ストレスで苦しむ20代に伝えたい、メンタルヘルスのセルフケア【グロービスに学ぶ】
ビジネススクールで有名なグロービスが展開する、ビジネススキルの動画学習サービス『グロービス学び放題』の講師たちから、働く日々のヒントになるようなtipsを教えてもらうこの連載。
第5回の今回は、グロービス教員として「グロービス学び放題」の「職場のメンタルヘルス・マネジメント」の講座を担当する松岡綾子さんにお話を伺った。
近年、メンタルヘルスという言葉がよく聞かれるようになったが、具体的にどのようなことを指すのか?
本企画では「メンタルヘルスのセルフケア」に焦点を当てて、その重要性や、ストレス・コーピングの具体的な方法について解説しよう。
メンタルヘルスって何? ビジネスパーソンにとって、心のケアの必要性とは
現在企業は絶え間ない変化にさらされている。このような状況は、企業にとっても、そこで働く個人にとっても大きなチャンスになる一方で、変化によるストレスも大きい。そこで、職場におけるメンタルヘルスの必要性が高まっている。
では改めて、メンタルヘルスとは何だろうか?
メンタルヘルスとは、文字どおり「心の健康」を意味する。心の健康についての定義は一つではないが、1930年に開かれた第1回世界精神衛生連合では、さまざまな研究を踏まえ、次のように定義している。
・身体、知性、情緒などがよく調和されていること
・環境に対して適応し、社会的に他の人々とよく折り合っていること
・自分は幸福であるという感じを持てること
・仕事や職業に対して、自己の能力がよく発揮され、能率的な生活ができること
(出典:第1回世界精神衛生連合)
このメンタルヘルスの定義は、職場においてメンタルヘルスがなぜ重要かを考えるときにも参考になる。イギリスの産業メンタルヘルスの研究者・リングによれば、「職場におけるメンタルヘルスを考える目的とは、個人のストレスを最小化し、共同の成果を最大化すること(出典:T.M.Ling編、笠松章・坪上宏訳編、『職場の精神衛生と人間関係』誠信書房1968)」とされている。つまり、個々の心の健康を保ち、働きがい、生きがいのある健康的な組織を作ることが、組織の成果を最大限に発揮させるということだ。
このメンタルヘルスが損なわれてしまうと、日常生活の中で、全般的に適応力が低下している「メンタル不調」や、さらに悪化すると精神疾患や行動障害などの「メンタル不全」につながる。
メンタルヘルスのセルフケア、鍵は「自分を知ること」にあり
このメンタルヘルスを職場でケアする上では、上司などによる「ラインケア」や社内外の専門家によるケアがあるが、今回は、働き手自身によるストレスへの気づきと対処を行う「セルフケア」について松岡さんに聞いた。
「メンタルヘルスのセルフケアの基本は、ストレスを『理解する』『気づく』『対処する』です。ストレスを『理解する・気づく』上で、普段から自分の感情に敏感であることというのが大切だと思いますね。まずは、『自分で私は今すごく腹が立っている』など、自身の喜怒哀楽を認識してみましょう。自分を客観視できるので、感情もコントロールしやすくなりますね」
特に松岡さんが意識してほしいと語るのは、喜怒哀楽の中でも「喜び」だという。どのような状況で喜びを感じるのか理解しておけば、自分の機嫌を自分で取ることもできるようになる。
「自分がこれまでに嬉しかったことを書き出していくと、その出来事には共通の特徴があると思うんですよ。例えば、感謝された経験に喜びを見出す人、トップに立つことに達成感を感じる人……人それぞれだと思うんですよね。キャリアを考えるときにも、そうした自分が喜びを感じられる領域で活躍できるとハッピーだと思います」
とはいえ、「自分の感情と向き合う上で、何から始めればよいのだろう…?」という人も多いのではないだろうか。
そこで、松岡さんがオススメするのが寝る前につける“感情日記”だ。スマートフォンのカレンダーなどに、その日がどんな1日だったかを思い出し、「楽しかった」「悔しかった」など、1日の中で強く感じた感情を一言書いていくというものだ。
「これをやっていくと、自分の感情の波を理解できるようになります。今の苦労や辛さって、たいてい1年後も同じ状態ではありませんよね。文字に残しておくことで、『苦しみが永遠に続くものではない』『自分は苦しみを克服できている』と感じられるんです。自分が強くなっていけるという実感も湧きます」
そのため、感情日記には、嫌な感情にも向き合って包み隠さず書いた方がよいという。
「ストレスの対処法には、忘れるというやり方もあります。でも、忘れるだけでは抜本的な解決にはなりません。同じようなことが再び起きたときには、またストレスになってしまう。けれど、一度ストレスの原因を究明して乗り越えれば、自信がついてきます。『前回うまくいったんだから、自分だったらうまくいくはずだ』と、成功体験ができて、自分のメンタルを強くしてくれますよね。感情日記をつけることによって、この過程を目で見て客観視することができるんです」
つけ忘れてしまっても、次の日からまた始めればよいという感情日記。気負いすぎずに始めてみるというのはいかがだろうか。
自分に合ったストレス・コーピングを知ろう
こうして、自分のことを理解したら、自分に合ったストレス対処法を身に付けよう。こうした、‘ストレスをなくすのではなくコントロールする’という考え方を、「ストレス・コーピング」という。
グロービス学び放題の講座「職場のメンタルヘルス・マネジメント」では、図のように5つのストレス・コーピングの手法を紹介している。
ここで注意すべきなのは、自身の性格を踏まえてストレス・コーピングを行うこと。自分に合っていないストレス・コーピングをしてしまうと、余計悪化させてしまうこともあるという。
「例えば、将来に関する不安を抱えている人であれば、キャリアのセミナーに行ったり勉強したりしてスキルを身に付けるという解決策が考えられます。でもそうではなく『なんとなく今の仕事が嫌』などと短絡的な考えから行動を起こしてしまうと、『転職しよう』『副業を始めてみよう』と、自分に合っていないことを始めて疲れてしまいます。自分が何に対してストレスを抱えているのか、もう一歩深めて考えれば、ストレス・コーピングの方法も変わってくるのではないのでしょうか」
日々忙しく過ごしていると、おろそかにしがちな自分の感情。負の感情が積み重なれば、大きなストレスとなり、メンタル不全にもつながりかねない。まずは、自分に向き合うことから始めてみたい。
「グロービス学び放題 」の「職場のメンタルヘルス・マネジメント」では、こうしたメンタルヘルスの知識を体系的に学ぶことができる。一度、自身や職場の仲間の心の健康について考えてみるきっかけになるかもしれない。
松岡さんの講義をもっと見てみたい方は、こちらまで▶︎▶︎▶︎グロービス学び放題
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