キャリア Vol.373

「意図せず営業に配属された」この先どうする? 営業経験者が歩むキャリアパス「王道4パターン」をプロが解説【連載:営業のNEXTキャリア図鑑 】

アノ人もこの人も「営業」を経験したから今がある!
営業のNEXTキャリア図鑑
新卒で入社した今の会社。同期のほとんどが営業職。「まずは現場を知りなさい」と営業に配属されたけど、このまま営業をやっていて、自分はこの先どうなるんだろう……? 管理職や経営者のポストはごくわずかしかないけれど、仲間の営業マンたちはどこに向かっていくんだろう……?
未来に不安を感じている若手営業マンは多いだろう。そこで本連載では、営業経験者たちへのインタビューを通じ、「営業マンのネクストキャリア」の可能性を探っていく。多種多様なキャリアメイクをしてきた先輩たちの姿から、自分の「なりたい姿」をイメージしてみよう。

本連載第一弾となる今回は、概論として「一般的な営業職のキャリアパス」について、今まで5万人以上のビジネスパーソンを指導してきたコンサルタント・西野浩輝氏に話を聞いた。

「新卒で営業に配属されて、この先どうなるかは分からない……」と、不安な若手は多いもの。営業マンのキャリアパスには、一体どんなステップがあるのだろうか。西野氏によれば、「起業や全く違う職種への転職を除けば、一般的には4つの道に分かれる」とのこと。それぞれについて、どんな人が向いているのか、どんな努力が必要なのかを解説してもらった。

マーキュリッチ株式会社 代表取締役 チーフ講師 西野浩輝氏

マーキュリッチ株式会社 代表取締役 チーフ講師 西野浩輝氏

米テンプル大学Executive MBA(経営学修士)。新卒で入社したリクルートでは、部門初のMVPに2度輝くなどトップ営業として活躍。その後、世界最大の教育コンサルティング企業アメリカン・マネジメント・アソシエーションにヘッドハンティングされ、4年半トップ営業であり続けた。2003年にマーキュリッチを創業し、10数年に渡って50,000人近いビジネスパーソンを指導している

営業職のネクストキャリア、王道4パターン

1. 50人に一人の狭き門!? 黒子にも盾にもなれる素養が必要
【管理職への道】

営業部門で部下や部署のマネジメントを手がける、いわゆるスタンダードな出世コース。とはいえ、「40代以上の世代比率が高い企業が多いため、常にポストが詰まっている状況。事業内容や状況によっても変わるが、課長クラスに進めるのは同世代の10人に1人、部長クラスなら50人に1人程度の狭き門であることは間違いない」と西野氏。

「かつてドラマの『半沢直樹』に出てきたセリフとは真逆で、『手柄は全て部下のもの、失敗は全て自分のもの』が出来るタイプに向いています。部下の成功時は黒子になり、失態があれば自分がクレームの矢面に立てる素養が必要ですね」

しかし、並み居る同僚を退けてこの立場になるには、かなりの数字実績が必要になるのではないだろうか。

「実績はもちろんですが、それより重要なのは周囲からの評価です。例えば『後輩の指導を自分に任せてほしい』など自ら手を上げて実践していくこと。また、最近は360度評価などもありますから、後輩のクレーム処理なども積極的に手伝い、頼れる先輩となることです。行動でアピールし、それを周囲に評価してもらうことがポイントになります」

2.考えることが好き、言われたことだけをやりたくないなら
【企画・商品開発への道】

商品やサービスの企画・開発に携わる花形部署。ある程度の営業経験を積んだ後、比較的若手のうちに抜擢されたり、自ら手を挙げて希望を叶えるケースもある。

「ぼんやりとしたアイデアを形にしたり、マーケットの状況から仮説を立てて検証していく仕事のため、『考えることが好きな人』に向いています」

西野氏も、営業から商品開発に異動した経験がある。その時は、営業現場でヒアリングしたお客さまのニーズに応える商品を、開発部門へ自ら提案をしたことがきっかけだったという。

