『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』の著者が語る、営業が楽しくなくなる原因とは?【ビジネス書3分リーディング】
Amazonの「セールス・営業」カテゴリーの上位に必ず1冊はランクインしている「質問型営業」に関する書籍たち。どうしても「説明型」になりがちなセールストークを、「質問型」に変えるだけで顧客の反応や売上げが変わってくると評判らしい。この「質問型営業」を考案したのが『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』の著者、青木毅氏だ。
現在、京都で企業や官公庁、自治体を対象にしたコンサルティング会社を経営する青木氏は、営業だけでなくセルフマネジメントやコミュニケーションにも「質問型」を適用することで、つらく感じていた仕事が楽しくなると説く。その営業が楽しくなるメカニズムについて聞いた。
株式会社リアライズ 代表取締役 青木 毅氏大学卒業後、飲食業・サービス業などを経て外資系人材教育会社の代理店に入社。1988年に5年間の累積業績で1,000人以上のセールスマン中1位を獲得。1998年には全国1位となり、世界84カ国の代理店2,500社の中から世界大賞を受賞する。2002年にリアライズを設立し、質問型セルフマネジメントをはじめ質問型コミュニケーション、質問型営業のコンサルティング事業を展開している
青木毅氏が抜粋「どうしてもここだけは読んでもらいたい!」
青木氏が同書の肝と挙げたのは、79ページからの第3章。営業スタイルを質問型へと変えるための実践的なロールプレイングの方法が記されている。アポイントからアプローチ、プレゼンテーション、クロージングを経てフォローアップまで、具体的なノウハウと成功事例が挙げられている章である。このノウハウが身に付けば、それまで辛いだけだった営業が楽しくなって成果も上がるようになるという。
しかし、その前に、青木氏が前提知識として読んでおいてほしい、と抜粋してくれたのは、第1章の冒頭にある、多くの営業マンの思い込みを180度変える言葉であった。
「売るのではなく、買ってもらう」
今から30年前、私が29歳のとき。この言葉は私が読んだある冊子のほんのわずか一行にありました。
~中略~
この言葉の意味は次のようなものです。
「真の営業マンは、決して『売らない』。なぜならば売るという行為は営業マンが行うからだ。真の営業マンはお客様に『買ってもらう』のだ。それは、お客様が自らの意思で、自発的に行うものだ」
この言葉を読んだときから、『売るのではなく、買ってもらう』が私の営業における理想であり、目標となったのです。
(『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』18pより抜粋)
これを前提に、著書のタイトルにもなっている3つの質問「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」を活用して顧客の現状や欲求を知り、提案へと結びつけていくプロセスが書かれていく。
「たとえば?」で行動を聞き、「なぜ?」で考え、「ということは?」で感じや思いを聞くことは、どんどん、その人の内面に深く入ることなのです。
~中略~
つまり、質問というのは、広げることではなく深めることに秘訣があるのです。そういう意味において、余計な質問は使わず、「たとえば?」「なぜ?」「ということは?」で十分なのです。
(『「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業』58pより抜粋)
青木氏が考える「営業はお役立ちの情報提供」という原則を踏まえて、3つの質問を使って顧客の感じ・思いや考えを引き出すことができれば、「売るのではなく、買ってもらう」ことができると青木氏は強調する。そして、それはどの営業マンでもできるというのが本書の流れである。
若手営業マンが売れない原因は上司世代の教育にある?
青木氏にはこれまでにも「質問」をキーワードにした著書がある。これらの書籍や今回紹介した著書を読んだり、青木氏が主催している営業塾に参加した営業マンは口々に営業の仕事が“楽しくなる”という。
「営業マンにとってつらいことと言えば、頑張っているつもりなのに売れないことです。なぜなら商材の説明に終始してしまう『売り込み』から脱却できていないからです。ところが、ちょっと考え方を変えてお客さまの声に耳を傾けるようにするだけで、お客さまに買ってもらえるようになります。すると、自然と営業の仕事が楽しくなるんですね」
説明型の「売り込み」から脱却する方法として重要なのが、青木氏が提唱する「質問型」の手法である。
「顧客が困っていることを質問によって明確にし、『うちの商品ならその悩みを解決できます』ということで、相手より優位に立てるんです。もうそうなれば『買ってもらう』ではなく、『買わせてあげる』という立場ですから」
しかし、青木氏いわく、多くの若手営業マンが抱えている問題点があるという。それは「説明すれば売れる」と思い込んでいることだ。そしてその原因は彼らの上司世代にあるという。
「今、若手営業マンの上司にあたる世代の人たちは、説明型の営業で売れる時代を経てきています。だから部下にもそのように教育しているのでしょう。でも今はそういう時代ではない。ごり押しやしつこい営業が蔓延し、『営業』への抵抗感が強まってしまった。本当なら上司世代がこれに気付いて、時代に合った営業手法を教えなければならないんです」
青木氏が提唱する「質問型営業」がスタイルとして身に付いてくると営業の仕事が楽しくなるだけでなく、リピーター獲得も容易になる。
「いわゆるトップセールスは、すべての客先に足を運んでいるわけじゃありません。相手のニーズや抱えている問題を知って、それを解決していくことはもはやコンサルタントやアドバイザーと言っていい。その関係性を築いていくことで実績も上がるし、顧客に求められるようになるのです。それによって、自分がもっと営業を楽しめるようになる」
結果として顧客が顧客を紹介してくれるようになるので、自ら営業しなくても売上につながっていくのだ。
今まで信じて行っていた「営業」の本質がガラリと変わりそうなヒントが詰まった今回の書籍。コンサルタントやアドバイザー的な視点を持つことが、営業マンとして一段レベルアップするための近道なのかもしれない。
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取材・文/浦野孝嗣 撮影/佐藤健太(編集部)
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