社内で「のび太」と呼ばれた男をトップ営業マンに押し上げた、ひみつ道具『パワーダウン』とは【ビジネス書3分リーディング】
「のび太」といえば勉強もスポーツもダメで、何か困ったことがあるたびにドラえもんに頼ってしまう小学生。『のび太でも売れます。』の著者、酒井晃士氏は新卒で入社した際にかけていた大きなメガネと、その頼りなさげなしぐさから周囲に「のび太」と呼ばれていた。このあだ名が示すように、配属された営業部で同期入社の仲間たちがどんどん成長していくのに、なかなか結果が出せなかったという。
そんな酒井氏も、試行錯誤の末、やがて5期連続で300%超の成績を達成するトップセールスへと変貌を遂げる。のび太くんが紆余曲折を経て辿りついた“ひみつ道具”とは何だったのか。
株式会社ドコモCS 山梨支店 営業部 第一営業推進担当主査 酒井晃士氏1982年生まれ。青山学院大学理工学部卒業後、NTTドコモ入社。法人営業の部署に配属され、所属支店の目標を1人で達成したり、5期連続で300%超の成績を上げるなど活躍。現職のかたわら、著名営業コンサルタントの和田裕美さんの認定講師として営業やコミュニケーションに関するインストラクターも務めている
酒井晃士氏が抜粋「どうしてもここだけは読んでもらいたい!」
酒井氏が営業マンに読んでもらいたいと抜き出したのは、自らの経験から気付いた“ひみつ道具”のヒントになる部分だ。
「僕たち営業マンが考える“営業マンの理想像”は、なぜか容姿や服装はもちろん、頭も良くて話もうまいという、全く欠点がない完璧な人になりがちです。僕も最初は彼らのようになりたいと思っていました。でも、僕の奥さんはそんな完璧な人について『近寄りがたい気がする』と言ったんです」
多くの営業マンがそうであるように、「完璧」を目指していた酒井氏。そこから妻の何気ない一言で「完璧より大切なこと」に気付き、彼がトップ営業マンへの道を歩むこととなったきっかけが著書に記してある。
僕は、自分にはない「デキる」部分を持っている人に、純粋に憧れていました。
そして、自分でも気づかないうちに、彼らのようになりたいと無理をしていたのだと思います。でも、かみさんのひと言で、「完璧」は必ずしもよいことばかりではないと、気づくことができたのです。
~中略~
実際に僕の周囲にいるトップセールスたちは、必ずしも「完璧な人」ではありません。見方によっては、少し頼りなさそうな人のほうが多いのです。
しかし、彼らは結果をきちんと出し続けています。
きっと彼らは、最初から完璧を目指してはいないのです。逆に、「自分は完璧ではない」という点を自覚しているからこそ謙虚になり、人間的な魅力を醸し出しているのです。
(『のび太でも売れます。 トップセールスが明かす世界一ゆるい営業術』30~31pより抜粋)
「パワーダウン」で愛されキャラに
“営業マンの理想像”と“周囲の売れている営業マン”が必ずしも一致しないことに気付いた酒井氏。そこから導き出したトップ営業マンになるための方法が「パワーダウン」だ。
「『全てが完璧なトップ営業マン』と『頼りなさそうだけど売れている営業マン』を見比べて、僕が現実的に目指せるのは後者だと思いました。それまでの僕の営業は完璧を目指すあまり自分を良く見せようと取り繕い、ガチガチに力が入っていました。しかし、自分の身の丈に合った方を目指そうと肩の力を抜いてからは、自然と売れるようになったんです」
酒井氏はそれを「パワーダウン」と表現する。
「意識したのは自分の弱さをさらけ出すこと。あえて、自己紹介などで自分の失敗談や弱みを伝えることで、相手に感情移入してもらいやすくなるんです。ミスしても自然と許されたり、困っていたら自然と手伝ってあげたくなる人いますよね? それも一種の感情移入です。パワーダウンすることで、相手に『この人を手伝ってあげたい』という感情が湧き、僕の話をすんなり聞いてくれるようになるんです」
また、感情を包み隠さないことも重要だと酒井氏は話す。
「もちろんビジネスの場なので、社会人として最低限のマナーを守るのは当然ですが、喜怒哀楽を出し、人間くさい営業マンを目指していました。パワーダウンして肩の力を抜き、例えば、『先日教えてもらったお店、とてもおいしかったです!』のように感情をこめて話をするんです」
この人間臭さが顧客の輪を広げることにもなると、酒井氏は考える。
「完璧な人は、お客さまと1対1で対面すればとても強い影響力を発揮できるでしょう。しかし、その周囲までもたらす影響力は、人間臭い人にはかなわないと思います。のび太くんのように、ちょっとドジで人間味溢れる“愛されキャラ”の方が、助けてあげたいという感情が湧き、拡散性が強いのだと思います」
現在、ドコモCSの山梨支店で管理職として活躍している酒井氏。日々、若手営業マンと接していて痛感しているのが、プライドが高い反面、失敗した時に心が折れやすい人が多いことだと話す。
「仕事ですから、与えられた目標に向かって真摯に努力することは大事です。しかし、自分に合わないスタイルを続けて、自分がダメになってしまったら本来持っている力も発揮できません。むしろ、ほんの少し肩の力を抜いてみることで、壁を破れる可能性もあるのです」
>>転職したら年収はどのくらい上がる?「転職力診断テスト」を受けてみる
>>なりたい自分を目指す!大手人気企業の求人
取材・文/浦野孝嗣
RELATED POSTSあわせて読みたい
『口ベタ営業マンが渋谷ギャルをナンパし続け半年後に1億の契約をとった件』著者が教える、真の「コミュ力」の鍛え方【人気ビジネス書3分リーディング】
『営業部はバカなのか』著者が教える、優れた営業リーダーになるために20代でやるべき2つのこと【ビジネス書3分リーディング】
『トップセールスには、なぜ「いいお客さま」が集まってくるのか?』著者が教える、“常に売れ続ける”営業マンになる方法【ビジネス書3分リーディング】
『あんな「お客(クソヤロー)」も神様なんすか?』の著者が語る、営業マンがクレームから逃げないほうがいい理由【ビジネス書3分リーディング】
7年間ブラック企業に勤めたら「営業マンが本当にやるべきこと」に気付いた【ビジネス書3分リーディング】