『egg』モデル→ジャングルクルーズ船長→飲食店キッチン→トップ営業マン→Jazzバー経営。全ての原動力は「自分の可能性に興味がありすぎたから」
営業マンが離職する理由としてよく聞くのが「売り上げが上がらず、『営業』がつらい」ということ。そんな営業を楽しんでいない、営業を嫌がっている営業マンを「もったいないね」と一笑に付す人物がいる。
言葉の主はJAZZ喫茶&JAZZBAR『ROLLINS』マスターの近藤優氏。彼はこれまで、雑誌『egg』『Popteen』のモデル、東京ディズニーランドのジャングルクルーズの船長、JAZZバーのサブマスター・ダイニングバーキッチン、IT企業のトップ営業マンなど、多岐に渡る職業で活躍してきた。
なぜこんな変わったキャリアを歩んできたのだろう。その理由を彼に聞くと、「人一倍、自分の可能性に興味があるから」だという。
彼の営業マンとしてのキャリアにスポットを当てて、その言葉の真意を紐解いていく。
バイトの先輩の「お告げ」で営業に目覚める
近藤優氏が営業マンになったのは26歳の頃、きっかけはそれまでのアルバイト先だったコールセンターの先輩からの一言だった。
「今までそんなに親しくもなかったんですが、急に『伝えたいことがあるので飲みに行きませんか』と誘われて。何かと思ったら『近藤君、あなたは絶対に営業をやるべきだ!トップ営業マンになれるはずだ!』と力説されたんです」
周囲から「営業向きだ」と常日頃から言われていた近藤氏。人生経験が豊富な、当時50歳を超えていたその先輩の一言に背中を押され、営業への道を歩みだした。
最初に入社したのは、店舗の窓に貼る宣伝用のフィルムを販売する会社。ここでの飛び込み営業を通じて、近藤氏は手応えを感じたという。
「売れるのが楽しい。しかしそれよりも、人と話すのが楽しくてたまらないんです。ああ、僕は営業に向いているんだ、営業の“神の子”なのかもしれない、とそのとき思いました」
その後、活躍のフィールドをGMOソリューションパートナーに移した近藤氏。当時の同社はバリバリの営業会社。そこで彼は営業マンとしてさらに鍛え上げられる。
「その会社ではECサイトのパッケージを自営業者や企業向けに販売していました。社内の営業マンには電話でクロージングまで完結させる人も多く、そんな周囲の環境に感化されて、自分の営業スキルがかなり磨かれた期間でした」
喉の奥から営業トークが「出してくれ」と叫ぶ
現在でも営業マン時代のことを嬉々として語る近藤氏。彼の営業マン人生は万事うまく行っていたように見えるが、それは挫折を知ったからだと近藤氏は言う。
「ある月末のこと、あと1件の契約が決まれば、全グループの達成になるということがありました。その雌雄を決する1件が自分の案件だったんです」
行く前から受注の見込みが低いところだとは分かっていた。戦地に向かう近藤氏の足取りは重く、粘りに粘ったものの、契約は取れなかった。
「会社への報告の決心が付かず、電話を掛けては切りを何度も繰り返していました。腹を決め、会社に報告ができたのは、商談が終わってから40分後のことでした」
震える足で帰社した近藤氏を待っていたのは社長だった。厳しく叱咤されると覚悟していた近藤氏。しかし、社長の口から出たのは意外な一言だったという。
「社長に聞かれたのは『お前はGMOの社員として最大限やり切ったのか?』ということ。『やり切りました』と答えると『だったらしょうがない。次は頑張れよ』と怒られずに終わったんです」
達成できなかった悔しさと、社長の温情に触れた近藤氏。気付くと、頬を涙が伝っていた。
「それからは、ネガティブな報告だけでは終わらないように一回一回の商談に全力で取り組む、という考えが仕事の根底にできました。例えば、『A社はダメでした』とだけ報告したら怒られるに決まっている。だから『A社はダメでした、でも、B社は取れました!』と報告できるようにしないと。午前中の訪問案件で契約が取れなかったら、午後は契約取らないと帰社できないという強い意識で毎日臨んでいましたね」
営業へのモチベーションがより高まった近藤氏。その後、入社2年目、28歳で同社のバックヤード部隊だったコンサルティング部のマネージャーに上り詰めた。その後に移籍したDYMやJ・GripでもSEOという無形財の販売において、在籍した期間中のほとんどの月で達成。トップクラスの成績を常に出し続けた。
「とにかく営業が楽しくて楽しくて仕方がなかった。特に、相手側がたくさん出てくる商談は、ゾクゾクするほどでしたね。そんなときは営業トークが喉の奥から歯を叩き『早く出してくれ!』と叫んでいるような気さえしました」
そんな生粋の営業マンだった近藤氏は、昔から通っていた喫茶店のマスターの引退に伴い、譲り受ける形でJazzバーのオーナーとなった。
「特にお店がやりたいと思っていたわけじゃないんです。でも、これまでやっていた営業は心のどこかに『他人が作った商品』という気持ちがあったんです。自分が自信ある料理やドリンクだけを売る。そして、売ったものによって幸せになったお客さんの表情を目の前で見れたらどんなに楽しいだろうって。結局僕がやってることって、今も営業の延長線上なのかもしれない」
ポジティブな“かもしれない”がビジネスマン人生を豊かにする
せっかくなので、そんな近藤氏に営業マンの悩みを解決するようなドリンクをオーダーした。すると出てきたのは、クローブの煙で軽く燻したロックグラスで、ピート香の強いラフロイグ10年を楽しむオリジナルカクテル『King of Sales』。この取材のために作ってくれた逸品だ。
「グラスに残る煙の香りとラフロイグの持つスモーキーな香り。ウイスキーの高いアルコール度数も相まってかなりパンチがあるので、悩みもガツンと吹っ飛ぶはず。これを飲んだ次の日からは前向きに営業に臨めると思います(笑)」
最後に、近藤氏に悩める営業マンへのメッセージをもらった。
「飲みに来る若い営業マンのお客さんや、うちに営業に来る人を見ても、営業を楽しんでいる人が少ないような気がします。僕が営業マンとして活躍できたのは『自分の可能性に興味がありすぎたから』だと思っています。達成しても、『僕はまだ上にいける“かもしれない”』という気持ちを常に持っていました」
「だから試したくなるし、だから楽しめたんです」と、近藤氏は続ける。
「そのために、営業マン時代はネットで営業について調べたり、営業本を読んだりと、人知れず勉強もしました。でも、それすらもワクワクしていた。とにかく営業は楽しんだもの勝ちなんですよ。まずは、自分の可能性を勝手に決め付けないで、もっと売れる“かもしれない”という楽しむ気持ちを持って仕事に向き合ってほしいですね」
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取材・文/佐藤健太(編集部) 撮影/柴田ひろあき
・ACCESS:神奈川県横浜市青葉区美しが丘1-12-2 田園都市線たまプラーザ駅より徒歩5分
・電話番号:045-909-6099
・Lunch(月・木・土):12:00~15:00(LO 14:30)
・Bar:19:00~25:00
・お店のHP:http://www.rollins.jp/
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