キャリアVol.550

「皆一緒」の環境で20代が失うもの――新卒も一人ひとりで給与が違う時代だ【サイボウズ・メルカリ人事対談】

「一生懸命仕事をして成果を出している自分と、サボってばかりのアイツが、どうして同じ給料なの?」

普段の仕事に頑張って取り組んでいる人ほど、こんな不満を抱いたことはあるだろう。新卒を一律の条件で採用することが一般的な日本社会では、入社時点での給料が同期全員横並びであることがほとんど。入社後も、短期間の間に給与に大きな差が出ることは稀だ。

一方で、新卒採用時から各学生に応じた給与条件を提示する企業も出てきている。新卒の給与テーブルが均一でなくなるということは、個人の能力や実力がシビアに問われる時代の到来ということ。既に社会に出ているビジネスパーソンにとっても、無関係ではない。

今後こういった実力主義がスタンダードになっていくとしたら、20代の若手社員はどのような意識で仕事に向き合えばいいのだろうか。新卒社員の一律給与テーブルを廃した、メルカリとサイボウズの人事担当者に話を聞いた。

サイボウズ株式会社 事業支援本部 人事部採用担当 新卒採用チームリーダー 庭屋 一浩さん(写真右)
株式会社メルカリ PEOPLE PARTNERSグループ 奥田 綾乃さん(写真左)

「一律条件で新卒を採用しない」が話題になるのは、世界から取り残されている証拠だ

――各学生の能力やスキルに応じて条件を提示する現在の採用手法は、どのような背景から導入されたのでしょうか?

メルカリ・奥田:メルカリでは2016年卒から新卒採用を始めましたが、その時から一人一人の年収額はその都度設定していたんですよ。中途社員は能力や経験によって給料が変わって、それを承諾して入社する。それなのに「新卒だから」という理由で同じ評価をするのは不公平なんじゃないかと考えました。新卒も、中途社員と同様に、一人ひとりの能力にしっかり向き合って個別のオファーを出すべきではないかと。また、そういった考え方を改めて世の中に発信していこうということで、この人事制度に『Mergrads(メルグラッズ)』という名前をつけました。

サイボウズ・庭屋:サイボウズの場合は「市場価値で給与を決める」という考え方。特に「新卒だから」という括り方はしていなくて、社員全体への給与評価方法を新卒にも適用しています。実は、新卒社員の給料が横並びなのは日本特有の文化なんですよ。我々は世界に進出しようとしているので、一律条件で採用をやっていては海外の優秀な人を採用できないという事情もあります。

メルカリ・奥田:海外だと新卒という概念自体がないですよね。「新卒採用」という言い方があること自体、世界から取り残されているところがあるのを感じます。

――海外進出を見据える会社は今後も増えていきそうです。でも中途採用と違って、学生には「前職の実績」がありませんよね。評価はどのように行っているのでしょうか?

メルカリ・奥田:最近はインターン経験があったり、自分でビジネスやプロダクトをつくった実績のある学生も増えています。仮に未経験の方であっても、選考時に提出してもらう課題から、プロダクトを見る視点や本人の思考を評価することができます。書類選考では職種ごとに課題を提出してもらっていて、例えばプロダクトマネージャー職であれば「USでのメルカリの競合を3社ピックアップして分析してください」といった内容。書類選考・面接では一括採用よりもじっくり判断する必要があるので、かなり骨が折れるやり方ではありますけどね。

メルカリ・奥田さん

サイボウズ・庭屋:分かります……。工数自体はすごくかかるんですけど、その人の志向をじっくり判断するためには必要なことですよね。当社も書類選考の段階で「サイボウズのトピックに関することの考察」を提出してもらっていて、その回答を元に選考を進めています。

従来の採用手法は必ずしも悪ではない。一律条件で働く若手社員がすべきこと

――日本の多くの企業は新卒を同時期に、一律の条件で採用しています。こういった従来の採用手法についてはどうお考えですか?

メルカリ・奥田:新卒社員に求められる役割の一つは、会社のカルチャーをつくっていくこと。そういう意味では、効果的な部分もあると思います。新卒一律条件の会社に新卒で入社することも、同期が同じスタートラインに立っているという安心感もありますよね。ただ、それでも全てが“皆一緒”というのは少し違和感があります。それぞれの個性を活かすからこそ活躍できるはずなのに、「どうせ同じだからいいや」という逃げ道になってしまう可能性があります。

サイボウズ・庭屋:一律条件で採用して育成をすることで、安心してスキルを身に付けられるというメリットはあると思います。実際、成長する環境を用意してもらえる安心感があるから日本企業に務めたいと、中国の学生から言われたこともありますよ。

メルカリ・奥田:内定が出てから入社までの期間の過ごし方も変わってくると思うんですよ。自分の能力に対して評価を受けると、入社までの行動が自分の価値をつくっていくという意識が生まれるのかなと。学生時代の一日が社会人としての未来につながっている感覚があるかどうかは、大きな違いではないでしょうか。

――若手ビジネスパーソンの中には、入社した会社で一律条件のまま過ごしている人もいます。そういう環境にいる20代の若手社員は、現状にどう向き合うべきでしょうか?

