ノウハウVol.552

茂木健一郎さんが教える、「アウェーで戦い、成長できる若手人材」になるための脳の習慣

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脳科学者の茂木健一郎さんは、近著『結果を出せる人の脳の習慣』(廣済堂新書)で、「アウェーで戦える人こそが現代社会で最強」というメッセージを発信している。そこで、20’s type読者に向け、「若手ビジネスパーソンが最強になるための脳の習慣」についてレクチャーしてもらった。

脳科学者 茂木 健一郎さん

1962年、東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。その後、理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、現在はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学、大阪大学、日本女子大学等でも非常勤講師を務める。専門は脳科学および認知科学。2005年、『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。2009年、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)で第12回桑原武夫学芸賞を受賞。2006〜2010年にはNHK『プロフェショナル 仕事の流儀』でキャスターを務めた。近著に『結果を出せる人の脳の習慣』(廣済堂新書)

ビジネスパーソンにとっての「ホーム」と「アウェー」とは?

――今回の著書でキーワードになっているのが「ホーム」と「アウェー」ですが、ビジネスの現場でいうと、何がホームで何がアウェーなのでしょうか?

スポーツの世界でいうところの「ホーム&アウェー」は、シンプルですよね。ホームグラウンドでの戦いか、敵地での戦いか、という違い。これがビジネスの世界ということになると少々複雑になります。慣れ親しんだ所属企業もホームだと言えるでしょうし、入社以来続けている仕事や、その仕事を成功させるための手法やスタイルがあるのなら、それもまたホーム。

では、アウェーでの戦いとは何かと言ったら、転職することもその一つになり得るし、同じ会社にいても異動で新しい仕事と向き合うことになれば、それもアウェー戦ですよね。

それから、グローバル市場での競争においても、自分とよく似た文化・価値観の持ち主と向き合う国内事業をホームだとするならば、グローバルへの参戦は会社にとっても、個々のビジネスパーソンにとっても、アウェーでの戦いが強いられることになります。

茂木さん

――こうして改めて聞くと、日本のビジネスパーソンって、これからはアウェー戦ばかりになりそうですね。

そうなんですよ。だからこそ、変わらなければいけない。有名な企業だって大胆な変革をすることで、今という変化の時代を乗り切ろうとしています。

かつて日本一のSNSサービスを誇っていたmixiも、ゲームを軸にする事業に変化して生き抜いていますし、国際的にも家電市場でトップを競っていたパナソニックでさえ、法人向け事業に経営資源を投入して新たな時代を生き抜こうとしています。また、ガソリン車から電気自動車の時代に移行しようとしている中、これまで大きな成功を収めてきた自動車メーカー各社も、未来へ向けた変革を真剣に進めようとしていますよね。

さまざまな技術革新がビジネスチャンスを広げている一方で、あらゆる企業がアウェーでの戦いに臨まざるを得ない時代。それが今だと思うんです。

名だたる企業さえ大胆なアウェー戦術を打ち出している時代なのに、個々のビジネスパーソンが「私の仕事は○○なので」とか、「私は今までこの手法で成果を上げてきたので」と、慣れ親しんだホームでの戦い方に固執していては、生き残れるはずありません

――著書では「アウェーで戦う人の脳は成長する」と書かれていましたが、どういうことでしょうか?

難しい理屈ではありませんよ。いつも同じ環境、同じ人間関係、同じ客層、同じ手法で働いている人の脳は、そうしたホームグラウンドでの戦い方の精度や熟成度を上げていくことはできますが、変化に対応する機能を上げていくことはできません。

逆にいつもと異なる環境やお客さまと向き合い、「初めての経験」という刺激や負荷がかかった時、脳は今までにない成長をしていくことが可能になります。

茂木さん

ベンチャー企業などで、常にアウェー戦をしている人たちの脳は、おそらく大企業で「いつもの仕事」をしている人の脳よりも格段に成長する。新しいチャレンジには失敗する確率もついて回るけれど、脳の成長という面で言えば、成功・失敗にかかわらず成果を手に入れることはできます。変化の時代が本格化して、今より一層アウェーでの戦いが増えていった時、高い戦績を上げられるのはどちらなのかは、言わなくても分かりますよね。

アウェーに強い人材へと「化ける」ための習慣

――では、今いる環境自体がアウェー化していく前に、意志を持って「アウェーで戦える人材」になっていこうとした場合、どうすればよいのでしょう?

