スキルアップ Vol.288

元トップセールスウーマン・カリスマ広報 鈴木聡子さんが教える、できる営業マンのためのシーン別手土産ポイント

不動産企業でトップセールスを経験し、現在は世界8拠点で事業展開するグローバルIT企業、メタップスの“カリスマ広報”として話題となり、活躍している鈴木聡子さん。もともと営業は得意な方ではなかったと語る彼女が、顧客との関係性を築く際に味方に付けていたのが“手土産を渡す”という手法だった。

株式会社メタップス 広報・アライアンス担当 鈴木聡子

株式会社メタップス
広報・アライアンス担当
鈴木聡子

1986年生まれ。リクルート、広告代理店の企画営業を経て、住友不動産でベンチャー企業から大手企業まで数百社のクライアントを持つトップ営業となる。その後、ベンチャー企業のKaizen Platform Inc.を経て、2015年6月からメタップスに参画。広報責任者として上場を支え、現在グローバル、子会社含めメタップスグループ全社の広報を担当している。 著書に『スーパー広報直伝! ビジネスで成功する手みやげ術』(講談社)、連載『勝てる手土産』(東京カレンダー)がある

「営業スキルを上げる為に、さまざまな方にアドバイスをいただいたり、あらゆる情報誌を読んで知識を増やしたり、雑談に関する本やビジネス書なども読み漁りました。だけどそれらをどんなに勉強したとしても、自分自身のスキルを上げるまでには時間がかかります。早く人の役に立ちたいと成長の焦りを感じながら、少しでもお客さまとの話のフックが欲しいと考え、それを手軽に誰でも手に入れられるツールとして、手土産を活用し始めたのがきっかけです」

ある時は、打ち合わせのタイミングで「一緒に食べたくて買ってきました」とケーキを差し入れ。また、顧客のお祝いの席には「積み重ねた努力の結晶ですね。バームクーヘンをお持ちしました」と洒落を効かせてみたり。ことあるごとにちょっとした手土産を持参することで、相手に彼女自身を印象付けてきたという。

「手土産は私に、会いにいくきっかけをくれ、仲良くなるための話のフックをくれ、相手とより深く長く繋げてくれる相方のような存在なんです」

そう笑顔で語る鈴木さんの戦略は、明日からでも営業活動に取り入れられそうな手法ばかり。そこで鈴木さんに、営業マンが直面する次のようなシーン別に、手土産を活用するためのポイントを教えてもらった。

《元トップセールスが教える、営業シーン別の手土産ポイント》
■怒らせてしまった取引先へ、謝罪に行くとき
■暑い中、日々支えてくれている営業アシスタント女子グループを労うとき
■何回も提案に行っている訪問先で、「今日こそは受注を決めたい」というとき
■異動による担当変更・引継ぎが発生したとき

誰に・何のために・どんなタイミングで?
ポイントをつかんだ手土産は、お客さまと仲良くなれるビジネスツール

手土産は、営業として「買ってもらう」ためではなく、「お客さまと仲良くなるため」「長くお付き合いするため」のツールのひとつだと考えた方がいいと思います。その上で、誰に・何のために・どんなタイミングで渡せばいいのか、を考えるのが基本ですね。

私の場合だと、このお客さまと仲良くなりたいと思ったタイミングで、手土産の理由付けをしています。季節的なイベントだったり、相手の会社のタイミングで「決算前で忙しいと思ったので、元気になれるようなものを持ってきました」と言ったり。そうすると、お客さまにも受け取ってもらいやすいんですよ。

株式会社メタップス 広報・アライアンス担当 鈴木聡子

■怒らせてしまった取引先へ、謝罪に行くとき

基本的に、謝罪の時には手土産を持っていきません。物で許してもらおうとするのも失礼な気がするんです。

それよりも、謝罪が終わった後に、次のご縁をつなげるために「あの時は申し訳ございませんでした、今後もよろしくお願いします」という意味を込めて持っていきます。

作業ミスなど現場レベルのトラブルであれば、その時にちょっと手土産をお持ちするだけで印象は変わりますよ。そんなシーンでの私のおすすめは『みなとや』の『これでよしなに』。小判型のお菓子で、悪代官と越後屋の気分を味わえる、ユーモアの効いた手土産です。

参照:『みなとや』オフィシャルサイト

参照:『みなとや』オフィシャルサイト

もちろん、謝罪は形式ばることも大切なので、笑いを誘うのは距離の近い方だけに限りますよ!(笑)

謝罪するときって、高い商品を持っていかなきゃいけないと考える方もいるかと思いますが、私の場合、相手の役職や肩書きを見て、商品のお値段を決めることはしていません。「この人だったらいくら」という値踏みをしているような考え方は失礼なので、「お渡しして、喜んでもらえる物」という判断軸に沿って選びますね。