サイボウズ・庭屋:僕自身の考えとしては、入社後に一律条件のままというのは問題だと思います。努力してもしなくても一緒なのではなく、努力した人がきちんと評価されることが適切ですよね。ただ、所属年数に応じて自然と給料が上がっていくことを望んでいるのであれば、それはそれでもいいと思います。

サイボウズ・庭屋さん

メルカリ・奥田:一律であることが一様に悪ではないので、自分が満足して、モチベーションを感じながら働ける環境なのであれば、私もそれでいいと思います。でももしフラストレーションを感じているなら、原因は大きく2つ。会社の評価制度と上司とのコミュニケーションの中で納得感を得られていないことだと思います。 評価制度については会社に聞いてみればいい。上司とのコミュニケーションに問題があるのであれば、違う上司に話してみるとか、いずれにせよ自分から情報を取りに行くことが必要だと思います。そうしないと、何がおかしくて不満になっているのかを把握できません。

サイボウズ・庭屋:コミュニケーションを取ることは大事ですよね。評価されてないスキルは、もしかしたらその上司が評価したいスキルではないのかもしれない。上司や会社など、環境が変われば評価されることもあると思います。自分のことを客観的に見ることは難しいので、自分の何が評価されているのかを確認して、知ることが必要なのではないでしょうか。

――自分の価値を客観的に確認しながら働く、ということですね。

「専門性を磨く」「20代はとにかく何でもやってみる」どっちが正解?

―― 一律条件での新卒採用を廃止する企業が増えつつありますが、エンジニアをはじめとした理系学生に限定されることも多い印象です。プログラミングなどの分かりやすいスキルがない分、文系学生の評価は難しい部分もありそう。総合職の若手ビジネスパーソンが市場価値を上げるためにはどうしたらいいと思いますか?

メルカリ・奥田:確かに理系職種は比較的分かりやすく評価されますよね。ただ、全職種に共通するスキルとして、「今まで成功した経験を再現できること」が重要だと思います。さまざまな変数があるので難しいとは思いますが、同じような条件で成功の確率を上げるために、成功や失敗を振り返って糧にしていく。私の所感ですけど、チームの中で自分がどういう役割を担っていて、どういう能力があったからプロダジェクトが前に進んだのかを、客観的に判断ができることが前提になると思います。

サイボウズ・庭屋:僕は、社外でも通用するスキルを身に付けることだと思います。総合職の場合は入社前にスキルがないことも多いですから、社外でも通用するスキルを意識的に身に付けなければ、その会社でしか生きていけないということにもなりかねない。自分のやりたいことができるように、選択肢を持てる状態を作ることが大事だと思います。外で通用するスキルがなくて転職ができないという状況が一番不幸だと思いますし。

――社外でも通用する分かりやすいスキルとして、専門性を持ちたいと考える総合職の若手は少なくありません。でも一方では、「20代のうちは何でもやるべき」という意見もありますよね。お二人はどう思いますか?

メルカリ・奥田:好奇心があるのは一番大切なことだと思っています。食わず嫌いをせずにいろいろなことをやって、我を忘れて没頭してしまうようなことに出会ったら、全てを捧げればいいのではないでしょうか。

サイボウズ・庭屋:同感ですね。専門性が欲しいからって、無理にやりたくないことを深めて楽しくないスキルを身に付けるよりは、自分がやりたいと思う楽しいスキルを身に付けていく方がいい。自分がやりたいこと見つけるためであれば、いろいろやってみるというのも一つの手だと思うんです。

メルカリ・奥田:たとえ浅くても、幅広くいろいろなことをやって、その幅がすごいことになっていたら、それはそれで強みになりますよね。学生を見ていて思うことですが、プログラミングも起業も、今は始めるハードルがすごく低い時代です。やりたいことに取り組みやすい環境が揃っていますから、好奇心の赴くままに、行動に移すことが大事なのではないでしょうか。

――若手社員は、どんな方法でもいいから“自分らしい強み”を身に付けることが重要になりそうですね。ありがとうございました。

取材・文/天野夏海 撮影/大室倫子(編集部)

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