トレンド Vol.542

「億り人」に憧れ、全資産200万円を仮想通貨につぎ込んだ30歳独身男の末路【マネーの失敗学】

プロがこっそり教えるお金の知恵
マネーの失敗学
将来のライフイベントを見据えると、今からお金の備えは必須――でも、すぐに給料が増えるわけじゃないし、今の仕事だっていつまで続くか分からない。そう考えると、20’s世代はお金で失敗しているヒマなんてない! そこで、マネーコンサルタントの頼藤太希さんが、若手がやりがちな「お金にまつわるしくじり」とその教訓を伝授。新時代を賢く生きるお金の知恵を伝えます!
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マネーコンサルタント/(株)Money&You代表取締役 頼藤 太希さん慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けお金の総合相談サイト「FP Cafe」、女性向けマネーメディア「Mocha」などを運営。マネーに関するコラム執筆、書籍の執筆・監修、講演など日本人のマネーリテラシー向上に努めている。著書は「つみたてNISAでお金は勝手に増えていく!」(スタンダーズ)、「やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)など多数。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)


今回、マネーコンサルタント・頼藤太希さんのもとへ相談にやってきたのは、30歳独身、某メーカーに勤める会社員B男さん。

30歳会社員、ビットコインなどの仮想通貨投資の相談

【B男さんの情報】
・30歳独身
・職業:メーカー勤務 営業職
・年収:420万円
・貯蓄:普通預金に20万円
・仮想通貨:ビットコイン40万円相当、リップル40万円相当
・50万円のマイニングマシン購入済

メガネの似合うオシャレな雰囲気のB男さんでしたが、元気が無い様子で事務所に入ってきました。相談の内容は「ビットコインなどの仮想通貨投資や資産形成法」について。

2017年は「仮想通貨元年」と言われ、仮想通貨バブルが発生し、その後崩壊。B男さんの元気のない様子を見て、その影響があるのだろうと予想しながら、早速お話を聞いてみることにしました。

今さら聞けない!? 仮想通貨(暗号通貨)についておさらい

Bitcoin

ビットコインや仮想通貨の存在を知らないという人は少ないと思いますが、本題に移る前に、簡単におさらいしておきます。

仮想通貨とは、通貨のような価値を持ったデジタルデータです。暗号技術を用いた通貨なので、「暗号通貨」とも呼ばれ、海外ではこちらの方が一般的。よく、仮想通貨とビットコインは別物であるという勘違いがありますが、ビットコインはあくまで仮想通貨の一つです。

現在仮想通貨は1500種類以上。ビットコイン以外の仮想通貨を「アルトコイン」と呼びますが、有名なのは『イーサリアム』や『リップル』といった仮想通貨です。

「億り人」になれるチャンス到来!? ほぼ全財産の貯金200万円を投資

さて、本題に戻りますが、メーカーに勤めているB男さんは全財産のほとんどである200万円の貯金を仮想通貨に投資したとのこと。200万円の内訳は、150万円を仮想通貨であるビットコインとリップルに半分ずつ、50万円はビットコインをマイニングする機械『マイニングマシン』の購入に使いました。

※マイニングとは、パソコンなどを使って、仮想通貨の取引が正しく行われているかを計算する作業です。これが速く、正確にできた人に対し、報酬として仮想通貨が支払われます。

B男さんは、なぜほぼ全財産を仮想通貨に投資してしまったのでしょう。

聞いてみたところ、仮想通貨で1億円の資産を稼いだという通称「億り人」が世にたくさん出てきたことで、自分も「ワンチャンス大儲け」できるのではないかと思ったとのことでした。

B男さんが仮想通貨に投資したタイミングは2017年12月初旬。12月はビットコインが一時250万円の値をつけるほどの勢いがあり、書店にもビットコイン関連の書籍や雑誌がたくさん出始めた時です。

ご相談時には、ビットコインの価格は100万円を切るかどうかというタイミングでした。当然ながら、B男さんの仮想通貨の資産は半分以下に。ほぼ全財産だったので、換金するにできない(したくない)状態です。

また、マイニングマシンについては、知人伝いで投資家専用のLINEグループに招待され、「このマイニングマシンを購入すれば、毎日2000円分のビットコインを作るので、1年くらいで投資額を回収できるし、ビットコインの価格上昇もあるので、ほぼリスクなしで儲かります」と言われ、購入してしまったとのことでした。

実はマイニングは、仮想通貨の報酬がある一方、作業には莫大な電気代が必要となります。日本は電気代が高く費用がかかり、得られる対価はトントンか、むしろマイナス。仮想通貨の価格が下がればマイナスはなおさらです。B男さんがこの情報を知ったのは、マイニングマシンを購入した後。その後、マイニングマシンはお荷物になってしまいました。

しくじりに学ぶ【1】リスクの高い資産運用は、余剰資金で行うのが鉄則

B男さんの“しくじり”は、自分のほぼ全財産をリスクの高い資産へと投資してしまったことです。仮想通貨は将来に期待できるとはいえ、値動きの予想は難しく、非常にギャンブル性の高い資産。大きく儲けられる可能性があるということは、大きく損をする可能性もあり、諸刃の剣というわけです。つまり、全財産を仮想通貨にしていたら、全て失う可能性が高いということ。

リスクの高い資産へ投資する割合は、総資産の1割程度を目安にすると良いでしょう。たとえば、総資産が200万円であれば、投資金額は20万円までといった具合です。

では、残った総資産の9割はどうすべきなのかというと、現金預金、定期預金、財形貯蓄、インデックス型の投資信託、iDeCo(個人型確定拠出年金)、つみたてNISA、純金積立などを活用して、安定成長・長期運用を行うと良いでしょう。総資産の9割でコツコツと安定成長を目指しているからこそ、1割で積極的な投資ができるのです。

なお、B男さんの「30歳・年収420万円で全財産が200万円」というのは少ない方なので、毎月の支出の見直しが必須でもあります。毎月の手取り収入のうち2割は、「自動的に」「強制的に」「給料が入った瞬間に」貯蓄できる仕組みを活用し、残ったお金でどうにか暮らすようにすれば、自ずと無駄遣いが減り、支出は抑えられます。毎月の貯蓄には、ここでも財形貯蓄、iDeCo、つみたてNISAなどを積極的に活用すると良いでしょう。

B男さんには、仮想通貨はこれ以上投資をしないこととし、安定成長・長期運用の資産を増やしていくために、定期預金とつみたてNISAに毎月2万円ずつ積み立てることから始めてみるようアドバイスしました。

しくじりに学ぶ【2】「絶対に儲かる投資」は存在しない

B男さんにはもう一つ“しくじり”があります。それは儲け話に目がくらみ、しっかりと理解せずにマイニングマシンを購入したこと。今回のケースは、勧誘した人は、嘘を言っているわけではなかったようですが、都合の悪い事実を隠して勧誘していました。

仮想通貨だけでなく、投資全般にいえるのですが、「絶対に儲かる方法」というものは絶対にありません。詐欺師は、「あなただけ特別」「このチャンスをつかんでほしい」などと言葉巧みにすり寄ってきますが、もしそんな方法があるのなら、自分で勝手に実践していればいいのです。

わざわざ人に教える必要もありません。あなたを勧誘した人は、勧誘することで、いくらかのマージンをもらう仕組みになっていることが大半です。特に、知らない人ばかりが集まった専用のLINEグループなどに招待された場合は要注意。こうした怪しい話には、絶対に乗らないようにしましょう。

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