「お詫び」となると、相手への引け目から、特別扱いしたり、必要以上に敬意を持って接しがち。しかしそれをやると自分から距離感を作ることになってしまいます。せっかくのご縁、自分からあえて一歩ひいてしまうのはもったいないですし、ずっと引け目を感じたまま接していると自分自身も疲れてしまう。コミュニケーションを取りたいなら、等身大を心掛けましょう。

■暑い中、日々支えてくれている営業アシスタント女子グループを労うとき

社内への手土産、差し入れのポイントは「出先で買ってくる」ことです。外出している時間の多い営業職の特性を活かして、外出先で気になるものがあれば買って帰るのがおすすめですね。

「好かれたい気持ちが見え見え」なんて言われても、私はそれでいいと思います。好意を全面に出していいと思いますし、「お礼言うのが苦手だからあげる」とか、「自分が食べたかったから皆の分も買ってきたよ」なんてさらっと渡せるといいですよね。

ただ、贔屓だと思われるのは良くないので、数人だけを特別扱いしているように見えないよう、多めに用意するといいでしょう。

ちなみに私のおすすめは、美容ドリンク。コンビニで売っているものでもいいですし、1本600円の、『HACCI』の美容ドリンクなんて自分ではなかなか買わないので贈り物にぴったりですよ。

参照:『HACCI』オフィシャルサイトhttp://hacci1912.com/products/list.php?category_id=26

参照:『HACCI』オフィシャルサイト

私も上司に貰ったことがあるのですが、女性というところも意識しつつ、仕事仲間として「まだまだお前ならできるよ」と期待して、背中を押してくれていると感じてうれしかったですね。

■何回も提案に行っている訪問先で、「今日こそは受注を決めたい」というとき

そもそも、贈り物をしたから受注が決まる、っていうのはないと思っています(笑)。

私だったら、何度もご提案させていただいているお客さまには、あえて商談ではないタイミングでお伺いしますね。例えば、アポイントメントなしで「週末に旅行に出かけたんです。近くに立ち寄ったのでお土産をお届けにまいりました」というだけでもいいんですよ。

仕事だけではなく、プライベートのふとした瞬間に思い出しているくらい、お客さまのことを考えている、という想いを伝えることがポイントだと思います。お客さまも、それくらい自分のことを考えてくれている営業マンがいたら、きっと喜んでくれるはず。そう考えると手土産も選びがいがありますよね。

私も、お客さまの会社の近くに立ち寄った際に、ちょっとしたものを買ってお渡しすることはよくあります。営業職って、どうしても売るサービスや商品ありきで人と繋がってしまいますが、自社の商品以外でも繋がりを大切にしたいという気持ちが表せたらいいなと常に考えています。

■異動による担当変更・引継ぎが発生したとき

担当が変わったら、お付き合いがなくなってしまうのは悲しいもの。そんなときは、今までの感謝と合わせて、異動先でも頑張ってほしいという気持ちを込めて送ります。

異動した後に贈り物をしたり、転勤であれば転勤先のオフィスに郵送したりします。その時は、ある程度量が多い物を贈るのがポイントです。そうすると、そう、新しい部署の方に配っていただくことがポイントになるんです。異動先の人と仲良くなるきっかけにしてもらいたいですし、「この人はこんなものを貰える人なんだ」と印象付けることもできるのではと考えてのことです。お相手にとって、良いはなむけになれば嬉しいなと思っています。

営業とは「人との繋がり」
全ては“仲良くなりたい”の気持ちがベースに

株式会社メタップス 広報・アライアンス担当 鈴木聡子

他にも、手土産を渡す際には、食べるシーンだったり、部署の人数などを意識できれば良いのですが、相手の好き嫌いや細かいマナーまで考え始めると、きりがなくなってしまいます。なので、深く考えすぎないようにしたほうがいいと思っています。

やっぱり、私の場合は「相手と仲良くなりたい」という気持ちが大前提。キャリアを築く中で、私は社内外でたくさんの方に助けられてきました。その経験から「一人で仕事をしているわけではない」というのを強く感じていたので、感謝の気持ちや、味方が欲しいという気持ちが大きくて。だから手土産をお渡しする時も、「その後の人間関係を続けたい」というのが大きな原動力、ベースになっています。

「直感から行動に移せる人は1割にも満たない」という話がありますよね。手土産って、年齢・性別・場所を問わず、誰もが移しやすい行動のひとつだと思うんです。営業マンだからこそ、季節の変化にも気付けますし、新しいお店にもいける。誰かと仲良くなりたい、長く続く関係を築きたいと思うなら、それを活かさない手はないと思いますね。

取材・文/大室倫子(編集部) 撮影/赤松洋太


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