転職 Vol.648

パワハラ上司から逃げるようにして転職。“隠れブラック企業”に入社してしまった26歳の話【20代の転職失敗談】

type編集部が回避法をレクチャー!
入社した会社でまずは数年頑張らなきゃ、なんて一昔前の話。今では20代の転職希望者も、若手を採用したい企業も増えてきた。 とはいえ「そろそろ自分も……」と思っても、初めての転職は分からないことだらけ。せっかくの貴重な20代を、失敗で終わらせたくない! そこで、typeに訪れた「20代で転職に失敗した人」たちのエピソードを、type編集部のアドバイス付きで紹介。先輩たちの経験談から、‟失敗転職”の回避法を学んでいこう
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33歳(男性・年収700万円)H男さんのケース20歳 地元の高専を卒業後、大手楽器メーカーに設計職として就職(年収330万円)
26歳 飲食店運営会社の社長補佐に転職(年収480万円)
33歳 中堅機械メーカーで設計の仕事に就く(年収700万円)
転職活動期間:1カ月
希望条件:前職以上の給与、社内の風通しが良いこと、若年層の多い企業
妥協した条件:業界未経験だったこと、地元を離れることになったこと
応募社数:2社、書類選考通過:2社、1次面接通過:2社、内定社数:2社

パワハラ上司「お前の手柄は俺のもの、俺のミスはお前のせい」

実家住まいだったH男さんは、高専で設計を勉強した後、親を喜ばせたい一心で地元の楽器メーカーに就職した。上場もしている大手有名企業だ。

「別に楽器に興味があったわけでも、好きな音楽のジャンルがあったわけでもありません。地元の求人の中から、大手で安定している企業という理由で選んだだけでした。とはいえフレックスタイム制で、残業時間は月10時間程度と、働き方の条件面ではとても恵まれていたんです」

ところが、実際働き始めてみると、その内情は悲惨なものだったという。

「問題は上司のパワハラ。それはひどいものだったんですよ。“部下の手柄は自分のもの、自分のミスは部下のせい”という、典型的なジャイアンタイプ。自分の評価に傷がつきそうものなら、すかさず新人の私のせいにされました。上の人たちだけの会議で何か言われたりすると、デスクに戻ってきて部下に怒鳴り散らすことも。一度、感情的になって本当に机をひっくり返した時もあったほどです」

パワハラ上司に「怖い」という感情を抱き、ビクビクしながら過ごす毎日。段々と仕事に行くのが嫌になってしまうのは当然のことだった。

「駆け引き」や「足の引っ張り合い」に付き合うのはもううんざり。中小企業なら出世争いもなく、人間関係もいいだろうと考え、H男さんは転職活動を始めた。

サービス残業100時間超え!
耳鳴り、動悸、胃痛で軽いうつ状態に

もともと料理や食べることが大好きだったというH男さん。心機一転、自分の専門である設計とは全く違う業界に飛び込もうと、飲食業界に絞って求人を探した。

「飲食店の経営に携わりたいという気持ちが強かったので、現場での調理や接客ではなく、本社勤務の求人を狙いました。それでも、なかなか見つからなかったんです。いくら中小企業がいいといっても、ある程度の規模がいいなと思っていましたし」

そんな中ようやく見つけた飲食関連企業。面接で社長に気に入られ、年収アップという好条件も重なり、喜び勇んで転職を決意した。転職後は、実家から出て初めての一人暮らしもスタートした。

「最初の1年くらいは、会社も儲かっていたんですよ。何件か新規出店して、従業員も増える一方。小さい会社なので、住宅手当などの福利厚生は良くなかったですが、景気のいい会社だなとは思っていたんです」

そのメッキが剥がれ始めたのは、転職2年目のこと。みるみる間に売上げがダウンしていったという。

「その原因は人手不足。よくよく現場の店長に話を聞いてみると、彼らは皆、月100時間以上のサービス残業をさせられていました。現場から社長へ不満の声を上げたそうですが、全く対応してもらえず、社員が大量に離職していたんです。すると当然、サービスの質は下がっていきますし、常連のお客さまも来店しなくなりました。店の評判が悪くなり、業績悪化。ついに私たち本社の社員も現場へ入ることになりました。私はその合間を縫って、新たなスタッフを採用していました」

そしてとうとうH男さんのサービス残業も月100時間を超え、彼のメンタルは限界を迎えた。

「いろいろ頑張ってはみたんですけど、5年目になる頃には耳鳴りがしたり、社長の『金がない』という言葉を聞くたびに動悸や胃痛がするように。病院に行ったら、軽いうつ状態だと診断されました。それで休職することになったのですが、その後どうしても復職する気にはなれませんでした」

年収は上がったものの、一人暮らしによって出費も増え、使える金額は前職のときとさほど変わっていなかった。学生時代からの友だちと遊ぶ時間もなくなり、年賀状のやり取りをするだけの関係になってしまった、と肩を落とす。

“隠れブラック企業”に要注意

「当時は大手企業を避けて転職活動をしたのですが、それが大間違いだったことに気付きましたね。大手企業は社員の数も多いので、人間関係は複雑ですし、いろんな問題も起きます。それでもしっかり法令は遵守されていますし、働きやすい労働環境をつくって従業員を守ろうという意識は高いです」

健康だけが取り柄だった自分が、体を壊したことが何よりもショックだったと、H男さんは話す。

「まさか転職先がこれほどブラック企業だったとは思いませんでした。業績のためなら、社員を犠牲にしてもいいという社長の考え方が悲しかったですね。サービス残業を断れなかったのは、私が仕事を放棄すれば現場の若いスタッフがもっと苦しむから。自分さえ良ければいいという気持ちには、なれませんでした。

転職する時にもっと内部の声を知ろうとしたり、周りに相談したり、現場の実態を見に行ったりすべきだったと思います。住宅手当の有無についても、面接の時には何の説明もありませんでした。こういう会社は、さも素敵な企業かのように仮面をかぶっているんです。これが最初で最後の転職だというぐらい覚悟を決めて、納得いくまで自分で調べ尽くせばよかったと思います」


type編集部からのアドバイスをCHECK!

H男さんの場合「やりたい仕事が見つかった」と喜んでいたら、隠れブラック企業に入社してしまいました。そんな企業に入って貴重な20代を失う前に、 “ブラック企業”の見抜き方をお教えしましょう。

転職活動時にチェックすべきポイントは、1.事業に将来性があるか、2.経営方針が時代にマッチしているか、3.勤続年数の長い社員がいるかの3つです。

さらに面接の時に給与や待遇をはっきり説明してもらえるかも、重要な見極めポイント。H男さんの場合は、住宅手当の有無について最初に説明してもらえなかったわけですから、この時点でアラートが鳴っていたと言えるでしょう。

また、H男さんご自身が仰るように、この会社の内部事情を自ら知ろうとすることも大切です。特にオススメの方法は、業界紙や新聞、Webニュースなどで会社の最新動向を確認すること。公開されているなら、HPで財務状況をチェックすることも判断材料になるでしょう。

もちろん、会社のことを知る方に相談したり、職場環境や仕事内容を直接聞くのも良いと思います。

後悔しない転職をするためには、情報収集をおろそかにしてはいけないということが、H男さんの事例でお分かりいただけるかと思います。

参照:「求人票だけ見て終わり」は絶対NG! “廃れ企業”に転職してしまう女性に共通すること

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文/石川 香苗子


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