キャリア Vol.509

「そのうち辞めるから」で本当にいいの? “両立不安な営業女子”がキャリアチェンジに成功した理由/Retty株式会社 小山由香理さん

アノ人もこの人も「営業」を経験したから今がある!
営業のNEXTキャリア図鑑
新卒で入社した今の会社。同期のほとんどが営業職。「まずは現場を知りなさい」と営業に配属されたけど、このまま営業をやっていて、自分はこの先どうなるんだろう……? 管理職や経営者のポストはごくわずかしかないけれど、仲間の営業マンたちはどこに向かっていくんだろう……? 未来に不安を感じている若手営業マンは多いだろう。そこで本連載では、営業経験者たちへのインタビューを通じ、「営業マンのネクストキャリア」の可能性を探っていく。多種多様なキャリアメイクをしてきた先輩たちの姿から、自分の「なりたい姿」をイメージしてみよう

この先もずっと、営業の仕事を続けられるのか。

いずれは結婚や出産、子育てを望む女性であれば、きっと一度は考えたことがあるだろう。女性活躍や働き方改革を受け、ライフステージが変わっても活躍する女性営業の事例は出てきているものの、商材によっては継続が難しいこともある。

Retty株式会社で営業職として活躍していた小山由香理さんもその一人だ。グルメサービス『Retty』の営業先は飲食店。商談の主な時間帯はランチタイム後から夜の営業スタートまで。子供のお迎えを考えると、営業を続けることは困難だった。

結果、彼女は営業支援のポジションで産育休から復帰。仕事も働き方も大きく変わったにも関わらず、2期連続で社内表彰を受賞するほどの活躍を見せている。彼女がポジションを変えられたのも、今成果を出せているのも、営業職としての経験あってこそだ。

<a href='https://corp.retty.me/' rel='noopener' target='_blank'>Retty株式会社</a> 飲食支援事業本部 営業企画グループ 小山 由香理さん

Retty株式会社 飲食支援事業本部 営業企画グループ 小山 由香理さん

株式会社サイバーエージェントで営業アシスタントとして勤務したのち、株式会社リクルートに転職。ホットペッパーグルメの営業として約2年間実績を積む。家庭の事情で退職後、Web制作会社の進行管理を経て、2015年にRetty株式会社へ転職。飲食店への営業部門の立ち上げに携わる。16年3月に第一子を出産。17年4月に育休から復帰し、営業支援業務に従事。復帰後に、四半期ごとに「行動指針」にちなんで活躍した社員に贈られる『All done賞』『Ownership賞』を2期連続受賞

「そのうち出産したら辞めるし、まぁいいや」は自分らしくないと気付いた

小山さんが営業職に興味を持ったのは、サイバーエージェントで営業アシスタントをしていたときのこと。「営業マンを見ていて、私も結構売れるかもって思った」と笑って話す。こうして『ホットペッパーグルメ』の営業としてリクルートに転職した。2年間の営業時代を「何度も表彰してもらい、全国準MVPをいただいたときに、やりきった感があった」と振り返る。

「そんな折に家庭の事情もあって、Web制作会社に転職したんです。PM(プロジェクトマネージャー)としてやりがいはあるものの、自分が何か会社を動かしているとか売上に貢献しているというバリバリ感はなく……。そのうち出産したら辞める可能性もあるし、まぁいいやと思っていました(笑)。 そうしたら先にRettyに転職して働いていた先輩から、『うちで営業やらない?』とオフィス見学に誘われて。行ってみたら開発と営業の距離がめちゃくちゃ近くて、お互いが意見を言い合っていたんですよね。それでやっぱり、私はバリバリ働きたいんだって気持ちに嘘はつけないと思い、転職を決めました」

Retty小山さん

こうして飲食店営業部門の立ち上げ時期にRettyに入社。試行錯誤を重ねながら、飛び込みで飲食店への営業周りをする日々を過ごしていた。

「入社前から出産したい意思は伝えていた」という小山さんが妊娠をしたのは、入社半年後のこと。妊娠中の体調が良好だったこともあり、産休に入るギリギリまで営業を続け、男の子を出産した。育休中に会社と復帰後のキャリアについて話し合い、翌年の4月には営業支援の企画部署へ。

「基本的にはお店からの依頼に対応するチームですが、社内の営業のフォローもやっています。仕事は幅広くて、クライアント獲得支援のための企画や、お店が使う管理画面の改善といった商品企画にも携わっています。“営業にまつわる裏方全般”という感じですね」

“一番になりたい欲”のベクトルが「会社のため」に向いた

復帰してもうすぐ1年。新たなクライアントフォロー施策の実施や、率先して対応する人がいなかった仕事を巻き取ったことが評価され、復帰後には2期連続で表彰を受賞。裏方とはいえ、成果にこだわるマインドは営業時代から変わらない。

「小さい時から“一番になりたい欲”がいつでもあるんです。復帰後に一番になる方法を考えたら、手の付いていない仕事や、皆がやりたがらない仕事をやるのが近道。私は復帰した時、『一番になりたいなら会社のために頑張ろう』って思ったんですよ。復帰をするために自分から会社に視野を広げた感じですね。 視座を高く持て、というのは産休前から言われていましたし、私も気付けば社内では結構古いメンバー。だから周りの人のためだけでも、自分のためだけでもなく、会社のために頑張らないと!という気持ちがありました」

