キャリアVol.552

「聞け、時代遅れのバカ上司。時代は“共育て”一択だ」フローレンス駒崎さんが語る、男の育児が世の中に与えるインパクト

国を挙げて男性の育児参加の重要性が叫ばれ、20’s type世代の男性たちの中にも「積極的に育児に関わりたい」と考える人が増える一方、世間にはまだまだ「育児は女性がするもの」という意識を捨てられない層も存在する。

日本における男性の育休取得率が低いのも、こうした考えを持つ層が経営者や管理職に一定数いるからだろう。だが実際は、男性が育児に関わることで本人や家族、職場が得られるものはたくさんあるはずだ。そこで、自身も育児休暇を2度取得した経験を持ち、保育事業の経営者として子育て中の夫婦を数多く見てきた認定NPO法人フローレンスの代表理事である駒崎弘樹さんに、男性が育児をするメリットについて聞いてみた。

駒崎 弘樹さん
駒崎 弘樹さん
2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートする。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員を務める。一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2か月の育児休暇を取得。著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)、『働き方革命』(ちくま新書)、『社会をちょっと変えてみた』(岩波書店)など

「男も育児すべきか」なんて議論するフェーズはとっくに過ぎた

――つい先日、自民党の萩生田光一議員が「赤ちゃんに『パパとママ、どっちが好きか』と聞けば、ママがいいに決まっている」、「『男も育児だ』とか言っても、子どもにとっては迷惑かもしれない」と発言して議論を呼びました。この発言について、率直な考えをお聞かせください。

駒崎 そうですね、「政治家なんて辞めちまえ、バカ!」と思いました(笑)。保守派のオジサンによる前時代的なたわ言だなと。あれはまさに今の50~60代の典型的な考え方です。彼らは育児を完全に妻にアウトソースして、自分は仕事だけをやってきた。だから、あんな浅い育児観しか持てないんです。

でも、これから父になる世代からはそうではない。今や父親も母親も働いているのが当たり前の時代です。共働きがデフォルトなら、“共育て”も当然デフォルトになる。もはや「男性も育児参加すべきか」などと議論する段階ではなく、「男性も育児をする」という一択しかないということ。なのに「子どもはママがいいに決まっている」と言われても、「そんなわけねーだろ!」と言うしかありません。

僕がそう言い切れるのは、自分自身が2度の育児休暇を取り、普段の生活の中でもずっと子育てをしてきたからです。父親だって、自分のおっぱいをあげること以外は、母親と同じように何でも子どもにしてあげられる。オムツ替えや寝かしつけをするのに、男女の違いなんて関係ありません。授乳だって、ミルクがあれば父親で代替可能です。

そうやって父親も母親も同じように育児に関わっていれば、子どもも「パパがいい」とか「ママが好き」とか、どちらにも言ってくれます。もし本気で「赤ちゃんはママがいいに決まっている」と思っている人がいるとしたら、それは父親だから子どもが懐かないのではなく、父親が育児に関わる時間が少ないから。自分の体験からしても、「男の育児が迷惑」なんてことはありえません。

空気なんか読むな。上司が家族より大切なわけがない。

――さらに問題なのは、20代の若手が働く一般の職場にも、“萩生田的”な古い考えを持つ上司がたくさんいることです。だから「育児に積極的に関わりたい」と考える若手男性は増えても、実際に育児休暇を取得するケースは多くありません。

駒崎 はっきりさせておきたいのは、「育児休暇の取得は法令で定められた労働者の権利である」ということ。社員が育児取得を申し出たら、会社側に断る権利はありません。だから育休を取りたいなら、空気なんて読まずに「僕も取っていいですよね」と堂々と上司に言えばいいんですよ。

子どもが生まれて育児がスタートする時期は、母親にとって父親が共に育児をするビジネスパートナーになるのか、それとも時々手伝うだけのお客さんになるのかを決める重要な時期。夫婦が子育てという人生のピッグプロジェクトをやり遂げるパートナーでありたいなら、父親がこの時期に休暇を取って育児にコミットするのは当たり前です。もし父親が育児を全て母親に任せきりにするなら、その人は妻にワンオペを強いる奴隷主みたいなもの。そんな夫婦が良い関係を築けるはずがないし、夫は妻からの信頼も得られず、家庭内の空気も険悪になります。その結果、夫は家庭内で居場所をなくし、会社を出ても家に帰らない“フラリーマン”化する。あなたは本当にそんな人生を送りたいですか、ということです。

