【クリティカル・シンキング】「言いたいことが伝わらない」「仕事がうまく進まない」悩みをグロービス講師が解説!
ビジネススクールで有名なグロービスが展開する、ビジネススキルの動画学習サービス『グロービス学び放題』の講師たちから、働く日々のヒントになるようなtipsを教えてもらうこの連載。
第3回の今回は、グロービス教員として「グロービス学び放題」の「クリティカル・シンキング講座」を担当する許勢仁美さんに、仕事を進める上で必須になる「クリティカル・シンキング(論理思考)」について聞いた。
「論理的に考える」というと、「鋭い」「冷たそう」というイメージを抱きがちではないだろうか? しかし、実際は円滑なコミュニケーションを手助けしてくれる、相手を思いやるための考え方。「クリティカル・シンキング」を身に付けることのメリットや、その学び方とは?
>第1回目『グロービスが教える「学び」の重要性』
>第2回目『学びに必要な4ステップ』
クリティカル・シンキングとは?
クリティカル・シンキングとは、「物事を適切な方法で、適切なレベルまで考える」こと。
論理思考の方法論(テクニックやフレームワーク等)と正しく思考するための姿勢(心構え)を組み合わせることにより、ビジネスにおいて「物事を正しい方法で正しいレベルまで考える」ことを実現しようとしている。クリティカル・シンキングを行うことで、目の前の課題に対して安直に答えをだすのではなく、物事の本質を捉えた思考ができるようになるのだ。
クリティカル・シンキングのツールの一例として挙げられるのが、ピラミッド・ストラクチャー。自分の考えたことを三角形に整理し、その妥当性や完成度を視覚的にチェックできるものだ。
クリティカル・シンキングを学ぶメリットとは?
では、クリティカル・シンキングを学ぶメリットとは何だろうか?
許勢さんに、クリティカル・シンキングが役立つシーンを挙げてもらった。
1.納得して仕事を進められる
まずは、営業職のビジネスパーソンに役立つ考え方。
営業成績が上がらないときに、「とりあえず電話件数を増やそう」「飛び込み営業をしよう」などとすぐアクションに出てしまうのは、ありがちな話。しかし「とりあえず頑張る」ことに心理的な負担を感じる人は多い。
「本当に課題が解決できるか分からないのに、とりあえず電話や訪問の件数を増やすことに悩むビジネスパーソンは多いですね。『納得した上で責任感を持ってやり遂げたい』という声をよく聞きます。そういう方に、クリティカル・シンキングで十分に考えて、納得した上で施策に取り組むのはおすすめです」
クリティカル・シンキングでは、まず最初に問題の所在を明らかにすることを大切にする。営業成績が悪いときには、問題を分解をして捉えてみよう。ターゲットのうち、コンタクトできたのは何件、アポが取れたのは何件、提案の時間を取っていただけたのは何件……。ひとつひとつを分析して、件数が減少している問題箇所を特定することが大切だ。このように分解して問題箇所を特定してから原因や解決策を考えれば、闇雲に行動するのではなく、適切な対処が可能となる。
2.迷いが減る
社内での作業や調整が多い事務職などの場合は、コミュニケーションに問題意識を持つ人が多い。「自分の考えていることが上手く伝わらない」「頼まれたことをきちんと理解できているのか不安になる」「毎月の報告書作りやお金の計算。何のためにやっているのかが分からない」など、悩みは尽きない。
こんな悩みも、クリティカル・シンキングで解決できると許勢さんは語る。
「全体の中でも、自分の仕事の位置付けを理解し、その仕事が何のために存在するのかを改めて考えてみましょう。クリティカル・シンキングでも、『何のために?』と自分自身に問いかける姿勢を大切にしています。『何のためにやるのか』を理解できていると、前向きに取り組めますし、効率も変わってきます。場合によっては『もう少しこうした方がいいんじゃないですか?』というような質問や問題提起ができるようにもなりますよね」
自分の伝えたいことや相手が考えていることを誤解なくやりとりするためにも、目的に立ち返って考えることで、事務作業や社内調整においてクリティカル・シンキングが活かせる場面は多そうだ。
3.前向きになれる
クリティカル・シンキングを学ぶと、前向きになれるというメリットもある。ビジネススクールでクリティカル・シンキングのクラスを担当する許勢さんは、日々受講生の変化を実感している。
「人は、気付かないうちに、自分の価値観や過去の教訓といった暗黙の前提をおいて物事を考えています。クリティカル・シンキングを学ぶと、こうした自身の“思考の癖”を理解して、自分と上手く付き合っていけるようになるんです。問題解決やコミュニケーションに対して前向きに捉えられるようになったという方が多いですね。『上司からなぜダメ出しされていたのか分かりました』『どうすればよいか分からず悩んでいたので、気分が晴れました』という感想もよく受講生からいただきます」
グロービスのクラスでは、ある問いについて考えた問題解決方法をお互いに発表し合う機会が多い。同じテーマで同じ問いが出されても、人によって考え方はばらばら。他者との相対化によって、自分の強みや課題、思考の癖に気づく人が多いという。
グロービス学び放題でも、自由記述クイズやユーザー同士の勉強会などアウトプットの機会がある。こうしたコミュニティを活用するのも、思考の癖を把握する第一歩となるだろう。
クリティカル・シンキングを身につけるために必要な姿勢
許勢さんによると、クリティカル・シンキングを身に付けるために必要な姿勢は3つあるという。
1つ目は「目的は何か」を常に意識すること。「特に女性には、『責任感を持ってやりたい』という動機をお持ちの方が多いので、『この仕事、なんのためにやっているんだっけ?』という疑問を抱えがちです。そういった問いを忘れないようにするというのが大事だと思います」
2つ目は、自分に考え方の癖があると認識すること。「誰にでも、考え方の癖というのはあるものです。でも、それを人に押し付けるのではなく、独りよがりになっていないか、自分のコミュニケーションで相手にも通じるか、常日頃から考えましょう」
3つ目は考え続けることだ。「クリティカル・シンキングでは、鋭さより粘り強さの方が大切です。『本当かな?』という問いを諦めずに持ち続けましょう。『良いことを言おう』とするのではなく、『諦めずに考え続けよう』とすると、肩の力が抜けて、続けられるんですよね。持続すれば力にもなります」
許勢さんがおすすめするのは、仕事の最初と最後に考えることだ。資料作成など、一つのタスクに着手する前に「目的は何か」を考えて、最後に仕上げをするときに「本当にこれで目的に答えられているか」「期待に応えられているか」と考える。
「仕事は、誰かから依頼があって、誰かに渡していくものですよね。一人で完結する仕事はほとんどありません。受け取るときにしっかりと仕事の意味を捉え、次の人に渡す前にその人が目的を果たせる状態になっているか考えてみましょう」
自分の思考の癖や前提を一歩立ち止まって考え、コミュニケーションや仕事を円滑にする、クリティカル・シンキング。
最後に、そんなクリティカル・シンキングをこれから学ぶ方へのエールを、許勢さんからもらった。
「クリティカル・シンキングを学ぶのに遅すぎるということはありません。私自身は社会人1年目のときに、先輩に考え方の指導を受けて、クリティカル・シンキングを身に付けました。コンサルティング業務だけでなく、海外で地域開発の活動をしていた際にもとても助けられました。ですから、『社会人になってから何年も経っているのに…』なんて思わずに、ぜひ必要なときに、いつでも学んでいただければと思っています」
許勢さんの講義をもっと見てみたい方は、こちらまで▶︎▶︎▶︎グロービス学び放題
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