備、言葉、文化がそれぞれ違う世界各国企業を相手に、複雑な知的攻防戦を繰り広げるのが知的財産部門の業務。知的財産という形のない企業資産を活用しいかにビジネスを成功させ、開発力を更に強化し、競争力を継続して高めていくという、グローバル企業必須の重要部署だ。



世界中に「プレイステーション」好きのコアユーザーがいるグローバル企業だけに、その動向は良くも悪くも注目を集めてしまう。新製品発売以降は、「特許侵害警告」が多数寄せられる。

海外には、そうした特許を買収し「特許侵害訴訟→賠償請求」を行うことで成り立っている企業(パテントトロール)もあるとか。侵害訴訟の中で、弁護士と協力して製品が侵害していないことを立証する対応に当たるのも小野寺氏の仕事のひとつ。

競合するビジネスを行なう企業に対しては、お互いの特許を相互に許諾する解決方法(クロスライセンス)もある。特許出願後、特許として特許庁で権利登録されるためには数年かかる。ただ、この間もSCEIはグローバル企業として、常に走り続けなければならない。

今回のPS3に関わる技術が特許として権利登録される頃には、小野寺氏はPS3に続く新たなハードウエア開発の真っ只中で、引き続き特許担当者として活躍していることだろう。

自分で自分の能力を限定しないで可能性を広げる / 日本オラクル株式会社
グローバル戦略の大きな武器=知的財産 / 株式会社ソニー・コンピュータエンタテイメント
欧米だけが海外じゃない。真のグローバル感覚を肌で体感 / コマツ(株式会社小松製作所)

typeのおすすめサービス

サイトでは検索できない非公開求人をキャリアアドバイザーがご紹介。さらに、職務経歴書の書き方や、受かる面接のコツなど、転職ノウハウを伝授!
情報を登録しておくだけで、あなたに興味を持った企業の採用担当者から直接スカウトが届きます。
正社員で成長したい女性のための転職サイト!
「女性管理職がいる」、「働くママ歓迎」など、女性ならではのこだわり条件から求人を検索できる!