若干24歳で「最高製品責任者・CPO」を務めるラブグラフ吉村創一朗に学ぶ、“決断力”のつくり方
社会人生活をスタートして3年が経つ頃。ある程度一人で仕事を進められるようになり、さまざまなシーンで「自分で決めること」を求められるようになってくる時期だろう。とはいえ、まだ「若手」の意識も残るこの年次。これからどのように決断力を鍛えていけばいいのか、悩める20’s type読者に、同年代で「決断」のプロフェッショナルとして活躍する人物を紹介しよう。
吉村創一朗さん、24歳。2015年に新卒でLINEに入社し、1年目からプロダクトの“砦”であるセキュリティ部門のプロジェクトマネジャーを務めた。現在は話題のスタートアップ企業・ラブグラフのCPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)として、同社プロダクトの全責任を背負う立場だ。同社の売り上げを前年比3倍増へと導いた、急成長の立役者でもある。
若干24歳の彼がなぜ、これほど責任重大な仕事を任され、次々と成功させられるのか。吉村さんの「意思決定力」を形作ってきた経験から、明日の仕事に生かせるエッセンスを学び取ろう。
プロダクトの全てを舵取りする新職種『CPO』って何だ?
――今、吉村さんが担当する「CPO」とはどのような仕事でしょうか?
CPOとは「チーフ・プロダクト・オフィサー」の略で、ラブグラフが持つプロダクトの全てに責任を負うポジション。テクノロジーのことも、デザインも、売り上げに関しても、会社のあらゆる意思決定を行う仕事です。簡単に言うと、ビジネスで迷った時に方角を教える“プロダクトのコンパス役”だと思っています。
――CPOを任されるようになった経緯を教えて下さい。
私は新卒でLINEに入社して、2年半はセキュリティ関連のプロジェクトを中心としたPM(プロジェクトマネジャー)を務めていました。その後、前から親交があった駒下(ラブグラフ代表取締役社長)のビジョンに共感して、2017年にラブグラフにジョインすることにしたんです。PMとしてプロダクトの改善を中心とした役割を担い、その後CPOという立場を任せてもらえるようになりました。
意思決定力を磨くには、社内で“レアキャラ”になって経験値を積め
――LINEに新卒入社してからすぐに、大きな責任を負う仕事をしていたんですね。それでも、1年目からそのポジションに就くこと自体が珍しいかと思います。
それは私が特別優秀だったということではないんですよ。とはいえ、たまたまラッキーだったというわけでもなく、常に戦略的に生きようとした結果だと思っています。
そう考えるようになったきっかけは、大学受験に失敗したこと。私は当時、第一志望の大学に行けなくて、他の大学に入学した後も引きずって落ち込んだんです(笑)。
とにかく悔しい気持ちを抱える中で、一つ考えたことがありました。それは「大学の4年間を投資に充てて、卒業してからの40年間分のキャリアを買おう」ということ。周りの大学生たちがサークルやバイトに勤しむ中で、私は彼らと違う日常を送ることで、学生活のユニークさを磨く。そうすれば、この先の仕事人生ではどこでもやっていける人になれる、と思いました。つまり、戦略的に「変な人になろう」と決意したんです(笑)。
それからは、スタートアップで活躍している人や、世の中でも“変わり者“と呼ばれる人たちの中で揉まれることを意識しながら学生時代を過ごしました。そして大学3年生の時、大企業で働く経験をしようとLINEのインターンシップに応募。その中で行われたビジネスコンテストに優勝して、そのまま入社することになったんです。
――戦略的に生きる、という意識はLINEに入社してからも続いたのでしょうか?
LINEでもその意識は変わりませんでした。会社という「社会の縮図」の中で、いかに戦略的に、“レアキャラ”になれるかを考えていましたね。ディレクター採用の新卒入社ならほとんどの人が、かっこいいプロダクトや機能の企画ディレクションに携わりたい、といった華やかな仕事に憧れると思うんです。だけど、それでは社内でプレゼンス(存在感)を発揮できません。
だから私は、最初にどんな仕事をして自分の価値を高めていこうかと考えた時に、3軸の条件を決めました。
<新卒時代の吉村さんが考えた、仕事選びの条件>
①専門性が高いこと
②難易度が高いこと
③多くの人がやりたがらないこと
とても重要だけど、難易度が高くて好んでやる人がいない、そういうプロジェクトがこなせるようになれば「あいつしかいない!」という“レアキャラ”になれる。そう考えて「この仕事をやってみたい」と手を挙げたのが、セキュリティー・認証系の企画を中心としたプロジェクトでした。
――レアキャラになることで、何を得ようと思ったんですか?