駒崎 弘樹さん

これからは人生100年時代ですから、今20代の人たちは長い人生の中で仕事や職場を何度か変えることになるでしょう。つまり現在の会社も上司も、長い人生のうちの1ページに過ぎない。それに対し、家族は一生を通してずっと関わっていく存在ですから、人生における優先順位は会社とは比較になりません。上司にどう思われようと、家族の方が大事に決まってるじゃないですか。だったら上司の考えや職場の空気がどうであれ、男性も育児休暇を取ればいいんです。

育児経験は、男たちの「段取り力」「計画力」「実行力」を向上させる

――今のお話で、男性が育児をすることは家族や夫婦の関係に非常に良い影響を与えることが分かりました。男性本人にとっても、育児をするメリットはありますか。

駒崎 もちろんです。まず、育児は仕事の役に立ちます。僕も子どもができてからは以前より早い時間に退社していますが、時間に制約がある中で仕事の質を上げるには、高い段取り力や計画力、実行力が必要です。独身の頃は、「仕事が終わらなくても残業すれば何とかなる」と考えてついダラダラしがちですが、働く時間に制限ができたことで、これらの能力がより研ぎ澄まされました。それに限られた時間で最大のパフォーマンスを発揮するには、知恵を使ってより高度な頭脳戦を繰り広げなくてはいけない。その結果、仕事人としての自分が磨かれるし、成長できます。それは本人にとって大きなメリットではないでしょうか。

仕事への影響だけではありません。子どもという自分の命より大事な存在ができることは、人生において本当にすごい出来事だと思うんです。それを体験できることは僕にとって本当に大きな喜びだし、父親になって本当によかったと感じています。僕が毎日帰宅してドアを開けるたび、子どもたちが「パパ〜!」と言って胸に飛び込んできてくれる。こんなに嬉しいことはありません。

男の育休に「NO」を出すような上司・会社にはさっさと見切りをつけていい

――育児によって男性社員の生産性や能力が向上するなら、会社や職場にとってもメリットは大きいはずですね。

駒崎 そうです。フローレンスの社員はほとんど残業をしませんが、時間内できちんと成果を出してくれるので、経営者である自分も何一つ文句はありません。定時で帰るのが当たり前の会社なので、「給与は下がっても働きやすい会社がいい」と言って、大企業から転職してきた社員もたくさんいます。

だから、世の中はとっくにそういう流れなんですよ。政治家がいる永田町こそが、実は日本で最も後進的なんです。もうすぐ元号が変わって平成も終わろうとしているのに、あそこだけがまだ昭和のまま。ビジネスの世界の方がよっぽど進化が速いのだから、あんな発言が飛び出す永田町は置いておいて、僕たちが暮らす社会が先に変わってしまえばいいんです。

駒崎 弘樹さん

もし自分の職場で男性が育児休暇を取得した前例がないなら、自分が前例になればいい。一つ前例ができれば、他の人たちも「なんだ、育休取っていいんだ」と思って、次々と後に続きますから。もし上司が育児休暇の取得を認めてくれないなら、そんな上司の元からはとっとと去ればいい。部下がどんどん辞めていくような上司は、自然に淘汰されます。今は人手不足の時代ですから、わざわざ昭和な職場を選ばなくても、20代の若手なら働く場所はいくらでも見つかるはずです。

昔は会社が社員の面倒を一生見てくれたので、会社と社員は家族や仲間のようなメンバーシップ関係で結ばれていました。でも今は終身雇用制も崩壊し、会社が社員を守ってくれる時代ではなくなった。なのに、社員が会社に忠誠を誓う必要があるんでしょうか。もちろん自分が働く会社への信頼やリスペクトは大事ですが、だからと言って会社の奴隷になる必要はありません。

だから20代の男性たちには、「空気なんて読むな、読むなら雇用契約書を読め」と言いたい(笑)。先ほども言った通り、育児休暇の取得は労働者に認められた正当な権利です。もし会社がその権利を認めないなら、Twitterで「うちの会社は育休取らせてくれなかった!」と呟いてもいい。今は個人が声を挙げる手段はいくらでもあるし、個人が会社と戦える時代です。会社に対して遠慮や萎縮をして、自分の人生を無駄にする必要はない。若い人たちには、そう伝えたいですね。

取材・文/塚田有香 撮影/大室倫子

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