日本を代表する3社からひもとく
グローバル企業の「仕事スタイル」 |
メジャー企業の業務から、ビジネスにおける“世界基準”が見えてくると言っても過言ではない。ここでは、日本を代表するグローバル企業である「日本オラクル」「ソニー・コンピュータエンタテインメント」「コマツ」の3社で活躍するビジネスパーソンたちから、ビジネススタイルや働き方、モチベーションなどを伺った。 《2006年3月号より抜粋》 |
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国内大手の建設・鉱山機械メーカー、コマツ。実は海外売上比率が約70%というグローバル企業である。北米、中国、アジアを中心に、土木・建設ラッシュが国外へ向かうと同時に、海外展開に注力し始めて30年になり、その実績は「コカ・コーラが世界中のどこに行ってもあるように、コマツの製品はどんな僻地・奥地に行っても動いている」といわれるほど。柳楽篤司氏の仕事は、土木・下水道工事、および鉱山等で多用される油圧ショベルの、欧米以外に向けた販売促進活動だ。 「欧米には大規模なコマツの拠点がいくつかありますが、その他の地域、例えば西アフリカでは代理店がある程度。現場での販促指導やユーザーへのプレゼン、導入支援、及び次世代モデル開発のためのマーケティングリサーチを行っています。最近では2?3カ月に一度は、中近東やアフリカなどに出張しています」 世界各国のグローバル化が進んでいるとはいえ、商品に求められるニーズは地域で異なる。 「欧米では、規制対応、低燃費、居住性・操作性が高いなど、ハイスペックな製品のニーズが高いのですが、中近東あたりだと、一番に求められるのが耐久性であり、燃費は重要視されないケースが多い。産油国なので燃料は売るほどありますから」 現場での使用状況も欧米や日本とは大きく違う。日本では1日8時間操業が常識だが、現地では、昼夜交代で20時間操業なども珍しくない。欧米に比べて強くアピールすべき点は耐久性やメンテナンスの容易性が中心になるため、プレゼンテーションの内容も変わってくるという。 現在、コマツの建設機械シェアは世界No.2。企業の信頼性や品質レベルでは十分な評価を得ており、そのブランドイメージをさらに高める一環として取り組んでいるのが「アフガニスタン向け対人地雷除去機」の開発だ。経済産業省や新エネルギー・産業技術総合開発機構による助成金事業を活用して開発を行い、外務省や日本国際協力システムによるプロジェクトで、アフガニスタンで実証試験を実施した。今後はアフガニスタン以外にも、カンボジアなど、戦後も残留地雷のため不安な生活を強いられている政府機関、NGOおよび国連機関へ、その有効性を説明していく。大量生産や利益が目的の製品ではない。コマツの技術力を、国境を越えた社会貢献に生かすのが目的だ。 「技術職から海外営業に職種転換して見えてきたことは、問題解決の方法は一つではないという点。お客様のニーズに応えるためには、技術面からだけでなく、営業・販促・マーケティング・導入支援・メンテナンスなど、様々なアプローチがある。もっとも早く、効果的な手法を見つけ出すことが重要。一つの方法に固執せず、視野を広げて問題の全貌を捉えることが必要だと考えるようになりました」 柳楽氏の視野は、技術から世界情勢・紛争・為替などにも向けられている。世界を俯瞰し、問題解決に至る最短距離を見つけるのが、真のグローバル企業で働く人に必要とされるスキルなのだろう。 |
スーツケースではなくリュックを背負い、書類と同時にトイレットペーパーを詰め込むのが出張準備に当たる。 黄熱病や狂犬病など、病理的危険地帯へ踏み込むことも多い柳楽氏の左腕には、さまざまな伝染病の予防接種痕が残り、その総額はなんと10万円を超す。現地代理店での打ち合わせやプロモーション活動ではスーツも着るが、アフガニスタンやカンボジアへは作業着で現場へ向かうという。宗教的な問題で豚肉や酒の摂取が禁じられている地域に向かう場合は、もちろん渡航者も厳禁だ。 柳楽氏のパスポートは世界各国のスタンプが並ぶ万博状態。ページが足りずに増補している。豊かな経済に温暖な気候に慣れ親しみ、知らず知らず、先進国のおごりを身につけてしまっている我々にはない豊かな経験を積んでいる柳楽氏。欧米や日本は世界の中心ではなく、世界の一部に過ぎないのだ。 |
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