スキルアップ Vol.244

くすぶっている営業マンは豪快力を磨け。営業以外何もできない男が見つけた出世への意外な正論

「根拠も無いのに勘違いしている」
「営業以外、何もできない」
「大きい赤ちゃん」
「冷凍マグロ」

周囲の仕事仲間からこう評価されている男がいる。広告・プロモーション事業を手掛ける株式会社おくりバントの代表取締役社長、高山洋平氏だ。

これらの言葉は一見すると悪口にも取られかねない。しかし、主語が高山氏の場合、その多くは褒め言葉として用いられている。

「本当にね、売ることしかできないんですよ」

笑いながらこう話す高山氏は、かつて株式会社アドウェイズで中国支社の営業統括本部長まで上り詰めた優秀な営業マン。IT企業である同社に6年半いたにも関わらず、Excelでの計算すらできないくらい営業以外のことが苦手なのだという。営業資料すら自分で準備できない彼は、2014年に社内起業した際も周囲からはすぐに倒産するだろうと思われていた。

「僕が苦手なことはいつも他の誰かがやってくれていました。資料作成はExcelが得意な社内の人が作ってくれていましたし、デスクの掃除はきれい好きな社内の誰かがやってくれていました。今思い返せば子どもの頃に遊んでいたミニ四駆ですら友達に作ってもらっていたような気がします」

そんな彼が、どうやって中国支社の営業統括本部長まで出世できたのだろうか。高山氏自らが実践し、作り上げてきた出世のメソッドにその答えはあった。

株式会社おくりバント 代表取締役社長  高山洋平氏

株式会社おくりバント 代表取締役社長 高山洋平氏

出世力=人間力×業務スキル

「僕は、営業マンの出世って、人間力と業務スキルの掛け算だと思うんです。人間力が足りない人はそこを伸ばそうとするし、業務スキルが足りない人はそこを補おうとする。だから、両方そこそこできるという人が圧倒的に多いんです」

人間力と業務スキルの分布図 ※高山氏の要望を元に同社スタッフが考案・作成

人間力と業務スキルの分布図

※高山氏の要望を元に同社スタッフが考案・作成(一部不適切な表現があったため、加工してあります)

どのようにして上司に目を掛けてもらうか、高山氏の選択肢は一つだった。

「僕はExcelの画面の前で、電卓を使って計算するような男。業務スキルを伸ばせる気がしなかったんです。だから圧倒的な人間力で勝負しようと思いました」

高山氏が「豪快力」と呼ぶこの「圧倒的な人間力」に活路を見出したのは、自身のキャリアに起因する。それは、新卒で入社した投資用物件を扱う不動産会社を経て、2社目に入社したアドウェイズでの経験だ。

「中国映画が好きだったので、中国支社への転勤を志願しました。まあ、中国語はおろか、英語も全く話せなかったんですが、なんとなく行ったら売れるという自信はありました」

その後、日系企業の現地法人を中心に受注件数を積み重ね、アドウェイズの中国法人の営業統括本部長まで上り詰めた。

「当時は年間363日は飲み歩いていたんじゃないでしょうか」

高山氏は日系企業の現地法人に日本人担当者が出張で来るたびに一緒に飲みに行っていた。商談のあとにそのまま飲みに連れて行くということもしていたという。このほぼ毎日の接待で行っていたことが売上につながったと、高山氏は回顧する。

「とにかく場を盛り上げるんです。例えば、年上の接待相手とカラオケに行ったら、知らない古い曲を歌ったりするじゃないですか。そんな時、Shazam(流れている音楽を認識し、曲名や歌詞が表示されるアプリ)で曲名を調べ、その方が歌い終わる前にiTunesでダウンロードします。歌い終わったら、『いやー、良い歌過ぎて買っちゃいましたよ』とその画面を見せるんです。すると喜んでくれて、結果として受注につながったりするんです」

豪快力で社内の自己イメージを変える

高山氏が豪快力を見せるのは取引先に対してだけではない。社内における自らの印象を変え、出世にもつながると考えている。

株式会社おくりバント 高山洋平氏

「僕は営業資料を作れないので、他の優秀な女性の社員にお願いすることが多いんです。作ってくれたお礼に『今度ご飯でもおごるよ』と言う人がいるじゃないですか。あれって、たぶん女性からしたら嫌ですよね。上司からしたらおごるんだから、きっと慕ってくれる、という期待があるのかもしれないですが、上司がおごるのは当たり前。それによって求心力アップなんて見込めないんです。僕はそんな時、お酒が好きな人には『今度スナック持たせてやるよ』と言っています」

他にも、洋服が好きな人なら「ブティック持たせてやるよ」、デザイナーなら「Adobe買収してやるよ」など、豊富なバリエーションを蓄えているという。

「もちろん、これは嘘なんですけど(笑)。豪快力は人に話題にしてもらうことによってより強くなると思っていて。『スナック持たせてやる』という明らかな嘘でも、言われた人は僕のエピソードを同僚に話したり、SNSに投稿したくなります。それが誰かの目や耳に入ることで話題になり、『あの人は他の人とは違う』と目に掛けてもらいやすくなるんです」

営業とは、印象に残ったもの勝ち

ただし、高山氏は誰にでもそのような態度を取るわけではない。高山氏が狙うのはあくまで周囲への影響力の高い「インフルエンサー」だ。そのため、知人のFacebookの友人の数を大体把握しているという。

「Facebookの友人の数や、投稿につく『いいね!』の数は、その人の持つ伝播力そのもの。僕はそれが多い人の前でこそ、その豪快力を発揮するように意識しています」

ひげにサングラス、頭には野球帽という、一般常識から言えば、とても営業マンとして許される風貌ではない高山氏。しかし彼は、自社の社長としてこのままの格好で営業に行くのだという。

おくりバント 高山洋平氏

「愛人役の女性をわざわざ雇い、肩を抱きながら企業を訪問することもあります。その女性には商談中に『あたし、飽きたから帰りたーい』と声を上げてもらいました。また、会議室に通されて、持参した掃除道具で窓を磨きながら相手を待っていたこともありました。“普通”や“普通よりちょっとだけ上”では印象に残らない。相手の想像の上を行くくらい“豪快”に振舞い、鮮烈に相手の記憶に残ることが営業として出世する近道なんです」

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取材・文/佐藤健太(編集部) 撮影/竹井俊晴

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高山洋平の豪快力養成講座
高山洋平の豪快力養成講座
高山氏率いる株式会社おくりバントがnoteで連載している一大ビジネス叙事詩。
https://note.mu/okuribunt_inc/n/nef43633fb119

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