私は以前から「化ける」という言葉で表現していますが、ビジネスパーソンがアウェーで戦えるように「化ける」ためには、大きく分けて2通りあると思うんです。

一つは、当人が「今までの仕事」や「今の役割」とは異なる何かを、積極的に採り入れていく化け方。例えば今、ITエンジニアとして働いている方が、会社からの命令とは無関係に物流や営業など、社内の別の機能についても学び、そこで得た成果をホームの仕事であるプログラミングに活かしていく。そうすれば会社にも貢献できますし、自分自身の可能性を広げて「化ける」きっかけにもしていけるはずです。ホームでの戦い方を捨てるわけではなく、それとは違う戦い方にチャレンジして、脳にも刺激を与えながら本来の業務を向上していけたなら、自信もつくのではないでしょうか。

脳が「初めての経験」によって成長する、という話は先ほど言った通りなんですが、新しい挑戦をするとなれば、誰でも勇気を求められるもの。ところが、何度も新しいチャレンジを経験した脳は、挑戦することに対する恐怖心が次第に薄くなっていきます。最初から大胆に「化け」ようとしなくても、小さな挑戦を重ねることで、アウェー戦でも勇敢に戦える自分へと変化していきますよ。

茂木さん

もう一つの化け方は何かというと、「移動する」ことで化けるパターンです。今いる部門や職場環境では自分の能力を十分に活かすことができていない、という不満を抱えている人は若いビジネスパーソンにも多いでしょう。知らず知らずのうちに、ガマンをすることが仕事の一部なんだと勘違いしているのが、日本の悪しき習慣になっています。

昔のように均一的な人材が多数そろっている社内で、何年経っても変化の乏しい定型業務をコツコツこなせば評価された時代ならば、ガマンすることにも大きな意義があったかもしれません。「あの上司とは、こう付き合えばうまくいく」といったホーム戦ならではのノウハウにも高い価値があったでしょう。

でも、しつこいようですが、これからはアウェー戦だらけの時代です。ガマンなんてやめて、今までとは違う環境や人間関係が生じる場へと「移動」して、変化を迎え入れることで「化ける」方法が重要になっていくと思います。

前述したように、転職や社内異動も「移動」の一つとして有効です。そこまで大きな変化をしなくても、例えば社内では出会えないような人を見つけ出して会いに行くのも一種の「移動」といえます。

無意識のうちに、“社内の常識”が世の中の常識だと思い込んでいた人であっても、価値観や生き様の違う人物に会い、その考え方や行動パターンに触れることで、大いに刺激を受けるはずです。今まで自分が何をガマンしてきたのか、ハッキリさせてくれるような出会いもあるでしょう。その気になれば、今すぐ「化ける」ことはできるんです。

――確かにガマンを美徳とするような価値観が、日本人にはありますね。

そう思いがちですよね(笑)。江戸時代の昔から日本人はガマンをして成功してきた、というような認識を何となく持っています。

茂木さん

でも、よくよく歴史を振り返ってみてください。例えば戦国時代、例えば幕末から明治維新にかけての動き。実は日本人だって、定期的にガマンすることをやめて、新しい時代を手に入れてきたんですよ。

典型的なのが幕末の薩摩藩や長州藩の人たち、あるいは土佐の坂本龍馬です。彼らは300年近くガマンしていたあの時代の日本に登場した、ベンチャースピリットの旗頭でした。薩摩や長州の人々は鎖国ニッポンにいながら、独自に海外との接点を持つことで「このままガマンしていてはいけない」といち早く気付いた。

龍馬はといえば、まさにベンチャー企業のはしりといえる亀山社中という貿易会社を組織して、海外とのビジネスを展開しました。江戸の幕藩体制という強固なホームをものともせずに、グローバルというアウェーな存在に刺激を受けて、この国を変革したんです。ガマンせずに、挑戦し、移動して、化けた先人が日本にもいたことを、今の若い人たちに改めて気付いてほしいと思います。

――では最後に、「最強」ビジネスパーソンになるための最大のポイントを教えてください。

これからのビジネスは、誰も飛び込んだことのないブルーオーシャンに最初に飛び込んで、成果を得た者が勝ちます。氷の上で海を前にして戸惑っているペンギンたちの群れの中から、最初に海に飛び込むペンギンが登場すると、その後いっせいに皆が続いて飛び込みますよね? 皆さんには、ぜひこの「ファースト・ペンギン」になってほしい。ファースト・ペンギンが増えていけば、きっと日本も元気になる。そう信じています。

information
『結果を出せる人の脳の習慣 ―「初めて」を増やすと脳は急成長する―』(茂木健一郎・著/廣済堂出版)
『結果を出せる人の脳の習慣 ―「初めて」を増やすと脳は急成長する―』(茂木健一郎・著/廣済堂出版)
興味のもてないつまらないことを長い間ガマンしないと、結果は出せない……。そんな大きな誤解をしている人に贈る、成功志向の脳に生まれ変わるための究極メソッド。成果をあげている人は、やりたいことをしながら自分の潜在的能力を最大限に引き出す、ちょっとしたコツを知っている。今すぐ誰にでも始められるささいな習慣付けをレクチャーしてくれる、“日本を元気にしてくれる”一冊

取材・文/森川直樹 撮影/赤松洋太

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