スキルアップ Vol.656

成功の鍵は「圧倒的」戦略にあり! 湘南美容クリニックが“一人勝ち”を続ける理由

長きに亘って日本を支えてきた企業や団体が、軒を連ねる医療業界。そんな歴史ある巨大な業界において、わずか15年で国内トップクラスのマーケットシェアを誇るクリニックがある。「好きな言葉は情熱です」のCMでお馴染みの『湘南美容クリニック』を展開するSBCメディカルグループだ。美容医療のイメージが強い湘南美容クリニックだが、がん免疫治療や不妊治療など、10以上の診療科目を展開するメディカルグループとしての顔も持っている。

湘南美容クリニックを訪れるお客様は、1日当たりおよそ5108名。そのうち80%がリピーターだという。短期間で美容医療業界のトップに躍り出た脅威の成長スピードと、リピーター率の高さの秘訣はどこにあるのだろうか。

2019年1月17日(木)に行なわれた『type就活』限定イベント「経営者から学ぶ!医療ビジネスの未来と経営戦略」内で語られた、代表・相川佳之さんの講演から紹介しよう。

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之(あいかわよしゆき)

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之(あいかわよしゆき)

1970年神奈川県生まれ。1997年日本大学医学部を卒業し、癌研究所附属病院麻酔科に勤務。98年より大手美容外科に勤務し、数万件の美容外科手術を経験。00年に独立し、神奈川県藤沢にて湘南美容クリニックを開業

医療ビジネスは、“超”成長市場

現在、医療業界全体の市場規模は約40兆円です。建設業界が約16兆円、皆さんにとって身近な存在であるコンビニ産業が7兆円なので、医療分野はかなり大きな産業だと分かるでしょう。人口減で市場規模が縮小するのではないかと推測されがちですが、実はそんなことはありません。医療業界は今まさに右肩上がりに市場が伸びているのです。

実は、国は診療報酬の削減方針を打ち出しています。そのため一般的な公的医療保険が適用される病院は打撃を受けますが、保険が適用されない「自由診療」の分野では、治療の金額を自分たちで決めることができます。だから、私たちのような美容医療の分野やレーシック手術などを行っている「自由診療」に強い病院が、今後ますます伸びていくと考えられています。さらに、治療にテクノロジーなどの最新医療を取り入れたり、再生医療のような新技術の研究が進んだことにより、業界全体が変革期にあるのです。

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之(あいかわよしゆき)

テクノロジーといえば、AIを使った医療診断システムや遠隔診療も勢いを増しています。例えば、私たちが開発したアプリ『アイメッド』では、スマホで診療を受けることができます。これにより、地方から東京のクリニックに通っていた方も、1回目だけ来院して2回目以降はスマホ診療で完結するように。場所を問わず、待ち時間もなく、電話を掛ける程度の時間で診察が済む。これはお客様にとっても魅力的ではありますが、それをきっかけに全国の方に診療を受けていただけることは、私たちにとっても魅力的。現に、遠隔診療の市場は毎年2倍、3倍と増えていますから、医療業界全体の中でも、今後かなり大きな市場となっていくのではないでしょうか。

このように、医療業界の中でも特に成長が見込める分野に、私たちSBCメディカルグループは参入しています。

SBCメディカルグループの成長を加速させる、独自の経営戦略

今、SBCメディカルグループの売上高は、全国の医療法人の中では23位、美容医療市場では1位をマークしています。

医療業界は、昔から続く協会や大学病院などが多いことが特徴ですが、設立20年弱の当社がここまで大きくなることができたのは、SBCメディカルグループならではの経営戦略があるからに他なりません。ここで、代表的な4つの戦略を紹介しましょう。

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之(あいかわよしゆき)

戦略1.他業種の成功事例を自分の業界に持ち込む

これは他のビジネスに置き換えても言えることですが、1番になるために自分で新たな手法をつくり出し、先人と同じような失敗を踏むよりも、身近な人の中で1番優秀な人の真似をする方が手っ取り早いと思います。

現に私たちは“他社・異業種の良いところを真似る”ことを意識しています。食券を買って食事ができるようなファストフードからヒントを得て、自動券売機を導入した美容クリニック・湘南美容皮フ科を新たに開院しました。また、自動車メーカーの高級ラインからヒントを得た、富裕層向けのクリニック・レグノクリニックSBCも1店舗構えています。異業種から「良いとこどり」をすることで、利用者層の幅を広げているのです。

