仕事がうまく行かない時の処方箋~「諦める」という行為をポジティブに使いこなそう【連載:太田彩子】
「営業部女子課」主宰 太田彩子女性営業を応援するコミュニティ「営業部女子課」主宰。早稲田大学法学部卒業後、リクルート『Hot Pepper』創刊期にメンバーとして携わり、営業として数々の社内表彰制度に表彰されたのちに起業。「女性営業の人材育成」や「女性の働き方」を専門とし、女性営業プロジェクトやダイバーシティプロジェクトの立上げ・企画支援を精力的に行う。「1億売るオンナの8つの習慣」(かんき出版)や「成功できる人の営業思考」(PHPビジネス新書)など
「営業部女子課」主宰の太田彩子です。
何かを「諦める」といった経験は、誰しも必ず、一度や二度はあるのではないでしょうか。「諦める」というと、どうしてもネガティブなイメージを持つ方は多いでしょう。ましてや、「粘る」、「諦めない」といったスタンスが奨励されがちな営業職においては、「諦める=負け」と解釈してしまいがちです。
しかしながら、「諦め」という言葉は仏教用語で「明らかに、見極める」という意味を包有しており、人生において至極大切でポジティブなものです。日々の業務においても「諦める」ことで、別の新しい道が開かれることは決して少なくないのです。
そこで今回のテーマは、「諦める」ことで新しい道を切り拓く、です。
1.豊かな実を育てるための「果断」
例えば、「果断」という言葉があります。もともと果物を育てる際に、より良い豊かな実を育てていくために、他の実をあえて切り捨てる作業のことで、そこから「思い切って物事を行う」といった意味の熟語としても使われています。
せっかく付けた実を捨ててしまうのは、もったいないようにも思えますが、果断をしないと木が弱り、実の育ちも悪くなり、味も不味くなってしまうそうです。
日々の業務においても、この「果断」という作業が必要です。よく、すべての顧客をフォローしようとして、結局どれも中途半端に終わってしまい、結果が出せなかった――という事例を耳にすることがありますが、そもそも100件の営業案件があったとして、そのすべてを成功させるというのはとても難しいことです。
気持ちは全開でも、身体はひとつ。優先順位は必要です。あれもこれも、とすべてが共倒れにならないためには、その時々での優勢順位を見極め、時には思い切って人に任せるなど「諦める」という決断も下しながら、進めていくことが大切です。
2.「失敗」はより良い戦略を練るチャンス
仕事をしていて、よかれと思ってやったことがお客さまのクレームにつながって連続取引を諦めざるを得ないことや、社内の企画コンペで絶対に通ると思っていた渾身のプロジェクトが周囲から反対される、といった「諦め」があったとします。
本人としてはさぞ悔しく、諦めても諦め切れないことでしょう。しかし、それによって得られるものは、何のトラブルもなく、スムーズに仕事が成功した時に比べると、実は計り知れません。
自分では「絶対にうまくいく」と思っていたプロジェクトでも、諦めた後でよくよく考えてみると、ツメが甘かった、具体的な展開案を示すことができていなかった……などと反省、改善すべき点が見つかることがあります。この発見は、今後のための大きな財産になります。
そして、後々の大きなプロジェクト達成につながることだってあり得るのです。「失敗」は、自分のこれまでの生き方なり、仕事の方法なりを見直し、次の新たな道を切り開くための、これ以上はない大きなチャンスなのです。
3.「諦め」はポジティブな選択肢
どれだけ優秀な営業ウーマンでも、契約が取れない顧客もいれば、何をやってもうまく行かないという時があるものです。ですので、もし何かを「諦める」ことがあったとしても、恥じ入ったり、挫折感を抱く必要はありません。
そこで大事なのは執着することではなく、それを受け入れ、そこから何かを学び、前に進んでゆくことです。
「失敗は成功の母」という言葉があるように、「負け」だと思っていた出来事が、実は後の成功のための大きなターニングポイントにつながるのです。私たちは何かを突き詰めて、大成していくためには、問題の根源的な部分と向き合い、最適な判断を進めて、そのために適切な処理をしていきます。
最適な判断のもと、方針に合わないものは「辞め」たり、「捨て」たりする。そうやって現在の状況下において、最適な判断を見極めることが「諦め」だと考えれば、「諦める」ことは、実は人生において最高の結果を生み出すための、必要不可欠な選択なのです。
今回の寄稿についてより詳しく書いている私の書籍があるので、よろしければ合わせてご一読ください(太田彩子著『折れない営業女子になる7つのルール』かんき出版』)。
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構成/井口啓子
公式HP:営業部女子課: http://eigyobu-joshika.jp/
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