「ポイントは、開発サイドとコミュニケーションを取る機会を作り、商品を作る過程に積極的に携わること。日頃から、言われたことだけでなく、広い視野を持って現場のニーズをどう商品化に生かすかを考えることが近道になります」

3.前には出ずに“縁の下の力持ち”になれる人は
【管理部門への道】

人事、総務、広報など、会社全体の管理に係る部門。営業の仕事に疲れて、自ら手を挙げる人も多くいる部署ではあるが、西野氏は「異動したいと思うなら、営業である程度の実績を積んでからいくべき」と話す。

「営業の仕事は、1〜2年で成果が出るものではなく、お客さまとの信頼関係が積み上げた5〜6年後にこそ大きな成果につながるもの。2〜3年程度の営業経験しか積んでいない場合は、実績も乏しく、その後のキャリアに影響する可能性が出てきます。また、若手ではなく、マネジメント経験などを積んだミドルエイジが異動することも多くあります。もちろん、後者の方がより経営戦略に近い重要な仕事を任されるのです」

では、どのような人がこの部門へ異動する可能性があるのろうか。

「前に出る仕事ではなく、縁の下の力持ち的な仕事が好きな人に向いています。また、日頃から社内の人脈ネットワーク作りをしておくことがポイントになるでしょう。会社説明会でのプレゼン依頼や社内外の広報活動への協力要請など、他部署からの依頼があった際には、『仕事が忙しいから』と嫌がらずに積極的に手伝うことです」

4.ビジネスの第一線で活躍し続けたいなら
【スーパー営業マンへの道】

管理職につかず、高いレベルのスキルを持つ営業として活躍を続けるコース。マネジメントが苦手な人が営業として前線に立ち続けるケースもあれば、他部門を経験してから再び営業に戻ってくることも多くあるという。

「単なる古参ではなく、スーパー営業になるためには、クレーム処理などのマイナスな出来事に対する対処能力やストレス耐性、そして、足を止めない行動力が必要です。人から好かれる明朗さを失わず、目標に対する逆算思考を持って計画的に行動し続けることができる人は、管理職に就かなくてもスーパー営業としての地位を確立できるはずです」

営業は、多様な学びを得られる仕事。
「ベストジョブインタビュー」で自分を磨こう

新卒から営業を担当し、商品企画に携わった後、営業・経営戦略立案を経験してから独立起業に至っている西野氏。自身も、営業経験を上手く活かしながら、キャリアを歩んできたビジネスパーソンの一人である。そんな理想のキャリアを磨いていくために西野氏がオススメするのは「トップビジネスパーソンへのインタビュー」だという。

マーキュリッチ西野氏

「私が営業マンだった頃は、営業成績でMVPを獲得している先輩に直接コンタクトを取って、自分の勉強のためにインタビューを続けていました。おかげで、どんなやり方・考え方が営業には必要なのかが次第に見えてきましたね。単に飲みに行くのではなく、自分の知りたいことを明確に設定し、お酒は抜きでしっかり語ってもらうことが大事です。私の場合は、『あなたの営業人生におけるベストジョブは?』という質問を必ずしていました」

結果的にこのインタビューは、成果につながるヒントをもらえるだけでなく、今後自分がどう生きたいか、どんなキャリアを築いていきたいか考えるうえでも非常に役立ったそうだ。

これからのキャリアがうまく思い描けず不安を感じている営業マンも、多くの人に出会う機会がある営業職の特性を生かせば、インタビューのチャンスはたくさんあるはず。今後のキャリアのためにも「ベストジョブインタビュー」にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

営業職は、さまざまな仕事の場面を学びに変えられる職種。自らそれができるかどうかによって、やがて実績や評価の差が現れ、社内におけるキャリアステップも変わってくる。また、営業力を磨いておけば、転職や独立などにも大いに役立つため、その先の人生の選択肢も広がると言えそうだ。

連載第二回目以降は、実際に営業経験を活かしてキャリアを拓いてきた人たちの姿から、営業マンの“NEXTキャリア”を探っていく。

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取材・文/上野真理子  撮影/大室倫子(編集部)


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