セシルマクビーのカリスマ店員からプルデンシャル生命のトップ営業マンへ。異色の経歴を持つ男が明かす“ダントツで売れる人”になる秘訣
レディースファッションブランド『CECIL McBEE(以下、セシルマクビー)』のカリスマ販売員で、ファッション雑誌『men’s egg』のモデル。そこから外資系金融機関であるプルデンシャル生命に転職し、トップクラスの売上実績を誇る異色の営業マン、小川泰紀氏。
同じ“売る仕事”とはいえ、アパレル販売員と保険の営業マンは全くの畑違い。客層も服装も仕事の仕方も、何もかもが異なる。小川氏の稀有なキャリアから“どんな環境でも売る人としてトップになるためのヒント”を探るべく話を聞いた。
大好きな渋谷で、ナンバー1になりたかった
小川氏のキャリアは新卒で入社したセシルマクビーから始まる。若い女性に人気のレディースファッションブランドで、当時販売員は全員女性。なぜ男性が? と首を傾げたくなるが、選んだ理由は実にシンプルだ。
「とにかくどこかの分野でナンバー1になりたかったんです。大好きな渋谷の街で一番といえば『渋谷109(マルキュー)』。だったらマルキューで一番の売上を誇るセシルマクビーで働いて活躍すれば、『渋谷でナンバー1の男になった』と言えるのではないかと思いました」
宣言どおり、入社後には過去に例のない男性販売員の先駆けとなり、担当顧客数は店舗の誰よりも多かった。
トップ販売員の仲間入りを果たした小川氏に、ある時プルデンシャル生命の担当営業からスカウトの声がかかる。当時24歳、支社最年少だった。
「そこで転職を決めた一番の理由は、自分の可能性に挑戦してみたいと強く思ったこと。僕の担当営業はピシッとしたスーツを着て、いい時計にいい靴を履いて、とにかくカッコよかった。彼が仕事を本気で誇りに思い楽しんでいる姿を見て、自分もやってみたいと思うようになりました。次は営業の仕事で、人生をガラッと変えるような挑戦をしてみたかったんです」
何もできない悔しさが原動力に。人生を変えた2年間
営業職にジョブチェンジするにあたり、長髪を切り、慣れないスーツに身を包んで見た目も変えた。しかし入社直後は保険の知識もなく、レディースブランドのアパレル販売員かつモデルという異色の経歴ゆえに、チャラチャラするなとお客さまに馬鹿にされることもあったという。前職と同じくがむしゃらに働いても、入社したばかりの頃は思うように結果がついてこなかった。
「友達は多い方だったので、僕が保険の重要性を伝えれば全員契約してくれると思っていました。しかし話を聞いてくれるどころか、連絡は返ってこないし、待ち合わせには来ないし……。今では笑い話ですが、当時は誰も僕を友達と思っていなかったんだとか、モデルだから付き合ってくれていただけなのかと、かなり落ち込みましたね」
だがその悔しさが、負けず嫌いの小川氏のバネとなった。
「本当に悔しかったから、誰よりも努力して結果を出してやろうと思い、そこから2年間は修行期間と決めました。毎日5時に起きて寝ても覚めても仕事のことを考えていて。家も支社の目の前に引っ越し、あえて高い家賃の家を借りて自分を追い込みました。僕は異業種からの転職だし、勉強だって全然できない。だからそのくらいやらないと、結果を残せない。弱い自分に勝つしかないので、そこはもう気力だけで乗り切りましたね。とにかくたくさんのお客さまに会って、勉強を重ねる日々でした」
「BtoCよりBtoF」! セシルマクビー時代の経験が生んだ“フレンドリー営業”のスキル
「これまで断られた方も含め、お客さまが僕をここまで成長させてくれた」と話す通り、その2年目が終わるころには、4000人近くいる同社のライフプランナーの中で個人保険部門の営業成績5位に輝き、翌年にも7位の好業績を収めた。その営業戦略には、前職の経験が活きている。
「僕がセシルマクビーで他の販売員より洋服を売ることができたのは、『小川泰紀から買いたい』と思ってくれるお客さまがいたからです。そういうファンマーケティングが保険の営業でもできるんじゃないかと思って。人として信頼してもらい、ファンになってもらうための行動を考えました。挨拶をする、時間を守るなど当たり前のことは絶対に忘れない。その他にも初見でお会いした方には必ずお礼の葉書を書いたり、一緒に写真を撮って送ることで信頼を積み重ねていきます。時には一緒にご飯に行ったり、誕生日のお祝いしたりすることも。BtoCの営業というよりは、『B to Friend』とか『B to Family』といった“BtoF”営業という感覚です。もちろんそこには保険のプロとしての深く広い専門知識は前提となります」
顧客と仲良くなる営業マンは珍しくはないが、「売る」というミッションがあるゆえに、対等な関係性を築くのは難しい。小川氏の営業スタイルのポイントは、ただ仲良くなるだけでなく「言いにくいことも伝える」という点にある。
「例えば遅刻してきた人がいたら、『遅刻するとあなたが損をするし、あなたを紹介してくれた方も傷つく。人生を損してほしくないから、今度から気を付けた方がいいですよ』というように、しっかりと伝えてあげること。それでもその方が変わらなければ、『僕では役に立てないので』と、他の営業を紹介することもありますよ。相手に合わせる営業は長く持たない。僕はお客さまと対等な立場で、最高の仕事をしたいんです」
一件でも多く売りたいのが、営業マンとしての性。目の前の見込み客を自ら断るのは、なかなかできることではない。だが小川氏は「全てはお客さまのためだから」と話してくれた。
楽しそうにお客さまの話をする彼の姿は、ピカピカに磨かれた爪に、ブランド物の小物。販売員時代と見た目の雰囲気は異なるが、ファッションへのこだわりも随所に感じられる。
「名刺入れや時計、手帳など、小物は全部青でそろえています。他のライフプランナーと比べたら派手な方ですが、『青の人』とか『アパレルでモデルをやっていた人』みたいに、分かりやすく覚えてもらえるので、お客さまから他のお客さまを紹介していただくことも増えました」
原動力は「かっこいい男になりたい」という素直な欲
転職して4年。右肩上がりで成績を伸ばし、年収は前職よりずっと増えた。これほどの成果を出している小川氏だが、本人は至って謙虚だ。
「よく『すごいね』と言われますけど、自分には特に際立った部分がある訳ではないと思っています。弱い自分とどれだけ自問自答して、言い訳せずにコツコツやれるか。成果を出す方法って、それしかないと思うんですよね」
どんな環境に身を置いても、地道な努力を重ねられる。その背景にあるのは、「かっこいい男になりたい」という自分の根源にある欲だ。
「僕は欲の塊だと思うんですよ。あれがしたい、これが欲しい、こうなりたいっていう欲がたくさんある。ナンバー1になりたいし、目立ちたいし、人から頼られるかっこいい男になりたい。自分の欲に素直になることが、僕にとってのモチベーションなんです」
まるで少年のように目を輝かせながら、自分の夢を語る小川氏の今の目標は、プルデンシャル生命で営業成績1位になること。それは言い換えれば、どれだけ多くのお客さまの役に立てたかということだ。
セシルマクビー時代も今も、なりたい姿は常にナンバー1。ブレない欲を原動力に、努力を重ね、実績を残す。どこでもトップになれる秘訣は、「なりたい自分を目指す」というシンプルなものだった。
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取材・文/天野夏海 撮影/桑原美樹
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