55年間仕事を続けてきた“83歳現役セールスレディー”の助言「仕事の向き不向きで悩むのは時間の損失でしかない」
83歳の現役美容販売部員。にわかに信じられないかもしれないが、55年間化粧品の訪問販売を続け、現在でも先頭集団で走り続けている女性がいる。
年齢を感じさせない白く滑らかな肌、ピンクベージュ色の柔らかな髪。化粧品の製造・販売を手掛けるポーラのセールスレディーとして登録をした入社8年後の1967年に月間売上100万円達成第1号となり、さらにその6年後には累計売上1億円達成第1号となったという伝説のセールスレディーだ。
美しさとトップの座を保ち続けながら、森本早苗さんが55年にわたって仕事を続けてきた理由を探った。
From Womantype
※この記事は2015/2/3に、姉妹サイトのWomantypeに掲載された記事の転載です。
入社のきっかけは偶然
こんなに長く働くとは思ってなかった
元々は美容業界に全然興味がなく、ポーラに入ろうなんてまったく思っていなかったのです。たまたま水天宮さんにお参りした帰りがけにポーラの求人募集のチラシを見て、何となくそのままオフィスに行ってみました。
小さなオフィスをのぞくと人が大勢いまして、そこに各社員の売上グラフがありました。数字で競争するだなんて面白そうだし、給与は出来高歩合と聞き、いいなあと思いました。
でも最初のころは、ここまで長く働くとは想像していませんでした。入社したときに「世界一の保険セールスマン」と言われた原一平さんという方のお話を聞く機会があり、「だったら私は化粧品で日本一を目指そうかな」と微かに思いはしましたが、仕事を始めた最初のきっかけなんてそんなものですね。
それ以来、とにかく仕事に没頭してきました。私にとって仕事とプライベートの時間は分かれていません。ですから、お客さまを回っている合間に銀座のブティックで洋服の取り置きを頼んだり、面白そうな美術展に立ち寄ったりすることもあれば、銀座の宝くじ売り場の販売員の女性に「売り場の窓からはお顔しか見えませんから、そのお顔をもっと綺麗にしましょうよ」と声を掛け、購入につなげたこともあります。
入社3年後に結婚して、その後2人の子どもを産みましたが、その時も病院で周りの人にセールストークをしていましたし、出産後も1カ月で床上げして、子どもを抱えながら「かわいいでしょ?」とお客さまを回っていました。その気になれば、いつでもどこでも仕事はできるわけです。
家事をしながらプロの仕事はできない
“プロの仕事”ができる体制を整えた
ただ、やはり家のことをしながら仕事で成果を上げ続けるのは難しいものです。だからといって、プライベートと仕事の境がなく、働くことが当たり前になっていた私にとって仕事を辞めるという選択肢はなかった。周囲には結婚や出産を経ても働き続けている人がほとんどでしたしね。
ですから、私は住み込みのお手伝いさんをお願いして、家事と子どもの面倒を見てもらうようにしました。本当にプロを目指していくのであれば、プロの仕事をするための体制を作ることが必要と感じ、私はとにかく時間を無駄なく使うことを心掛けてきたのです。
仕事中も、例えば訪問販売の商品が完売して事務所に補充に帰るときは、電話を一本入れて商品をポストの中に入れておいてもらいます。事務所で無駄なおしゃべりをして時間を浪費しないためです。営業中にのどが乾いても、喫茶店には入らず自販機の飲み物で済ませます。
そして、お客さまの時間も同じく大切なものです。私のお客さまはお年を召した方が多く、夫に先立たれて一人暮らしをしている女性も少なくありません。私とのお話を楽しんでくださる方もいますが、1件の滞在時間は45分までと決めてご自宅に長居しないということを肝に命じています。
どんなに盛り上がって相手が楽しそうに見えても、私が時間を割いてもらっていることに変わりはないからです。そしてその限られた時間で、お客さまにお化粧をして差し上げ、綺麗になっていただく。身だしなみを少し整えれば、たとえ予定がなくても、誰かに会いたくなったり、外に出かけたくなったり、行動的になれるものです。
そして綺麗になって喜んでいるお客さまの顔を見ることが私のモチベーションとなっているのです。訪問販売は高齢化社会の今だからこそ必要だと思っています。
向き不向きで悩む前に
会社を好きになることが大切
ここまで仕事に没頭し、成果を上げ続けてこられたのは、私がこの仕事に向いているからだと思われることがあります。後輩からも「私は今の仕事に向いているのでしょうか?」という質問をよく受けますし、適性を気にする人が多いですが、悩むほど時間を損失するとしか思えません。
「向いているかどうか」を気にするよりも、「今の仕事に合わせていく」「今の職場のやり方により添っていく」という考え方に切り替えた方が賢明です。
いったんその世界に飛び込んだら、まずはその世界のやり方で頑張ってみるべき。向いていないと相談してきた後輩が一生懸命仕事に取り組んだ結果、成果を上げられるようになってやりがいを見出せるようになった姿を私はたくさん見てきました。
頑張ってもいないのに、その仕事の向き不向きは判断できないのではないでしょうか。
そしてそのためには、自分の会社をもっと信じなければ駄目です。「他にもっといい仕事はないかな」と思いながら働いている人が多いように感じますが、「仕方がないから今の会社にいる」のではなく、自分の会社を好きになり信用することが大切。それができなくては、成果を上げることも、仕事にやりがいを見出すこともできません。
なぜこの年になってまで働き続けるのかとよく聞かれますが、そもそも仕事を続ける・続けないを考えたことがありません。仕事をすることは私の人生であり、生活の一部。私にとって、仕事は自分の人生から切り離せないものなんです。今ほどの売上が出せなくなったとしても、きっと生涯現役で仕事を続けていくでしょうね。
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取材・文/柏木智帆 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)
※こちらの記事は姉妹サイト『Womantype』より転載しております>>元記事はこちら
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