“秘伝の巻物”が味を守る天ぷら専門店『みかわ』で通なオトナへの第一歩を踏み出す【ザ・営業食】
路地裏に優雅に店を構える人気店
日本橋からほど近い茅場町は、証券会社勤務のビジネスパーソンなど、一流企業の看板を背負った人々でにぎわうエリアだ。そんな場所で取引先と食事をするなら、店を選ぶセンスも試されて当然。それならばちょっと背伸びして、オトナのイメージが強いお店もレパートリーに入れておきたいところ。ということで、今回は天ぷら専門店『てんぷら みかわ 茅場町店』の暖簾をくぐった。
『みかわ』が店を構えるのは茅場町駅から3分ほど歩いた静かな路地裏だ。敷居の高さを感じさせない飾らない店の風貌と、ひっそりとした路地裏というロケーション。「ここを知っているとはなかなかの通ですね」、そう感じてもらえる絶妙な風情が魅力的だ。
店内に入り、ぐるりと中を見渡す。天ぷら鍋が置かれた厨房を囲むようなL字型のカウンター席が8席と、他に4人掛けのテーブルが3卓ある。店はこぢんまりと落ちついた雰囲気だ。
厨房の奥にはそれぞれ形の異なる徳利と盃が並ぶほか、店内は和を感じさせる調度品がところどころにセンス良く飾られている。「この店は当たりだな」と、中に入った瞬間に分かるような、そんな雰囲気が醸し出されている。
ランチメニューは2品で勝負。人気は『ランチ天ぷら定食』
『みかわ』のランチメニューは2種類のみ。「ランチ天ぷら定食」と「ランチ天丼」があり、それぞれ税込みで1200円だ。“天ぷら専門店の天ぷら”と聞くと、手が届かないイメージがあるが、この価格帯なら安心。ふと気が向いたときにランチに天ぷら、は選択肢に入れても問題なさそうだ。取引先と同席するときもそれほど肩肘張ったムードを作らずにランチが楽しめそうである。
天ぷら鍋と向き合っているのは、6年前からこの店を任されている早乙女具視氏。「『ランチ天ぷら定食』の方がよく出ますね」とのことなので、早速カウンター席に座り定食をオーダーしてみた。
カウンター席から料理人の手さばきがよく見えるのがまたうれしい。早乙女氏が一つ一つのタネに、丁寧に衣を付けて揚げ油の中へ。真剣な表情。きつね色に揚がった天ぷらを器に盛りつけて『ランチ天ぷら定食』が完成。天ぷらの内容は、海老、キス、イカ、穴子、そして野菜2品。天丼にした場合も同じ内容となっているそうだ。
専門店と大衆店の天ぷら、その大きな違いとは
定食の天ぷらをいただいてみると、サクッとした衣とプリプリした海老の食感が絶妙だ。うまい! 穴子もふっくらとした食感とやわらかな風味が絶品。キスも鮮度の良さがそのまま衣の中に閉じ込められているようなおいしさだ。さすが専門店、という味。ところで、天ぷら専門店の天ぷらは、大衆店のものとは何が違うのだろうか……!?
早乙女氏によると、専門店で食べる天ぷらは
●素材にとことんこだわる
●揚げることで食材の水分をコントロールする
以上の2点が大きな特徴とのこと。
1点目の「素材へのこだわり」について早乙女氏にはこう話す。
「私の仕事はまず食材の仕入れから始まります。天ぷらのタネは毎晩築地から仕入れるんです。魚の朝競りはテレビなんかで見かけますが、実は夜の段階でどんな魚が入荷されるのかがわかるので、その段階からいいネタは押さえなくてはいけません」
また『みかわ』は主に東京湾で獲れる魚を使用するため江戸前天ぷらを味わうことができる。これは、最初から江戸前にこだわっていたわけではないが、いろいろな産地のタネを比較していく中で、それが一番おいしいと思ったからだという。やはり、段違いの素材の良さが専門店で味わう魅力である。
また、2点目の特徴「水分のコントロール」とは、天ぷらを調理する上でのポイントのことのようだ。
「天ぷらを揚げるときは、衣や素材が持つ水分をいかにコントロールするかが肝心。水分がある間は蒸気で蒸され、水分がなくなると油で焼かれることになります。“蒸す”と“焼く”、その両方をうまく使い分けるのが天ぷらです」
早乙女氏は、衣を粉・水・空気が1:1:1の割合になるように繊細に仕上げていく。さらに、揚げ油もその日の気温などに応じて、調合を変えているそうだ。
「例えば、暑いと思ったら、少しさっぱりいただけるようサラダ油を多くします。反対に寒いようならゴマ油を増やしてコクを出します。温度などの状態に合わせて微妙に変化させることで、常においしい天ぷらを提供できるよう心掛けています」
日々の工夫に決して手を抜かないことで初めて、おいしい天ぷらを毎日提供し続けることができるのだ。
40年変わらぬ味を守るのは“天ぷら秘伝の書”
『みかわ』には約40年の歴史がある。そして、ここまで見てきた早乙女氏のプロの技も、この歴史の積み重ねが大きな礎になっているという。
「当店には、初代が書き記した素材をおいしく調理するための巻物があるんです。例えば、人は甘みを感じると、脳内で快感物質が分泌されるため、甘い食べ物はおいしく感じると言いますよね。海老の場合は芯が45~47℃くらいになるときが甘さを一番強く感じます。つまり温度で甘みを引き出すわけです。それに対して、さつまいもは加熱することででんぷんが糖に変化してそれが甘みになる。つまり加熱時間が重要になります。そういった天ぷらに関する技術が全てまとめてあるものなんです」
おいしい天ぷらをつくる工程を記した巻物があるとは……。早乙女氏はその巻物を伝授されて、ここまで上達してきたというわけか!
敷居の高いイメージを持たれがちな天ぷら屋。しかし、逆に言えば、行きつけを一店持っていることで、周囲からの見られ方はグッと変わる。
そんな通なオトナへの第一歩を、リーズナブルな価格でありながら素材のうまみを最大限に引き出している『みかわ』のランチから踏み出してみてはいかがだろうか。
【今回のお店】
・店名:てんぷら みかわ 茅場町店
・住所:東京都中央区日本橋茅場町3-4-7
・電話番号:03(3664)9843 ※11:30〜13:30は電話が繋がりにくい場合があります
・営業時間: 11:30~13:30/17:00~21:30 日曜・祝日12:00~13:30/17:00~21:00
・定休日:水曜
・アクセス:東京メトロ東西線・日比谷線茅場町駅より徒歩5分
・お店のHP:http://kayabacho-mikawa.jimdo.com/
取材・文/questroom inc.、井上晶夫 撮影/柴田ひろあき
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