Retty小山さん

子育てを理由に責任のある仕事を任せてもらえない。そんな悩みを抱えるワーキングマザーは多いもの。だが小山さんは「やりがいもあるし、楽しい」と充実した様子だ。納得感を持って働けている理由は、彼女自身の周囲への働きかけにある。

「Rettyで育休を取得して復帰した女性は私が初めてですし、子育てと両立している事例がまだ多くないんです。どのくらい仕事を任せていいのかが分からないから、最初はとても気を遣われていました。でも私はバリバリやりたいから、『仕事をください』って自分からしつこく言って(笑)。そうして仕事を取っていくうちに、自分がどのくらい仕事ができるのかが分かったし、周りも『任せていいんだな』という空気に変わってきました」

今は朝9時半から17時までの勤務。働く時間が限られる分、「復帰直後はメンバーを育てることを考えた」という。仕事を手伝ってほしいとメンバー一人一人に伝え、自らエクセル教室を開き、営業トークの流れを教えた。今では「自分の右腕と言ったらおこがましいですが、右腕以上に頑張ってくれるメンバーがたくさんいるから仕事がサクサク進む」という。時短勤務の人の仕事のしわ寄せがくる、あの人だけ早く帰ってずるい。そんな不満がメンバーから上がることがない理由を、小山さんはこう話す。

「独特のマネジメントって言われるんですけど、私はメンバーとすごく仲がいいんですよ。あまり先輩・後輩っていう感じじゃないんです。実は1つ心がけていることがあって、それはどんなに忙しくても「ちょっと待って」と言わないで話を聞くこと。それによって接しやすいとか話しかけやすいとか思ってくれてると思います。それに私が両立で悩んだり疲れたりすることが全くないのは、メンバーに恵まれているおかげ。だから、表彰の時は絶対にメンバーの名前を出すし、『〇〇ちゃんのおかげだよ』と必ず感謝を伝えています。たくさん褒めて、感謝を伝えて、たまに飲み会をおごったりもして(笑)」

“両立不安な営業女子”のNextキャリアのカギは「成果」と「課題発見力」

ライフステージの変化への不安は、営業職の女性に付き物だ。前向きに仕事を楽しむ小山さんも、育休中は退職を考えたことがあった。復帰した今、「辞めなくてよかったと心底思う」と話す。

「育休中に会社を辞めちゃったママ友がいるんですけど、また働きたいと思っても子どもを抱えての再就職はものすごく難しい。だから絶対に復帰はした方がいいし、両立が難しいかどうかは復帰した後に考えればいいと思います。それに私は両立したことで、子どもとの関係性がすごく良くなったんです。私の息子はめちゃくちゃ手のかかる子で、24時間ずっと一緒にいたら気が狂っていたかもしれない(笑)。今は1日で触れ合える時間が短いからこそ、より深い愛情を持って接することができています。会社が育休制度を整えようとしていた背景もあって、人事が親身になって復帰を応援してくれたことも大きかったですね。制度が整ってないからこそ自由で、自分が実験台になって働き方をつくっていける。もしかしたらうちみたいな規模のベンチャー企業の方が両立しやすいのかもしれないです」

Retty小山さん

そうはいっても、復帰の際に自分の希望の働き方を会社に相談ができ、それを応援してもらうためには産育休以前の実績が重要だ。特に営業職の場合はこれまでの数字が物をいう。だが働き方を変えるためのポイントは、成果だけではない。

「日々の営業で気付いた課題の解決と合わせて、そのポジションを希望する理由を伝える。そうすれば異動できる可能性は高いと思います。将来的に営業のまま子育てと両立するのが難しそうなら、まずは目の前の営業を頑張って成果を出す。そして課題に目を向ける。営業を通じて課題を常に貯めていく姿勢が大事だと思います」

営業の次のキャリアとして、小山さんのような営業支援の仕事を望む女性は少なくない。このポジションで仕事をする上でも、課題意識は不可欠だ。

「売った経験がないと、商品が売れない理由はただの仮説でしかありません。売る中で感じていた課題があったからこそ、商品の改善提案ができます。自分が売ることで商品への理解が深まるし、クライアントのニーズも分かる。この2つの差分を間近で感じられたことが今生きていて、私の場合は営業と開発の橋渡しができるんですよ。営業出身だからこそ開発の人にも営業の人にも、それぞれを理解して事情をちゃんと伝えられます」

「商品のここがイケてない」「クライアントフォローが甘い」「こうしたらもっと売れるのに」。そんな不満を課題として昇華し、解決策を考えてみる。そんな意識を持って日々の営業活動をすることが、「このまま営業の仕事を続けられるのかな……」という不安の解消につながる。「スピード感を持って仕事ができるように、もう一段階キャリアアップして、自分で意思決定ができるようになりたい」。そう話す元営業・小山さんの目は輝いていた。これからの働き方に悩む営業職女性に、ぜひ参考にしてほしい。

取材・文/天野夏海 撮影/大室倫子(編集部)


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