レアキャラになることで、仕事のあらゆる経験値を積むことができるんです。学生時代に思い描いていた「どこにいってもやっていける人」は、経験値がものをいうと思っていましたから。
実際に、LINEで専門性を磨いていきながらセキュリティー関連のプロダクト開発やルールづくりに携わりだすと、新卒でも徐々に社内でのプレゼンスが現れはじめました。
周りはみんな年上で、外国人の同僚ばかり。プロジェクトを進行する上では英語や韓国語でのグローバル・コミュニケーションも必要だし、政府の情報セキュリティ担当とインスタントメッセンジャーに関連する法律の施行について間接的に交渉するようなこともありました。人が少なかったこともあり、たくさんのチャンスを頂きながら、一つ一つ小さな成果を積み上げていくことを意識していたんです。
気付けば、私の担当するプロジェクトは、メンバーが20人を超える社内でもかなり大きなチームになっていたり、数ヶ月・1年がかりのようなプロジェクトを掛け持つようになっていました。
そしたら「この分野には、あいつしかいない!」と、面白いプロジェクトに自然と声がかかるようになったんです。それが私が考えた“レアキャラ”の理想形。レアで得意な分野に呼ばれるようになると、リーダーとして意思決定ができるポジションに置いてもらえるようになる。
――レアキャラになったことで得た経験が、吉村さんの「意思決定力」を鍛えたということですね。
レアキャラで重宝してもらえる立場を経験すると、考え方や人脈にオリジナリティが生まれて、全てが自分のクレジット(信用)になっていくように感じます。結果的に、それが「意思決定力」に繋がったんだと思いますね。
ぶっちゃけ、失敗してもよくない?
表も裏も、どっちも正解に変えていけば。
――とはいえ、20’s type読者が経験値を積み上げるには時間がかかると思います。今すぐに仕事上の意思決定をしなければならない時は、何に気を付けるべきですか? 正直、自分で決断していくのは、すごく怖いと思うのですが……
そりゃあ、怖いですよね! 誰だって、結果がどうなるか分からないことって怖いんです。自分が決めたことが原因で、失敗するかもしれない、会社が負債を負うかもしれない、クビになるかもしれない……と。
でも、その前に「予期する」ことは誰にでもできることだと思いますよ。ある日突然、失敗という結果が出るわけじゃなくて、何事にもそこにいたるプロセスがあるはずです。その結果に至るまでの関数を微分して常に観測していく事が大事かと。
例えば「-100」の地点が失敗だとした場合、必ずその前に、-20、-50の地点を通過するはず。その上で、通過地点にきてしまった時にどうするのかを考えることが、不安を和らげる方法だと思います。
私の場合だと、予期できることをたくさん考えておいて、常にプランB、プランC、プランDくらいまでは持っておくようにしています。細かく定点観測できるようにしたり、こうなったらこうしよう、というパターンをたくさん用意しておく。
――そうすることで、失敗を回避できると?
いえ、スタートアップにいると、予期せぬことばかり起こるんで、振り返れば失敗やミスもたくさんありますよ(笑)。どんなに準備していても、失敗することはあり得ますから。
でも私は、「まあ、失敗してもいいじゃん」くらい気楽に考えるようにしています。過去の決定は、絶対に後悔しない! くらいの気持ちで。ちゃんとやることさえやっていれば、大きな意思決定を、いかに深刻になりすぎずに、ライトに捉えていくかも大事だと思うんです。
そうすると、上手く“ポジティブ変換”ができるようになるんですよね。特に「赤と青、どっちがいいか」みたいな直感で決めなきゃいけないことは、どっちを選んでも成功だと思えるように、自分の力で変えていけばいいんだと思うようにしています。その時赤を選んだなら、赤を正解にするためのプロセスを考えればいいだけですから。
私、“ポジティブ変換”がめっちゃ得意なんで(笑)、どんなことでも自分で正解ごとにしちゃうんですよ。
だって、プロジェクトにおける自分の決断が、人生に与える影響って、微々たるものである場合が多いと思います。失敗して責任取れ! とか言われたらすっぱり辞めちゃえばいい(笑)。そのくらいライトな気持ちを保つことですね。
――吉村さんのように、自信を持って「自分で決める」コツって、他にありますか?
とにかく自分から動いてみることかな。
大海原は非常に栄養分が少なく、海の生き物は常に餌を求めて泳ぎ続けなければならない。常に動いて生きるか、動かず死を選ぶかの二社一択を迫られています。
そんな生き物たちのように、チャンスの香りがしたら、四の五の言わずにそこに食いつくしか生き残る術はないと思っていて。小さなムーブメントがなければ、何も生まれない。
動くことで餌を見つけたら、次は「もっと効率的な手段はないか?」、「より大量の餌を見つけるには?」という思考が必然的に生まれて、次のムーブメントに繋がります。そうして自分の血肉をつくっていくことが、経験値につながり、さらに決断力を鍛えるんだと思います。
仕事上で何かを決断することに、人生の失敗も成功もありません。たくさん動きまわって、自分で決めていけば人生はどんどん面白くなる。だから「決める」ということに対してそんなに、臆することはないんですよ。
取材・文/石川香苗子 撮影/大室倫子(編集部)
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