会社に「文句を言える人」の特徴って? 元Google人事に聞く、疲れない働き方
働き方改革全盛の昨今。次々と先進的なワークスタイルを取り入れる企業が目立つ一方で、まだまだ旧態依然とした労働環境も多数実在するのが現場の実態。改革が進まない組織において、個人がそれぞれの働きやすさを獲得するには何が必要なのか? 元Googleの人材開発担当でプロノイア・グループ代表取締役、『Google流 疲れない働き方』(SBクリエイティブ)など数々の書籍を上梓するピョートル・フェリクス・グジバチさんに、「疲れない働き方」を実現するために個人でもできる対策を聞いた。
働き方改革を阻む最大の原因は、ミドルマネジメントにある
国家を挙げて進められている働き方改革。だが、その恩恵をなかなか感じられない人たちも多い。この原因について、ピョートルさんはこう指摘する。
「日本が総力を挙げて働き方改革に取り組んでいるものの、なかなか効果が見られない最大の原因は、ミドルマネジメントです。いわゆる中間管理職層の意識改革が進まない限り、真の働き方改革はなし得ません」
ピョートル氏は自著『Google流 疲れない働き方』で、疲れずに生産性を上げるには、自身の感情をマネジメントすることが重要だと説いている。例えば疲労やストレスがたまっていると、つい周囲にトゲのある対応をしてしまいがち。そんなときは「今日は疲れているから、よろしければ明日にしてもらえませんか」と断りを入れたり、時には会社を休むことも必要だとピョートルさんは主張する。
しかし、典型的な日本企業ではこうした言動はむしろ「甘え」と非難されることも。まだまだ硬直的な考えの上司や組織に対し、どうやって「疲れない働き方」を実現すれば良いのだろうか。
「働き方には、自分の力で『変えられるもの』と『変えられないもの』があります。特に大企業であればあるほど、評価基準といった制度面を個人の力で変えるのはなかなか難しい。そこに不満があるなら、早々に辞めて、別の環境に移った方が得策でしょうね。けれど、自分の時間の使い方や上司との付き合い方は、自力で十分変えられる範疇の話です。まずは上司をいかにコントロールし、変えていくかを考えてみるといいと思います」
「自己開示」で掴み取る、理想の働き方
例えば、上司との付き合い方を変えていく上で大事なのが、「自己開示」だ。
「日本人の多くは、部下が上司に物申すことを『生意気に思われる』とネガティブにとらえがち。そのせいで、上司に対して自分の本心を伝えられていない人がたくさんいます。けれど、それじゃいつまで経ってもあなた自身が望んでいることは上司に伝わらないまま。まずは自分がどんな働き方を望んでいるか。そのために組織に何を求めているのか。自分自身が明確化し、それを上司に開示することが必要です」
そうは言っても、自己開示が苦手なのが日本人の習性。相手が上司とあれば尚更だ。そこで、うまく自分の主張を相手に伝達するコツをピョートルさんに聞いてみた。
「そんな人は、上司から先に話してもらうといいでしょう。方法は簡単。上司に何か質問をすればいいんです。例えば『最近仕事で大変なことは何ですか』と尋ねれば、上司がそれについて話をしてくれるはず。そうすると、あなた自身も自分が今抱えている問題について話しやすくなる。お互いの会話が共感モードにスイッチすることで、自己開示しやすい場が形成されるのです」
むしろ要注意なのが、最初から自分の悩みや課題をつらつらと述べることだとピョートルさんは警告する。
「もともと、マネージャーの仕事の目的は問題解決です。例えばあなたが『定時までに業務が終わりません』と相談したとします。すると、上司は『じゃあ、担当業務を他の人に分配しましょう』といったアドバイスをするでしょう。けれど、本来話し合うべきはそうした表面的な解決案ではなく、あなた自身がどんな働き方をしたいかです。でも、そうした話の本質に行き着く前に、もっともらしいアドバイスをして、上司は問題解決をした気になってしまう。お互いの会話が問題解決モードに入ったら要注意。そうなると、本当に伝えたい話はなかなか聞いてもらえません」
つい億劫に思ってしまいがちな上司との面談。だが、ここでしっかりと意思疎通を図ることが、トータルで見たときに仕事の煩わしさから解放されることになる。
「例えば人が周りにいるデスクで長時間作業をするより、一定時間、周囲をシャットアウトできるような環境で仕事をした方が生産性が上がるという人は多いでしょう。どういう状態が最も集中して仕事に取り組めるかは千差万別。そのことを上司に知っておいてもらうだけでも、自分が疲れない働き方に一歩前進したと言えるのではないでしょうか」
パフォーマンスを発揮している人は、臆せず組織に文句が言える
自身のスキルアップを考えた上でも、上司への自己開示は重要な意味を持つとピョートルさんは言う。
「没頭して作業に取り組める――いわゆる“フロー状態”に入るための条件のひとつが、難易度と能力のバランスがちょうど良くとれた仕事をすることです。簡単すぎると退屈だし、難しすぎると心理的負担が大きい。ちょっとストレッチすることで届くくらいのレベルの仕事が、個人のパフォーマンスを大きく引きのばし、成長につながるのです」
身の丈より少し高めの仕事にうまくアサインしてもらうには、上司が自身のレベルを適切に把握していることが不可欠だ。
「その意味でも、やはり自己開示は大事なんですよね。成果物が明確な仕事なのであれば、自分のスキルレベルも可視化しやすいはず。上司と自身のステージを握り合った上で建設的な会話をすることが、自分のパフォーマンスを上げるきっかけになるし、結果的にそれが疲れにくい働き方にもつながってくるのです」
最後に、自分の働き方をコントロールするために必要な要素について聞いた。ピョートルさんいわく、重要なのはパフォーマンスを上げることだという。
「パフォーマンスを出している人間には文句を言う権利が与えられる。それが組織というものです。逆に言うと、どれだけ不満があっても、パフォーマンスの低い人間の声にはなかなか耳を傾けてくれません。自分の働き方が硬直的なことを組織や上司だけのせいにするのは、いち社会人として美しいものではありませんよね。もしも今、あなたが自分の望む働き方が実現できていないのならば、結果を出して発言の機会を勝ち取っていきましょう」
『Google流 疲れない働き方』(SBクリエイティブ)
ピョートルさんが教える「疲れない働き方」!2018年3月10日出版。
「疲れる組織」「疲れる働き方」が多い日本において、「疲れない働き方」を実現するにはどうすれば良いのでしょうか? グーグルの取り組みを例に挙げつつ、マネジャー・リーダー・メンバーすべてのポジションの人が、個人でもできる対応策を紹介します。
取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太
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