日本人は給与制度のおかしさに気付いた方がいい。24歳の起業家・ペイミー後藤道輝が予想する【給与2.0】の世界
毎月決まった日にやってくる給料日。いつもと同じ、先月分に働いた数字を見るだけ。
働き方や生き方がドラスティックに変わっている世の中なのに、日本独自の「月末締め、翌月払い」の給与制度は何十年も昔のままなのだ。
そんな古い体質にメスを入れるのが、給与即日支払いサービス『Payme』を提供する株式会社ペイミーの後藤道輝さんだ。学生時代は開発経済を専攻し、投資やベンチャーキャピタルに興味を持った。その結果たどり着いたのが、「給与の自由化」という考え方。彼の解く『給与2.0』の世界とは何か。
月末締め翌月払いは世界的に特殊なシステム。
なぜそれを黙って受け入れているのか?
いよいよ日本でも、副業やリモートワーク、フレックスタイムなど、個人に合わせた柔軟な働き方ができるようになっている。一つの会社で一生働き続けることは、もはや時代遅れだという考え方もある。
「働き方改革を背景に、これからは日本でも働くスタイルが大きく変わってきます。社会的に副業をすることが当たり前になれば、複数の企業からお金が入ってくるのも当然になりますし、『レジャーとしての労働時間の切り出し』も生まれるのではないでしょうか。
例えば都内に住んでいる人が、夏休みの期間だけ神奈川の海の家でアルバイトをして、そこで稼いだお金でサーフィンして遊んで帰るとか、普段は看護師だけど休みの日は憧れのカフェで働くとか、一度でいいからディズニーランドのキャストをやってみるとか。いわば『労働力のキッザニア化』が起こるでしょう」
複数の収入源を得ることで、食べるために働く「ライスワーク」ではなく、自分の好きなことや趣味などでお金を稼ぐ「ライフワーク」が容易にできるようになる。つまり、人生を楽しむついでにお金を稼げるということだ。
しかし懸命に働いても、翌月の給料日までお金を貰うことはできない。日本の給与システムは、世界でもまれに見る特殊な制度を採用しているからだ。
「月末締め翌月払いという仕組みは、戦後の日本が製造業を中心に発展してきたという背景があります。国や会社など“大きなもの”に逆らわない気質の日本人は、戦後70年以上も黙ってそれを受け入れてきました。日本人は受動的すぎるんです。
個人の力が強い国でそんな制度を導入したら、みんなすぐに会社を辞めてしまうでしょう。例えばアメリカでは給与は2週間に一度のチェック(小切手)払いか、当月払いが基本。給与制度一つとっても、個人と企業が対等な立場なんです」
そんな時代の変化を読み解く後藤さんが、2017年11月にリリースしたのが、給与即日支払いサービス『Payme』だ。自分がその日までに働いた給与の7割までを、アプリを通じて申請できて、最短で即日に受け取れるという。借金ではなく、あくまでも自分の給与の一部なので、後から返す必要もない。
「この先働き方が変わっていくなら、給与だって変化していかなければいけません。『Payme』で支払いまでの大きなタイムラグをなくし、給与の自由化を実現できれば、世の中のさまざまな機会損失をなくせると考えています」
どこで働き、何にお金を使ったか。
自分の“生き様”がスコア化されて信用になる
こうした給与即日払いサービスの提供だけなく、「働く」と「給与」をすべてデータ化し、若年層のキャリア形成を助ける新しい手段を考えたいと後藤さんは語る。
「中国では既に、個人データがスコアとして可視化され、交友関係や消費行動が与信項目になっています。これから先、日本でもお金にまつわるデータが個人の信用情報として蓄積されるようになるはず。ユーザーがいつどこで働き、どのくらいお金を使っているか、そうした情報がクレジットカードや不動産購入、賃貸の際の与信情報になり得るのです」
給与を中心に、生きていくことがまるごと自分の信用スコアになる。後藤さんが考える【給与2.0】の世界では、お金に関する不正やおかしな慣習も、是正されていくようになるのかもしれない。
また、後藤さんが見据える未来では、より「個人」の力や、「今まで積み重ねてきた生き様」が試されることになるという。
「今は20代の二人に一人が“貯蓄ゼロ”の時代です。つまり、若者たちはお金がない。20代後半の正社員でも、友達の結婚式ラッシュをきっかけに“パパ活”デビューする女性や、生活に困っているわけでもないのにクレジットカードの支払いに月の給与の大半を使っている大手企業の会社員もざらにいます。でも、給与を自分のタイミングで自由に使えるようになったらそうした問題を解消できると思うんですよ」
後藤さんは「お金を理由にあきらめないカルチャーを生み出すことで社会を変えて、将来はノーベル賞を獲りたい」と話す。その眼差しは、真剣そのものだった。
国や会社が自分の将来を保証してくれる、強いものにぶらさがっていればいい、という時代は終わる。自分らしい働き方を見つけていきながら、働いた対価をどのように受け取り、使うのか。一人一人が考えていきたい。
取材・文/石川香苗子 撮影/大室倫子(編集部)
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