戦略2.小さなことでも、他社と圧倒的な差をつける

私が開業したばかりの頃、美容整形手術の“ビフォーアフター画像”は1つのクリニックに3枚程度しかないことが一般的でした。しかし、自分の術後の顔を想像するのに、3枚では少なすぎるでしょう。そこで当院では、まず100枚の症例写真を集めました。その後も写真を集めて公開し続けた結果、今では100万枚以上のストックがあります。

ここまできたら、後からこれを真似ようとしても、到底追いつけません。他社が気付かなかった小さな分野でも、圧倒的No.1になること。おかげでSBCメディカルグループは、「日本で1番、症例写真を公開しているクリニック」として、他社との差別化を図ることができたのです。

戦略3.他社がやりたがらないことを、あえてやる

よく美容室が導入しているような「保障制度」を始めたのも、私たちSBCメディカルグループです。通常はやりたがらない営業時間延長や深夜営業なども、積極的に取り入れた結果、仕事帰りに立ち寄ってくれるお客様も増えました。普通の美容クリニックなら「やりたくない」と思うことを、あえて取り入れてお客様に寄り添っていくスタイルも、私たちならではの戦略です。

他社がやりたがらないことをやる、といっても、「診療時間を延長するから、スタッフの残業も増やす」など、社員に負担をかけていては意味がありません。お客様、社会、スタッフ全ての幸せを追求する「三方良しの実現」というSBCの理念と相反してしまいます。そこで当グループでは、ITの力を最大限活用したり、グループの強みを生かして適切な人材を配置するなどして、工夫を重ねています。

戦略4.とにかく“ナンバー1”にこだわる

美容クリニックとして、全国シェア1位になったときに感じたのは、2位や3位のときとは「何もかもが違う」ということです。有益な情報が集まるのも早ければ、お客様からの信頼度も違う。だから、どの分野においても、とにかく1位になることにこだわっています。

1位になるのは意外と簡単で、カテゴリーと地域を絞れば、どんな分野でも実現できると思います。私は開業当時、脂肪吸引の施術が好きだったので、他社が5割除去するところ8割除去する医師として有名になりました。あそこのクリニックは、お腹だけじゃなくて腰の脂肪まで除去してくれるって(笑)。その結果、インターネットで「湘南美容クリニックはすごく効果が出る」と口コミで噂になったんです。しかも、当時藤沢市で脂肪吸引をしていたのは当院だけだったので、自然と「地域で脂肪吸引の実績数1位」と言えるようになりました。そのことがきっかけで、全国からお客様にご来院いただき、今では全国の美容医療業界の中でも1位になれました。

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之(あいかわよしゆき)

こうした戦略で、他社との差別化を図ることが、SBCメディカルグループが大事にしてきたことです。お客様から「他院じゃなくて、湘南美容クリニックが良い」と言われなければ、派手な広告を打っても全く意味がない。だからこれからも、圧倒的な1位を目指していこうと思っています。

何かに迷ったら「成長性」「追い風」「好き」を信じよう

これは医療業界だけでなく、どの業界、どの仕事においても言えることですが、私は何かを選択するときに、大切にしている軸が3つあります。

まず、「どっちの道に進んだ方が成長できるか」ということ。これは、自身の成長が、イコールビジネスの成功につながることが多いからです。

次に意識するのが、「そこには追い風が吹いているか」ということ。人生には限りがあります。だからこそ、時間と労力を無駄にする必要はありません。できることなら失敗を踏まずに突き進んでいった方がいいですから、報われる可能性が高い道を選びます。SBCメディカルグループの戦略も、成長と追い風、というのは常に意識しているところです。

しかし、結局のところ最終的に一番大切なのは、自分が「好き」かどうかだと思います。今はたくさんの情報が入ってきて、選択肢に迷うことも多い時代。でも、そこで理屈をつけた正解よりも、儲かるか儲からないかよりも、「好きで頑張れる」ことの方が圧倒的に強い。

私自身は、世界最高峰の医療機関と言われる『メイヨークリニック』が大好きで、いつかSBCメディカルグループもそんな医療機関にしていきたいと、本気で思っているんです。そして、藤沢市にある小さな美容クリニックから、ここまで事業を大きくできたのは、その根底に私の「医療が好き」という気持ちがあったからだと思います。

私が掲げる目標は、総合医療グループとしての世界No.1。達成するには、SBCメディカルグループも、まだまだやることがたくさんあります。私ももっと「好き」を突き詰めて、お客様からも「好き」といわれるクリニックでありたいなと思いますね。

SBCメディカルグループ 代表 相川佳之(あいかわよしゆき)

文/於ありさ 撮影/赤松洋太


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